社会科は得意でしたか?

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学生時代によく耳にした「社会科って、暗記科目だから嫌い」という言葉。
それでいて不思議なのは、社会科が得意な人は、特に暗記に長けているわけでも、暗記に必死なわけでもなく、授業中に涼しい顔で地図帳や歴史資料集をただただ眺めているような人が多かった気がする。

これって結局どんな違いなのだろうか。「高校物理〜」記事で授業を見学させていただいた共立女子中学高等学校の、地歴公民科の池末和幸先生に聞いた。

「『社会科は暗記科目』と生徒たちに言われると、違和感がありますね。最終的に暗記することは確かだけど、意味がわかって、流れがわかって、背景がわかって覚えれば、ムリに覚えようとしなくても自然と頭の中に入ってくるものだからです」

「自然と頭に入ってくる」人というのが、やっぱり「社会科を得意とする一部の人」なのでは……? 
「たとえば、教科書の重要事項は太字で書かれていて、生徒たちはついマーカーを引きたくなりますよね。女子校では特にそう感じます。でも、教科書で太字になっている重要語句にマーカーを引いているようでは、その教科は永遠に得意教科にはならないでしょう」
確かに、社会科が苦手な人の特徴の一つに、「太字にマーカーをひく」パターンがある。そして、次にやりがちなのが、「太字だけでは内容がわからないから、説明している箇所にマーカーを……」とやっているうちに、教科書がマーカーで真っ赤になってしまうというパターンだ。
そこに赤いシートでものせようものなら、「○○は△△で×××である。???」という、まったく意味不明の状態になる。身に覚えのある中高生も多いのではないだろうか。
「大学入試で問われるような箇所は、太文字のすぐ前後に隠れています。ところが、その前後がどこだかわからないというのが、生徒の大半です」

つまり、「ツボ」を見つけられない人が「教科書を真っ赤にしてしまう人」ということだが、なぜわかりにくいのか。
「これは、教科書の意地悪というか、文字数が限られている宿命なのですね。実際に教科書会社の方に伺った話ですが、教科書は限られた文字数の中に必要な情報を盛り込まなければいけない。特に社会科は情報量が多いので、限られた文字数におさめるために、できるだけ削ぎ落としているそうです」
不要な情報を削ぎ落としていって残った「必要なもの」だけが教科書に載っているわけだから、「教科書に書いてあること=全部必要な情報」だということになるのだ。

となると、やっぱり「全部マーカーで教科書が真っ赤」という人が出てくるのも、いたし方ないことなのか……。
「確かに、教科書に書いてあることは重要なことばかりですが、むしろ言葉足らずになっている部分も多いんです。だから、特に社会科の教師というのは、『教科書の行間』をうまく生徒たちに説明できるかどうかが、教え方の上手・下手の分かれ道と言えます」
つまり、「教科書にマーカーを引く」よりも教科書の欄外などに「省かれた説明」や「補足情報」などを書き加えたほうが覚えやすいこともあるということだ。
ちなみに、自分の経験では、社会科の先生って「本人の知識量は豊富だが、オタク的で、生徒が誰もついていけてない」パターンか、「ただ教科書を読むだけ」のパターンが多かった。

そんなわけで社会科が得意な人はやっぱり「一人で勝手に地図帳や歴史資料集を眺める人」だったイメージがある。

「教科書の行間」を授業の中でどのように説明していくのか、そして、いかに「暗記しようとするのではなく、自然に頭に入ってくるのか」について、池末先生に次回伺ってみたいと思う。と同時に、池末先生はどれくらいのオタク度なのかも気になるところだ。
(田幸和歌子)