朴大統領の変わらぬ態度に野田前首相がチクリ(写真は首相在任時)

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冷え込んだ日韓関係は、2014年を迎えても修復への歩みが進まない。韓国の朴槿恵大統領は、年頭から安倍政権の「歴史認識の誤り」を指摘し続けている。

この姿勢に、思わぬ人物が強烈な皮肉を見舞った。野田佳彦・前首相だ。毎日新聞のインタビューで、朴大統領の姿勢を「女学生のような『言いつけ外交』」と言ってのけたのだ。

聯合ニュース「歴史の正義と良心に反する行為」

野田前首相のインタビューは、2014年1月10日付の毎日新聞朝刊に掲載された。野田政権時の2012年8月、韓国の李明博大統領(当時)が島根県・竹島に上陸して日韓関係が一気にこじれた経緯がある。その後、日本は安倍首相に、韓国は朴大統領にそれぞれ交代して「雪解け」が期待されたが、いまだに首脳会談が実現しないほど冷え切った状態が続いている。

記事で、「安倍晋三首相が諸外国首脳との会談で、海洋進出を図る中国をけん制する発言を繰り返している」と質問された前首相は、安倍首相を批判するうえで、こう表現した。

「韓国トップが米欧に行っては女学生のような『言いつけ外交』をやって日本を批判しているのと同じように見えます」

名指しこそ避けたが、朴大統領に対するあてつけなのは明らかだ。さらに日韓両首脳に向けて「『言いつけ外交』はお互いやめた方がいい」とクギを刺した。

朴大統領は就任後、欧米をはじめ海外首脳との会談やメディアの取材に際して、ことあるごとに安倍首相の「歴史認識」に対する批判を盛り込んできた。何度も繰り返されるため日本のメディアは最近、「告げ口外交」と皮肉たっぷりに取り上げている。今回の野田前首相の発言は、野党の重鎮として安倍首相に厳しい注文をつけた形だが、朴大統領にも批判的な表現をあらわにしたのは興味深い。

こうした動きに、韓国側は敏感に反応した。韓国・聯合ニュースは2014年1月13日、鄭ホン原・韓国首相が野田前首相の発言について「無礼の極致」と憤慨、批判したと伝えた。今回の発言と安倍首相の靖国神社参拝が「世界人類はもちろん大多数の国民が望む歴史の正義と良心に反する行為」と切り捨てた。

また日本政府が、中学と高校の学習指導要領解説書に竹島を「我が国固有の領土」と明記する方針を示している点にも反発。「独島」と呼び自国の領土だと主張するだけに、「日本の若い世代に反歴史的で間違った知識を教える」として「正すべきだ」と主張したという。

村山談話、河野談話が「正しい歴史認識だ」

安倍首相からの日韓首脳会談開催の呼びかけを拒否し続けている朴大統領。両者は1月22日からスイスで開催される「世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)」に」出席するが、早々に「日韓会談は行わない」との意思表示をした。米ブルームバーグの記者が「安倍首相と握手しないのか」と問われると「握手の問題ではない」とはねつけた。妥協の余地なし、といったところだ。

米CNNの1月13日のインタビューでも、相変わらず「歴史認識」を安倍首相に投げかけている。聞き手から、靖国参拝に踏み切った安倍首相の姿勢をどう見ているかを問われると、「日本とは、正しい歴史認識をベースに未来志向の関係が築かれることを望んでいる。私としては次世代に、両国の友情や協調を残していきたい」とこたえた。これまで2国間で良好な関係が構築できていたのは、日本の歴代首相が村山談話、河野談話を継承する意思を明確にしてきたからで、「これこそが正しい歴史認識だ」と強調した。

安倍首相との「すれ違い」を修正せず、批判のボルテージを下げない姿勢は、韓国で全面的に賛同を得ているとは必ずしも言えないようだ。韓国のシンクタンク、アサン政策研究院によると、首脳会談の開催については「賛成」が49.5%と反対の40.7%を上回り、両国の関係改善のために朴大統領が積極的に取り組むべきとこたえた割合は57.8%に上った。

主要紙「中央日報」電子版(日本語)は1月9日付の社説でこの数字を引用し、「私たちの対日外交のやり方も、より緩やかになるべきだと見る。名分と実利を調和させていく『実事求是(事実に基づいて真理を探究すること)』の姿勢が望ましい」と主張。正しい歴史認識を求める重要性は認めつつも、日韓関係全体を左右しないようなバランスのとれたアプローチが必要だと説明した。

ただし1月11日付の記事では、野田前首相の「女学生のような『言いつけ外交』」発言について「朴大統領の外交を卑下(原文のママ)した」と猛反発。元駐日大使の「首相を務めた人が外交慣例に外れる常識外の妄言を吐いたのに驚く」との指摘を引用し、政府や駐日大使館では、「政治を間違って政権を譲り渡した敗北者の言葉にいちいち対応する必要があるのか」と不快感を表す反応が出てきたと紹介、野田前首相を「失敗者」と位置付けた。