バーで出されたアムルットのシングルモルト

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ウイスキーを専門に扱うスコットランドのバーで、店のメニューをパラパラめくっていたら、「インド」という文字が飛び込んできた。ウイスキーの代表的産地といえばスコットランド、アイルランド、米国、カナダ、日本などで、インドという国からウイスキーを連想する人は多くないだろう。カウンターの男性バーテンダーに様子を聞くと、「客からの評判は悪くない」という。

そのウイスキーの名前は『アムルット フュージョン』。飲んでみると、それまで注文していた2杯のスコットランド産シングルモルト(1つの蒸留所で造った原酒だけをブレンドして製造したウイスキー)とまったく異なり、やわらかなスモークにとろりとしたフルーツの甘み、厚みにスパイシーさが添えられ、飲むとそのまま体が、以前訪れたインドへ連れていかれるようだった。同国のウイスキー事情とは、どのようなものなのか。

アムルット蒸留所は、インド南部バンガロールにあるインドを代表するウイスキーメーカーだ。1948年、インドが英国から独立した年に、同社もアルコール市場に参入したという。小さな蒸留所として始まったアルムットは、今ではさまざまなコンクールでの入賞や世界的なプロモーションによって、インドを代表するシングルモルトとして知られるようになった。

インドは公共の場での飲酒やアルコール広告は禁止されており、販売も場所により禁止、もしくは限定されている。ところがインドはそのような規制とは裏腹に、世界を代表する蒸留酒大国の1つだ。

調査会社IPSOSが昨年3月に出したレポートでは、インドにおけるウイスキー、ジン、ラムなどの蒸留酒の輸入は、毎年25%の伸びを示しているという。国内で消費されるアルコールの88%は蒸留酒で、ビール(10%)、ワイン(2%)と比べても圧倒的だ。そして輸入蒸留酒の中でも、ウイスキーがもっとも飲まれているそうだ。

アムルット以外にも、特にウイスキー「マクダウェルズ」、ビール「キングフィッシャー」などのブランドを抱えるインドの酒造メーカー、ユナイテッド・ブリューワリーズ・グループは、2011年に世界第2の蒸留酒メーカーになっており、同社売上げの99%はインド国内から来ている。

アムルットなどインドウイスキーは日本国内でも手に入る。今後も伸び続けるだろうウイスキー新興国の味を、飲み比べてみても面白いかもしれない。
(加藤亨延)