岩国vs広島新庄 エースが連投した勝負の決勝!

写真拡大 (全2枚)

好守備を見せた川本拓歩(岩国)

エースが連投した勝負の決勝!

 岩国・柳川 健大(2年)、広島新庄・山岡 就也(2年)。両チームのエースが決勝のマウンドに上がった。前日の準決勝で柳川は110球、山岡は186球を投げていた。疲れが残る状況ではあったが、それでも二人とも連投し、双方がチームの勝ちの形で勝負にこだわって戦った。

 両投手とも立ち上がりから苦しむ。まずは先にマウンドに立った柳川。 1回表、2番田中琢也(2年)の内野安打と、4番阪垣和也(2年)のレフト前ヒットで、二死一、二塁と走者を背負った。準決勝(倉敷商戦)で13個の三振を奪っていた柳川は、「投球練習の時は調子が良いと思ったが、振ってくれと思って投げたスライダーを当てられたりして、今日はちょっと違うな」と感じたという。そこで、『打たせて取る』と三振へのこだわりを捨てた。 打席は5番遠目塚潤(2年)。柳川の投じた1球目を振り抜くと、打球は一、二塁間へ。『抜けた』と思われた打球だったが、セカンドの川本拓歩(1年)がギリギリで追いつき、一塁でアウトに取った。 その瞬間、ホッとした表情になった柳川は、「(普段は)消極的な子だが、良く捕ってくれた。チームの勢いがついたし、自分としてもうれしかった」と、満面の笑みで、ベンチに戻ってくる1年生の川本を待った。

 1回裏、今度は広島新庄の山岡が苦しむ。制球が定まらず、1番川本を四球で歩かす。2番水野大地(1年)のバントで一死二塁となり、勝負のポイントが訪れた。

 3番東 史弥(2年)は空振り三振。ところが、ワンバウンドだったため、振り逃げが狙える状況なった東が一塁を目指す。その瞬間にスタートを切ったのが二塁走者の川本。広島新庄の田中啓輔(2年)はどちらに投げるかを一瞬考えた末に、三塁へ送球した。だが、結果はセーフ。アウトが取れなかったどころか、走者が進塁してしまった。 この後、4番二十八 智大(2年)がセンターへタイムリー。6番亀谷勇太(2年)の打席の時に、広島新庄のバッテリーミスが出て、岩国は2点を先制した。

 先の振り逃げが、まだ1回ということと、一塁に投げれば確実にアウトが取れるタイミングだっただけに、両チームの明暗が分かれる結果となってしまった。

優勝を決め、抱き合う岩国バッテリー

 試合は4回裏、岩国が1番川本のタイムリーで1点を追加し、3対0で終盤に入った。

 8回表。広島新庄は、3失点で耐えてきたエース山岡を、ようやく打線が援護する。先頭の1番中林航輝(2年)のヒットを皮切りに三連打で1点を返すと、4番阪垣の犠牲フライと、途中出場の5番二角太陽(2年)のタイムリーであっという間に同点に追いついた。

 「3点目を取られて、ドキッとした」というマウンドの柳川。攻める広島新庄は代打・熊田淳平(2年)を起用し、一塁走者の二角が走って、岩国守備陣を揺さぶってきた。 熊田の三振の際に、二角は三盗も決める。二死三塁で打席は途中出場の7番舟橋健誠(2年)。岩国・河口雅雄監督はタイムを取り、伝令を送った。

 「柳川が一番自信があるのは真っ直ぐ。だから真っ直ぐでドンドン行けよ」と話した河口監督。相手の盗塁による揺さぶりにも、『バッター勝負』を決め、キャッチャーの水野ら野手陣にも「走られても投げるな」という指示をしていたという。

 タイムの間に己の気持ちを固めたエース・柳川。2ボール2ストライクからの5球目、渾身の直球を投げ込み、舟橋のバットは空を切った。 「今大会で一番の球だった」という柳川。キャッチャーの水野も、「気持ちがすごくこもった球で、受けていても気持ち良かった」と痺れる球だったことを話した。

 同点止まりで終わった広島新庄。その裏、エース山岡の疲労の色は最高潮に達していた。四球で出した走者を、ワイルドピッチで本塁に還してしまう。これが決勝点。最後のバッターを打ち取った山岡は、疲れとホッとした表情を織り交ぜながら、悔しそうにベンチに戻った。

 9回表を三人で抑えた岩国・柳川が優勝投手になり、主将として優勝旗を受け取った。 「鳥取商戦(1回戦)の7対1や、倉敷商戦(準決勝)の7対0であったり、そういう試合をすれば一番良いのでしょうが、自分の中ではあまり望んでなかった。今日のような厳しい試合で抑えられたのは、やっぱり8回の投球が大きかった」と苦境のゲームに勝利できたことを喜んだ。

 岩国・柳川が123球、広島新庄・山岡は160球を投じた決勝。両エースが連投し、勝ちの形で臨んだ勝負を終えた時、双方に課題と収穫がはっきりと明確に表れたのではないだろうか。

(文=松倉 雄太)