「外事警察 その男に騙されるな ノベライズ」(イーストプレス)

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現在公開中の「外事警察 その男に騙されるな」の秘匿イベントに行ってきた。
場所は王子シネマという映画館。
王子という高貴な名前ではあるが、埼玉県に限りなく近い北区にある町である。
映画で描かれている国際テロを未然に防ぐスペシャリスト・外事警察という存在や、主演俳優・渡部篤郎のスタイリッシュなイメージと比べると、王子はちょいと庶民的な場所ではないか、と思う人もいるだろう。
ところが、映画でかっこよく活躍している外事警察の実物は、ふだんは一般市民に溶け込み地道に足で情報を稼いでいる。自分の仕事を誰にも明かすことはできず秘かに活動している苦労人なのだとか。
だからこそ、華やかな街の映画館で派手なイベントも行う一方で、こういった町の映画館でのイベントを秘かに行うとは、外事警察スタッフは抜かりない。
それに、こういうところでこそレアな情報が得られるのではないか?
そう記者魂を燃やして潜入を試みることにしたのだ。

劇場ロビーでは、堀切園健太郎監督が自らデザインした外事Tシャツを着て、グッズ売り場に立ち、パンフやムック本の購入者にサインをしていた。
なにか苦労人の監督のようではないか。NHKの人なのに・・・。
映画ではめちゃめちゃダークな世界を描いている堀切園監督だが、とてもイケメンなので女性ファンも多い。
証拠写真を撮ろうとしたら、販売スタッフがニコニコと「一緒に撮りましょうか」と手を差し伸べてくれた。ファンだと思ったようだ。ふふん。記者も一般市民にうまく溶け込めていたようだな(強がり)。

外事ファンは、思った以上に老若男女、幅広かった。
ただ、「一人で観に来る人が多い映画なんですよ」と岩倉プロデューサーが苦笑していたが。
確かにデートで誘うにはサブタイトルがやばい。「その男に騙されるな」だもの。誘うにしても誘われるにしても、男のほうはどういう顔したらいいんだ。
とはいえ、ロビーにはひとりじゃない人も多かった。彼らは、渡部演じる主人公・住本健司の着たオーダーメイドのスーツや小道具の数々や台本などの展示を熱心に見ている。
各種媒体に掲載された記事も漏れなく貼り出され、外事ファンにはたまらない空間に。私の書いた記事も貼ってあった(ホッ)。
グッズ売り場では、王子の老舗・ベーカリー明治堂さんが特別に作った「外事パン」が売り切れたという声が。一見なんのヘンテツもないパンだが、味はスパイに賭けて・・・というもので、スーパークールな外事の世界観に対して、実にあったか〜い手作り感覚に胸が熱くなる。
これはNHKエンタープライズのHさんたっての企画。監督の「衣」に対して「食」で勝負を賭けたらしい。

そして、試写以来、久々に「外事警察 その男に騙されるな」を観る。
上映前にイベントの司会者の方が、聞いたところ、もうすでに数回見ている方もいるそうで、中には14回というツワモノも。公開から一週間なのに。そういう人はそろって前列に座っているのだった。
さあ、本編だ。
堀切園監督入魂、光と影の濃淡が繊細な画面は、昨今の邦画にはないものだ。家によほどでっかいテレビがある人以外は、映画館で観たほうがいいと思う。
高まる鼓動と共にスリリングなストーリーに引き込まれていく。流出したウランをめぐって日本と韓国の諜報部員が策を巡らせていく展開は、騙し合いに次ぐ騙し合いなので少しも気を抜けない。
外事のエースとして最大の難事件に挑む住本は、沈着冷静に任務を遂行していくが、時々その心の奥がチラ見えしてハラハラさせられる。
ウランが使用されたら世界が大変なことになる。住本がどんな方法でその陰謀を阻止するのか、そんな手で!という彼の作戦に目が離せない。
住本、かっけー。ドラマ版を先に見ておくと、途中、外事のテーマがかかる瞬間、うおおおお、住本――ッと、こぶしを握ってしまうだろう。
見終わったら、昔の「健さん」「文太」映画のように、孤独な住本気分で街を歩いちゃうようなキャラクターの強さがある映画である。
だが待て、男性はそうだけど、女性ファンはどうすりゃいいのか。なんて難しく考えなくても尾野真千子や真木よう子気分でいっか。
 
映画上映後は、お楽しみのイベント。住本こと渡部氏は不在だが(大阪でキャンペーン中だったとか)、イケメン堀切園監督とキレ者の仲間たちによるトークショーが行われた。その面子が豪華。
脚本家の古沢良太さん、プロデューサーの岩倉達哉さん。
古沢さんは「リーガル・ハイ」も手掛けた方で、それを最終回まで書き終えての参加だったとか(そっちのゆくえも気になりますが)。
そして、住本の部下・外事四課の北見敏之さん、滝藤賢一さん、渋川清彦さん、山本浩司さんが登壇。
俳優たちからは、映画をもう一度見たくなってしまうような裏話が飛び出した。
滝藤さん演じる久野が、住本が外事四課を去った後、四課の主任になっていて、北見さん演じる金沢はドラマ版とは少し違う話し方を久野に対してしているとか。
滝藤さんは、映画で住本の「協力者」として危険な世界に巻き込まれていく果織役の真木よう子さんとは無名塾で同期だったので、共演には照れがあったとか。
公安きっての武闘派の森永がやられてしまうのが残念と渋川さんが言うと、監督が「それだけ相手がツワモノという意味なんです」とフォロー。
大友役の山本さんは、警察手帳を印籠のごとく出す場面がお気に入りで、
その時の表情がとてもいいと監督。
監督はイケメンなのに、とても気遣いの人。
でも、撮影の時はものすごくしつこく撮る。予定時間が押しに押しても粘ることを現場を取材した私は知っている。

そして、トークショー、最大の気になる話題は、やっぱり続編問題だ。
渡部篤郎さんは取材でも「外事警察」はもっと続けたいと言っていたが、 監督もプロデューサーもやりたい気持ちを表明した。
ところが、脚本家の古沢良太さんは「やりたくないですね」と即答。場が一瞬凍り付いたが、すぐに「多分、やりませんかと言われたらやると言ってしまうだろう」と訂正。そして「やるとなったら家族の許諾もいるので・・・」だって。
古沢さんって絶対ツンデレだと思う。 
というか、このイベント、監督とプロデューサーが古沢さんを取り囲んで
「続編、やるよね?」と迫る、公開念押しの場だったのではないだろうか。
やっぱり外事スタッフは抜かりない。
それから、全員そろった外事4(勝手に命名)の感じの良さも好感度が高く、映画では出演時間は少ないが、ドラマ版からなくてはならない存在である彼らの活躍も、もっと見たいと思わせるイベントだったと思う。
ホントにいいキャラぞろいなのは、記者も大いに認めるところである。「カーネーション」でブレイクした尾野真千子さんも外事メンバーだ。
古沢さんがトークショーで、「外事」で脚本家として鍛えられたと話していたが(その成果のひとつが「リーガル・ハイ」かも。少なくとも、「リーガル」のおもしろは「外事」に笑いがなかった反動だそうです)、尾野さんも渡部篤郎さんの演技が勉強になって「カーネーション」に生かされたと取材で言っていた。
いったいどんな道場なのか、「外事警察」の現場とは。
そんなことより、続編に胸をはせながら、イベント終了後、夜の王子の町へお客さんたちは散っていくのだった。
王子駅ってJRと東京メトロと都電が通っていて、なんかこう人間交差点って感じするし、こんなところに外事警察の人がいるのかもしれない。
(木俣冬)