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仕事に必要なパソコン業務が増える中、それに対応できない人への「テクハラ」が、問題視され始めている。テクハラとは、テクノロジーハラスメントもしくはテクニカルハラスメントの略で、ようはコンピューターにうとい人への嫌がらせだ。

「こんな簡単なこともできないの?」。そんな一言が「できない人」にとっては強いプレッシャー、ストレスになりえる。「業務に必要な技術なのに、習得しないほうが悪い」という声もあるだろうが、日常的にそうした言葉をかけ続けられれば、仕事をやる気もわいてこなくなるだろう。

こうした「テクハラ」に苦しむ人が、会社に対して改善や賠償を要求することは可能なのだろうか。佐久間大輔弁護士に聞いた。

●テクハラは「パワハラ」の一種で違法になる

「『テクハラ』は、パワハラの一種です。

職場のパワーハラスメントには、上司から部下へのいじめ嫌がらせだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものも含まれます」

――テクハラは「違法」?

「そう言える場合があるでしょう。裁判例では『他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は、原則として違法である』という判断が出ています」

――「賠償」も要求できる?

「テクハラにより心身の健康を損なった、人格権を侵害されたという場合は、請求が可能でしょう。なお、テクハラをした人だけでなく、使用者として会社も損害賠償責任を負うことになります。

またそれとは別に、労働契約上、会社には『職場環境配慮義務』があります。テクハラにより職場環境を悪化させた場合、会社はこの義務違反に対する損害賠償責任も負います。

つまり、会社が職場環境を改善せず、必要な教育訓練もしないで、社員に責任転嫁するのは違法だということです」

――労災認定もある?

「ありえます。労災認定される例としては、『部下に対する上司の言動が、業務指導の範囲を逸脱しており、その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ、かつ、これが執拗に行われた』というケースや、『同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた』ケースなどが挙げられています」

――会社に対して「職場の環境改善」を要求できる?

「はい。上記のようなケースでは、当然ながら、社員から会社に対して職場環境配慮義務を尽くすよう求めることができます。

ただ、習得機会があるのに、本人が習得を怠ったという場合には、査定に響くことがあります。その点については、注意が必要です」

つまりは、業務に必要なスキルが足りないからといって、その人に「嫌がらせ」を行うのは本末転倒で、許されないというわけだ。ただ、もし本人がその状態にあぐらをかいてスキル習得をサボっていれば、最終的には自分自身が報いを受けることになるといえるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
佐久間 大輔(さくま・だいすけ)弁護士
東京弁護士会所属。日本労働弁護団常任幹事。過労死弁護団全国連絡会議幹事。著書に、「精神疾患・過労死」(中央経済社)、「労災・過労死の裁判」(日本評論社)、「安全衛生・労働災害」(旬報社)など多数。
事務所名:つまこい法律事務所
事務所URL:http://tsumakoi-law.com/sakuma-daisuke/