同じウェルター級とはいえ、減量時点でBJとマクドナルドでは搾りかたの違いが分かる(C)MMAPLANET

写真拡大

UFC on FOX05「Henderson vs Diaz」が、8日(土・現地時間)にワシントン州シアトルのキー・アリーナで開催され、BJ・ペンが、実に2年1カ月振りの勝利を目指しローリー・マクドナルドと対戦する。

天才の異名を取ったBJも、過去5戦の戦績は1勝3敗1分と厳しい戦いが続いている。もちろん、対戦相手はフランク・エドガー、ジョン・フィッチ、ニック・ディアズと世界のトップが揃っていることも黒星が多い理由に挙げられるが、それゆえに現在のBJの弱点も浮き彫りになっている。

BJのウィークポイントは、兼ねてから指摘されているスタミナ不足ではなく、ずばりフィジカルだ。結果が敗北に終わった試合でも、彼は天才と呼ばれて然りの動きを見せている。現代MMA最大の特徴であるケージ際の攻防でも、BJは彼にしかないできない動きを披露できる。BJの一本足テイクダウンディフェンスとヒザと腰の柔らかさは、誰も真似をすることはできない。その柔軟な腰と足を駆使して、そこでくるのか――というタイミングで逆にテイクダウンを奪うことも可能だ。

ただし、そんな天才らしい動きは、一瞬の輝きで終り長続きしないケースが目立ってきた。ウェルター級で戦うようになってから目立つのが、対戦相手との体力の差だ。特定の場面では、さすがと見る者を唸らせる攻撃が可能なBJも、いわゆる当たり負けという場面が続くことで体力を消耗すると、思考がストップしたかのように動きも止まり、ガードで攻撃を受ける場面が多くなる。

打撃は今も抜群の当て感を誇る場面もあるが、ニックとの試合ではリーチの違いに翻弄され、中間距離の打撃戦でも遅れを取った。そんなBJが、10歳年下でリーチで15センチ以上の差があるローリー・マクドナルドと戦う。今も高い人気を誇るBJだが、マクドナルドはカナダ人とはいえ生まれ育ったブリティッシュ・コロンビア州は大会開催地シアトルから車で3時間ほどの距離しか離れていない。

多くのカナダ人ファンが会場に詰めかけることが予想される当大会で、マクドナルドはその長いリーチと、フィジカルの強さを全面に打ち出したファイトを心掛けてくるに違いない。テイクダウンから無慈悲なまでの容赦のないパウンドと、ポジショニングの連動は軟体動物を思わせる足の効かせ方をするBJにとっても脅威といえる。

マクドナルドはいわずと知れたGSPとトライスター・ジムの同門、彼がGSPと同じ戦いをする必要はないが名将フィラス・ザハビは、BJを研究しつくしており、マクドナルド流のBJ攻略方法を持っていることは間違いない。マクドナルドの狙いは、まずテイクダウン狙いでドライブし、ケージ際でBJを削ってくるはず。GSPと違い、倒れないとみるとケージをマットに見立てて、抑え込みよりもパンチを多用してくることも予想される。押し込み→倒し→立ち上がらせるのが、GSPのBJ攻略方法だったのに対し、マクドナルドは押し込み→殴り→押し込むという組み立てになるのではないだろうか。

BJとしては、この試合で勝利を得るには、まずドライブを許さないこと。これまでその当て感の良さを頼りに、柔らかい肩から伸ばされる縦拳のようなパンチが当たる距離で戦うことを貫いてきたBJだが、そろそろ距離間を変える必要が生じている。攻撃が当たらない位置から、いかに当たる位置に移動し、また当たらない距離に戻るか、移動する。ライト級で戦うならいざ知らず、ウェルター級でのBJは出入りの多さ=動きが求められる。自らの動きを続ける限り、BJのスタミナは問題ない。相手のペースに飲みこまれないために、新しいBJの距離間が見られるか、そこが焦点となる。
対戦カード&詳細はコチラ