仲代達矢(右)と小林政広監督(左)

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 31日、渋谷のユーロスペースで行われた映画『日本の悲劇』初日舞台あいさつに俳優の仲代達矢、北村一輝、大森暁美、寺島しのぶ、小林政広監督が登壇し、初日を迎えた喜びを語った。


 東京・荒川区で起きた「年金不正受給事件」をモチーフにした本作。余命いくばくもないことを悟り、自室を封鎖し、食事・水を摂ることをやめた父親(仲代)。そして父の年金を頼りに暮らしていた失業中の息子(北村)。そんな父子が、愛憎入り混じった感情をぶつけあう圧倒的な物語が展開される。


 2011年10月に撮影がクランクアップし、2012年1月に完成。それからようやく公開となったことに触れて、小林監督は「あれ(撮影)から2年ぐらいたつけども、やっと映画ができて。うれしいのと、ほっとしている気持ちです」と晴れ晴れとした表情を見せた。


 そして『春との旅』に続き、小林監督と2度目のタッグとなる仲代は「こんなシナリオを見たのは初めて。まだ観ていない人に先入観を与えてはいけないけども、これは究極の家族愛の話だと思っています」と明かした。


 続けて、仲代は「わたしは80を過ぎまして。役者を60年間やっているけども、わたしを『黒い河』という映画でこの世界に導いてくれたのは小林正樹という監督でした」と切り出すと、「その後、『人間の條件』や『切腹』『怪談』などに出させていただき、まさに彼(小林正樹)は育ての親。そんな80を過ぎた老いぼれを、同じ小林(政広監督)が拾ってくれた」と漏らし、21歳年下の監督に感謝をささげた。


 一方の息子役の北村は「脚本を読んで、力強さを感じた。正直、仲代さんと芝居ができるということで、こんなご褒美をいただいていいのかなという感じ」と感激をあらわにすると、「構えることなく、ものすごく気持ちよく作品の中に入れた。結果を考えずに、素の自分で取り組みましたね」と撮影を振り返った。そして最後に「こういう映画は必要だし、こういう映画に出られることを誇りに思います」と誇らしげな顔を見せていた。(取材・文:壬生智裕)


映画『日本の悲劇』は渋谷ユーロスペースほかにて公開中