飯田橋のふたばちゃん』は、有名コミック出版社を擬人化して、過去にあった事件や雑誌の個性をネタにしたあるあるマンガ。かなーりアンタッチャブルなネタだらけですが、笑って済ませちゃえ! 逆にわからない人は、検索して調べてみましょう。

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こんにちは!擬人化ものウォッチャーたまごまごです。
みんな萌やしてしまえ!

擬人化戦国乱世に登場した風雲児なマンガが、この『飯田橋のふたばちゃん』です。
ずばり、日本のコミック出版社を擬人化しました。
飯田橋なのは、そのへんに出版社あるから。水道橋とかね。
にしても、なんともスレスレなマンガが出てしまいましたが大丈夫か?

擬人化もの多いんですよ。国とか、都道府県とか、戦艦とか。極北だとゴキブリまであるからね。
じゃあ擬人化ものってなにが面白いの?
「あるある」ネタを共有できることなんです。笑いのクッションに包んで。

そういう意味では、コミック出版社の「あるあるネタ」ってすんごい面白いわけですよ。
双葉社から出ているので主人公は「ふたばちゃん」ですが、まずはメインになる4人を紹介しましょう。

講談ちゃん・スポーツが得意。元気っ子でアネゴ肌。得意なスポーツはボクシング。武器は丸太。
集英ちゃん・束縛がちょっときついけどなんでも完璧にこなす優等生。投票超重視派。アニメ化が得意。
小学ちゃん・恋愛のかけひきが得意で、ふわふわしているけど野球はずば抜けて得意。闇金も得意。最近はアラブと酪農が得意。
秋田ちゃん・ヤンキー。自転車も得意。相撲も得意。野球も得意グワァラグガキン。

うん。わかる。わかります。
あくまでも「元の出版社に対して読者が抱くイメージ」と「そこの看板作品」で構成されたキャラづくりなので、実話ではないです。
多分。

やっぱ講談ちゃんといえばイメージするのは、デンプシーロールだったり丸太だったりじゃないですか。鉄骨渡りじゃないですか。そういえばニチアサヒロインも講談よね。巨人はまだ出ていません。
秋田ちゃんは、仮にぼくが「デザインしろ」って言われても絶対ヤンキーにしますもん、わかる。今も昔もヤンキーといえば秋田ちゃん。

非常にうまいく、出版社の違いを描き出しているのは、調理実習の回です。
今どこの出版社でも「グルメ漫画」はビッグタイトルなわけですよ。
たとえば小学ちゃんであれば、「このあらいをつくったのは誰だァッ!」と、普段のふわふわ感をひっくり返したかのように怒鳴っても仕方ないよね。雄山的に。
集英ちゃんであれば、映画にもなる謎食材を集めに行くアレですよね。少年達はトリコになるよね。
講談ちゃんはというと、アゴの大きなクッキングするパパですよ。あのマンガも長寿中の長寿ですね。
じゃあ秋田ちゃんは? 「んーーーっ、ウマイッ、ウマ過ぎっ!!」と悶絶するズボラな飯子さんでした。
ちなみにグルメといえば、日文ちゃんが極端に得意だったりします。

その他にも数多くの出版社が出てきます。
あげていくだけで面白いので、ちょっと並べてみます。

・白泉ちゃん・花とか夢とかがひらひら舞う縦巻きロールのお嬢様。大剣を振るのも得意。歌うとデスボイス。
・角川ちゃん・メディファちゃん、エンブレさん、富士見さんをグループに取り込む恐ろしい子。
・スクエミちゃん・生きる世界がファンタジー。元はスクちゃんとエニちゃん。ゲームが得意、映画にはトラウマがある。
・竹書ちゃん・麻雀がひたすらに得意。ただしスクエミちゃんのファンタジー麻雀だけには勝てない。
・芳文ちゃん・ふんわかほわほわ。同じ顔の妹がキャラット、MAX、フォワード……たくさんいる。バンドやります。
・画報ちゃん・ヤンキー。秋田ちゃんと似て非なる。
・いちごちゃん・秋田ちゃんの妹。見た目幼女、中身スレスレの危ない子。
・ワニマガちゃん・アウト(ゾーニング)
・茜ちゃん・アウト(ゾーニング)

まだまだ出てきます。めっちゃ出てきます。よく作るな!
ほとんどが「出版社あるあるネタ」でまとまっています。
芳文ちゃんがたくさんいて違いがわからない、ってのはすっごいわかりますし、それでいてガテン系の人とも仲がいい(きららじゃない方面的な意味で)というのもよく見ている。
秋田ちゃんと画報ちゃんはどちらもヤンキーですが、秋田ちゃんはスポーツ寄り、画報ちゃんはガンアクションやファンタジー寄り(アワーズ的な意味で)でネコ好き(ねこぱんち的な意味で)、というのも、分かる人にはわかる。
スクエミちゃんは、一迅ちゃんとかマッグちゃんとか、ちょっとアンタッチャブルなネタが多いですが、まあ、うん。

出落ちじゃなくて、それが群像劇として成立しているのが面白いのです。
あるあるネタをしながら、みんながなにか一つに取り組む時に、個性が出る。
そもそも出版社がしのぎを削ってマンガを売るってこと自体、群像劇的な側面がある、と捉えれば、なるほどこれは理にかなっています。

本編では、アレを無くした事件とか、順番間違えた事件とか、訴訟沙汰の話とか、フライデーとか、作家引き抜きとか、いちごちゃんの条例ネタとか……結構……かなりきわどいネタもあります。
ありますが、ここは笑って済ませられるのが擬人化の強み。

最初は「なんて危ないネタをやるんだ!」と戦々恐々としたのですが、読んでいるとあまりの詳しさに「これ出版業界愛してないと書けないなー」というのが一番の感想。
早川書房も「マンガ出版社じゃないけど、小社も出してもらえないかしら。。。」と呟いていました。
『今日の早川さん』という、SF出版社ネタマンガを出していただけのことはありますね。
そうなんですよ「このマンガに出されてネタになる=それだけ有名で名誉あること」なんです。
こういうブラックユーモアが、笑って済ませられるって、幸せだなあ。

ちなみに大体のオチは「ふたばちゃんには目玉の売りがない」「おっさんくさい」。
いや、わかるけどさ!!! コミックハイ!とか面白いじゃん!! もっと上を向いて!!
個人的に、エスエフで人外な徳間ちゃん、とかの登場を希望したいところです。


原作・横山了一 作画・加藤マユミ 『飯田橋のふたばちゃん』

(たまごまご)