「立って仕事をする」スウェーデンのオフィス風景。近い将来、日本でもスタンダードになるかも!

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IT・福祉・環境・デザインなどの先進国として知られる北欧諸国だが、実はオフィス環境もかなり先駆的! なんと北欧のオフィスでは立って仕事をするのも一般的なのだ。

もちろん、一日中ずっと立ちっ放しなわけじゃない。立ったり、座ったり、各自が自由に好みの姿勢を選んで働けるスタイル。たとえば、集中したいときは座って作業に腰を据え、身体のポジションを変えたいときやランチ後に眠くなりそうなときは立ち上がる、といった具合に。

日本のオフィスではあまり想像できない光景だが、北欧にはこんな働き方を可能にしてくれるユニークなアイテムがある。それが、スウェーデンのイエッツビン社が作る「Sit and Stand(R)デスク」。デスクの高さをボタンひとつで自由に調整できる電動昇降デスクで、スウェーデンのオフィスの約75%に導入されているというからスゴイ。

もともとは1970年代に、24時間体制で働く電話交換手の腰痛を防ぐ医療機器として開発されたもの。身長や体型がバラバラな人たちが同じデスクを使っていたことで腰痛に悩まされ、ひいては生産性の低下を招いていたからだ。それが次第にオフィスかぐデスクとしても注目されるようになり、今ではオフィス環境に欠かせないインフラのひとつともいえるほど。

Sit and Stand(R)デスクを使うメリットはいろいろある。同じ姿勢でずっと座っていると首や腰が痛くなるのは、ご存じのとおり。立ったり、座ったりというポジションの変化は体の疲れを軽くし、腰痛肩こりを自然に予防してくれる。また、座った姿勢から立ち上がると、眠気覚ましや集中力アップの効果もある。高さは70〜120cmまで変えられ、単純に“立つ”or“座る”という2択ではなく、座っているときの高さのカスタマイズも自在。さらに、立った姿勢は周囲とのコミュニケーションも取りやすく、なかには「上司が立っているときは話しかけてもOK」など暗黙の了解が出来ているオフィスもあるようだ。

近ごろは日本でも、「スタンディングデスク」と称して、立ちながらPC作業ができる高さのある机が注目されているが、「Sit and Stand(R)デスク」は、あくまで立っても座っても快適に使えるフレキシブルさが特長。また、北欧ならではの洗練されたデザインや機能性も秀逸だ。

2002年からは日本でも販売されており、健康志向の高まりやオフィス環境に対する意識の変化を背景に、ここ1〜2年で急速に導入企業が増えている。日本販売総代理店であるスカンジナビアン モダンのマネージングディレクターである岡部さんによれば、
「以前は、もともとSit and Stand(R)デスクを知っている人の購入が多かったのですが、最近はそうでなくても、こういうのが欲しかった! という人が増えています」
とのこと。大使館や一般企業に加え、大学での導入例も多いそうだ。
「機能的なデスクがあり、デザインに優れた空間であれば、働く人は居心地がよく、創造性も発揮できるはず。オフィスにしかけをつくる。大事ですね。スウェーデンのオフィスでは、“人が最優先”という考え方が成熟しています」

ちなみに使い方は本当に人それぞれらしく、たとえば岡部さんは数センチの微調整を含め、1日に20〜30回もポジションを変えるというが、別のスタッフは2、3回程度だという。重要なのは、どんなふうに使うかではなく、使い方のチョイスがあることだ。

近ごろは日本でも社員を大切にする文化が育まれつつあり、オフィス環境も進化している。たとえば10年前ならよく見かけたオフィスでのタバコもいまや分煙・禁煙が当たり前。もしかしたら、日本のオフィスで禁煙の次にくるのは、禁“座りっぱなし”なのかも!?
(古屋江美子)