二松学舎大附vs日大三 二松学舎「11度目の正直」で、初めて日大三を粉砕!
3回裏、満塁弾を放った5番秦(二松學舎大附属)
二松学舎「11度目の正直」で、初めて日大三を粉砕!
まさか、ここ15年の間に全国制覇二度の実績を誇る日大三をして、こんなことがあるのかと驚かされた、1イニングでの8失点である。この大会も優勝候補の筆頭として推されていた日大三だったが、その8点を返し切ることができずに、決勝進出を前に敗れ去った。
3回に二死二塁で、2番新井 仁盛君を追い込みながらも、左中間に二塁打を放たれて1点を先取された二松学舎大附。「ちょっと、嫌な取られ方だったので、ベンチの雰囲気を変えたいと思った」という市原勝人監督は、その裏の攻撃前には選手たちをベンチ前に座らせて、「慌てないで落ち着いていこう」ということを伝えた。
その指示の直後に、この回先頭の9番豊島 優太君は巧みなバントヒットで出塁した。続く1番末松 祐弥君とのエンドランが決まって一、三塁。「先に1点を取られていたので、日大三を相手にちまちまとやっていってもしょうがないだろう」と、半ば開き直って積極的な攻撃を仕掛けたのが功を奏した。
続く2番北本 一樹君が一、二塁間を破って同点。さらに3番竹原 裕太君は巧みに左へ運んでいく二塁打で逆転。そして、四球後に満塁となって5番秦 匠太朗君がライトスタンドへ満塁本塁打を放ってこの回、無死のまま6点が入った。日大三の小倉全由監督は、たまらず先発の三輪 昂平君を諦めて佐渡 俊太君をリリーフに送り出した。三輪君はストレートが140キロを超えていたスピードがあったのだが、この日の二松学舎大附はそのストレートに負けずについていっていて振り負けていなかった。
二松学舎大附は、代わった佐渡君からも、鈴木 堅介君のセンター前ヒットでつなぎながら、末松君の三遊間をゴロで破るタイムリーと、失策もあって、この回、打者13人の猛攻で8点を奪うビッグイニングとした。
このリードで、先発の大黒 一之君は楽になった。力投派の大黒君だが、イニングによってバラついていたという印象はぬぐえず不安定な印象はあったが、5回に犠牲フライによる1点と、7回も二死満塁から暴投で失った1点のみに抑えた。こうした踏ん張りで、プレッシャーのかかる8回、9回は3人ずつで終える尻上がりのよさも示した。
最後の打者を打ち取り、雄叫びをあげる大黒投手(二松学舎大附)
二松学舎大附は公式戦で日大三に対して通算11試合目で初めての勝利となった。まさに「11度目の正直」。市原監督としては、この夏も二松学舎大附自身が夏の決勝10連敗となってしまったところだっただけに、「こうしたことの一つひとつをいい方向に思いたい」と、一つの壁を破ったことでまた、新たな次のステップを目指していこうという姿勢もより強くなっているようだ。
日大三を公式戦で倒すということに関して市原監督は、「私の恩師でもある青木(久雄)先生が日大三の御出身で、監督もやっていらっしゃったんですけれども、そんな縁もあって交流を持たせていただいていましたし、特別な存在でした。その壁を破れたのは、嬉しいです」と、素直に喜びを表していた。 それにしても、日大三レベルのチームであっても、一つ歯車が狂うとこういうことになってしまうということを改めて示された試合でもあった。 絶対的本命という声があった日大三だけに、悔しい敗戦となった。満を持して登板のはずだった三輪君が、やや肩に力が入りすぎという印象もあった。スピードはあっても、生きたボールではなかったということで、捉えられたら反発も強く、よく飛んだということになりかもしれない。3人目の釘宮 光希君も安定した投手なのだが、8回に1点を失い、味方の反撃を呼びきれなかった。
しかし、いずれにしても勇気を持って振っていった二松学舎大附の気持ちが勝った試合だったと言っていいだろう。
(文=手束 仁)