au夏モデルから富士通が消えた！ 新商品に見るiPhone重視と国内メーカーの衰退
一見すると例年通りと思われがちだが、今回のauの発表には、これまでとは、あきらかに異なる特徴が顕著に現れている。それは、日本メーカー製端末の明らかに減少し、衰退ともいってもいいほどだ。
●海外メーカー製が半数を占めるラインナップ
auが2014年夏モデルとして発表したのは以下の8機種だ。
・LGエレクトロニクス社製「isai FL LGL24」
・ソニーモバイルコミュニケーションズ社製「Xperia ZL2 SOL25」「Xperia Z2 Tablet SOT21」
・Samsungエレクトロニクス社製「GALAXY S5 SCL23」
・シャープ社製「AQUOS SERIE SHL25」
・京セラ社製「URBANO L03」「TORQUE G01」
・ASUS社製「ASUS MeMO Pad 8」
海外メーカー製の端末は8機種中、4機種と半数までを占めている。
2013年冬モデルでは8機種中、国内メーカーは5機種（海外メーカー製はGALAXY Gerを含む）、さらに2013年夏モデルでは4機種のうち国内メーカー3機種。過去のラインアップと比べても、今回のラインアップでの海外メーカー製端末の割合が増えたことは一目瞭然だ。
また、今回の発表には間に合わなかったが、HTC社製（HTC Jシリーズ）について「さらに、もう1つ。少し遅れるが、乞うご期待」とKDDI田中孝司社長が追加発表をするほど、特別扱いされている。HTC製端末は2013年夏モデルの「HTC J One HTL22」以来のラインアップ復帰となる。
HTCは追加の発表が行われた
●日本メーカー製端末が減る傾向
auといえば、過去、海外メーカー製端末より、国内メーカー端末を多く提供してきたキャリという印象が強い。しかし今回、シャープ製AQUOSシリーズと双璧となる富士通製ARROWSシリーズがラインアップから姿を消した。2013年冬モデルでは、「ARROWS Z FJL22」「ARROWS Tab FJT21」の2機種の富士通製端末がリリースされていたのだ。
日本メーカーの相次ぐスマートフォン事業からの撤退という状況もあるが、国内メーカー製端末を多く提供してきたauで、これほど海外メーカー依存度が上昇したのには、どのような理由があるのだろうか。
●iPhone重視による影響とキャリアの事情
日本市場のスマートフォンの主力商品がiPhoneであることは誰もが認めるところ。株式会社MM総研がまとめた2013年の国内携帯電話端末の出荷台数調査でも、Appleはスマートフォンのメーカー別出荷台数で1位（1,277万台、スマートフォン出荷台数シェア43.6％）を獲得している。
キャリアは、主力製品であるiPhoneを他の製品よりも注力するわけだが、理由はそれだけでない。iPhone 5cやiPhone 5sの販売数を伸ばさなければならない理由もある。AppleとのiPhone取扱契約には目標販売台数が盛り込まれているとも言われている。さらに今年の夏から秋にかけて、iPhoneの新モデルがリリースされるという噂もある。次期モデルが登場するまでにiPhone 5cやiPhone 5sの販売で結果をだしておかなければならないという事情も見え隠れする。
iPhoneはキャリアの主力商品だ
●iPhoneに続くブランド力を誇るXperiaとGALAXYの影響
iPhoneに加えて、国内でもブランド力のあるXperiaシリーズとGALAXYシリーズによる他の国内メーカーへの影響も見逃せない。
Xperiaシリーズは、国内メーカーながら日本だけでなく海外でも人気を獲得している点が他の国内メーカーと大きく異なる。BCNが調査した2013年冬から2014年春のAndroid端末の売上げランキングでも、高価格ながらXperia Z1 SOL23は１位と、その人気を裏付けている。
またGALXYシリーズもグローバル市場での高いブランド力を維持している。スマートフォンからファブレットにいたるまで、開発力の高さにおいても、主力製品としては外せない。昨今の国内での嫌韓傾向でGALAXYシリーズが以前のモデルより敬遠されるという風潮も見受けられるが、それでも、いまだ日本国内で強い。
この2つのブランドはキャリアにとっても外せないというところなのだろう。
●国内スマートフォンの逆風の現状と今後
国内のスマートフォンメーカーに逆風が吹いている理由には、これまでは運命共同体であった通信キャリアとの関係が変化し始めていることがある。
低価格な通信プランを提供するMVNOサービスの台頭、それをうけて通信キャリアも新料金プランや新サービスの提供に踏み込むなど、端末などを主力とするハード販売から料金やコンテンツなどで選んでもらうサービス重視へと転換を計ってきているのだ。
サービス重視にシフトを始めているKDDI
iPhoneに続くXperia、GALAXYの3大ブランドを除けば、LGエレクトロニクスのIasiシリーズやHTCのHTC Jシリーズように、キャリアとの共同開発という関係を構築するなどの戦略がないと、「勝ち組」の座は勝ち取れない時代になったのかもしれない。
どのような市場も、成熟期を迎えれば、製品やメーカーは淘汰されていくものだ。今が全盛のスマートフォンでも、それは変わらないということだろう。
今後も、こうした傾向は続き、端末メーカーの生き残りを賭けたサバイバルは激化すると思われるだけに、国内メーカーには是非、生き残ってもらいたいものだ。
甲斐寿憲
