仲代達矢が年金不正受給問題に挑んだ映画『日本の悲劇』、完成から1年…ついに公開決定!
仲代達矢が主演し、年金不正受給問題を題材にした映画『日本の悲劇』が、8月に公開されることが決まった。2011年10月にクランクアップ、2012年1月に完成していた本作は、昨年秋の韓国・釜山国際映画祭を皮切りにインド、スイス、ロシア、そしてオランダで開催された第42回ロッテルダム国際映画祭でも上映されるなど世界各国を巡回中。日本での公開は、満を持しての凱旋となる。
映画は『春との旅』が好評だった仲代と小林政広監督が再タッグを組み、年金不正受給問題に切り込んだ意欲作。東日本大震災の衝撃に続き、自身がガンで余命幾ばくもないことを知った父親(仲代)は死を決意する。しかし気掛かりなのは、精神を病んで失業中の息子(北村一輝)で、彼の再出発のためにもお金を残すべく画策する。
その方法は、自身は自室にこもって餓死をし、死亡届を役所に提出せずに年金を受給させるというもの。一軒家という限られた空間を舞台に、暴挙に出た父親と、それを止めようとする息子との息詰まる攻防戦は必見だ。
現地時間2日に行われたロッテルダムでの上映も、年配者を中心に会場は満席。上映後のQ&Aでは、「実話なのか?」という問いや、同作品が東日本大震災の犠牲者と年間約3万人にも上る自殺者にささげられていることから「日本人は感情を表に出さないが、それができれば自殺者は減るのではないか?」という意見が上がり、白熱した意見交換の場となった。
小林監督はまず、オリジナル脚本の基となった、2010年に東京・足立区で起きた“111歳男性”の死亡届が提出されず、娘(当時81歳)と孫(同53歳)が年金を受給していたため詐欺の疑いで逮捕されたことをきっかけに、同様の事件が多数発覚したことを説明。
続いて「自殺の理由は世代によってさまざまだが(こうした事件が起こったのも)年配者が食べていけなくなったのが大きな理由ではないでしょうか? 映画の場合、スクリーンで映っている人の生活が自分に近いと非常につらいが、その一方で救われるという人もいる。この映画が、少しでもそういう人たちの救いになればうれしい」と語った。小林監督は引き続き『日本の悲劇』を引っ提げて、ノルウェーのオスロ、トロンハイム、ベルゲンで行われる特集上映に向かう。(取材・文:中山治美)
映画『日本の悲劇』は8月下旬よりユーロスペース、新宿武蔵野館ほか全国順次公開