アニメ版ミスター味っ子はDVDボックスが出ています。が、長らく絶版状態になっています。この機会に再版してくれないものでしょうか……

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皆様、昨晩(5月23日放映)の「マツコ&有吉 怒り新党」はご覧になったでしょうか? ご覧になったかたは、人気コーナー「新三大ミスター味っ子味皇のグルメリアクション」をご覧になられたかと思います。そしてそこには「料理漫画研究家 杉村 啓」の名前が! はい、企画協力をしたのでした。ちなみにエキレビライターのオグマナオトさんにも手伝っていただきました。

番組でも「くだらなすぎる」「見ても、感想は何一つ浮かばないけど面白い」と大絶賛(?)だったのですが、さすがに1987年放映のアニメですから知らない人もいるでしょう。そこで今回はミスター味っ子について簡単に説明していきたいと思います。

「ミスター味っ子」は寺沢大介先生によって1986年に週刊少年マガジンで連載が開始された、料理漫画の金字塔とも言える作品です。連載が開始されるまでのエピソードはモーニング食に描かれていたりします。その派手なリアクション、料理描写などで一世を風靡した上に、その後の料理漫画のみならず、カツの二度揚げやカレーの隠し味、お好み焼きの山芋などなど、現実の食生活についても多大な影響を与えた作品なのです。

そして、今回の怒り新党で取り上げられたアニメ版「ミスター味っ子」は1987年から2年間全99話で放映されました。アニメ版は、最初のうちは原作の要素を取り込んでいた物の、次第に脱線して別なお話になっていたりします。何といっても、あの過剰なまでのリアクション&演出がすごい! というわけで、料理漫画と聞くと「ああ、あの『うーまーいーぞー!』と言う奴ね」と、多くの人の心に残る作品になったのでした。

ではここから、番組で新三大味皇様のグルメリアクションに選ばれたお話について、解説していきましょう。

まず20話「日本の味・お茶漬け勝負」vs 芝 裕之 戦から。

味皇様が引退を考えており、ミスター味っ子こと陽一君を後継者に考えているという噂が流れます。その噂を聞きつけた味皇料理会日本料理部主任の芝さんは陽一君に勝負を申し込むのでした。勝負の品目は「お茶漬け」。陽一君のお茶漬けにお茶をかけた瞬間、茶碗から桜の木が生え、その場は春となります。壮大な世界にトリップする味皇様。そして日本料理に大切な四季の心をそのお茶漬けに見いだした芝さんは負けを認めるのでした……

ご飯の中にピーナツが入っているお茶漬けを食べたときに味皇様は「ぽりぽりぽりぽりさーらさら。お茶漬けぽりぽりさーらさら!」という名言も言っております(ここは収録されていませんでした。残念)

次は72話「対決ハンバーガー勝負! 最強の七包丁・阿部一郎登場」vs 阿部 及川 戦の回です。
この回は実は71話「執念のハンバーガー勝負! 懲りない阿部と及川」の回と前後編になっています。

味皇様が入院されたと聞いてお見舞いに行く味っ子達。軽い貧血を起こして倒れただけらしいけど、大事をとって養生するためと聞いて安堵します。そんな中、過去に味っ子に破れた阿部&及川ペアが、ハンバーガー屋をオープン。この店は評判になり、同じ商店街仲間の吉村さんのハンバーガー屋の客を根こそぎ奪ってしまうのです。そこで阿部&及川ペアと、吉村さんと組んで勝負することに(ここまでが前編)

しかし、今までの対決とは異なり、改心した阿部と及川の作る味も心も備わったハンバーガーに苦戦します。味皇料理会主任の面々の協力を得て、ようやくハンバーガーが完成。病院で一口試食をした味皇様は車椅子のまま病院中を爆走するのでした……

というのが、あのリアクションの前までのお話になります。特筆すべきは病院を爆走中の味皇様の七変化。赤ちゃんやナース服(女装)まで、貴重な姿が見られます。

ちなみに戦いは、慢心した阿部・及川コンビが手を抜いてハンバーガーを機械で大量生産するようになり、味っ子が勝利します。そして、味皇料理会と敵対している組織、味将軍グループの幹部「味将軍七包丁」のリーダー、阿部一郎(いままで戦っていたのは阿部二郎で、一郎の弟)との最終決戦へと挑むのでした。

そして最後は28話「激闘! 大阪城・カレー丼春の陣」vs どんぶり兄弟 戦です。

こちらは26話「見参! 浪速のどんぶり兄弟・大阪で勝負だ」27話「二人三脚で勝負だ! 陽一・一馬のカレーどんぶり」に続く、3話構成になっています。3話構成はアニメ版ミスター味っ子でも珍しい回となっております。

ライバルである堺一馬くんと組んで、浪速のどんぶり兄弟と対決することになったミスター味っ子。勝負の品目はカレー丼になりました。大阪城を舞台にカレー丼勝負が始まります。審査員を請け負った(なぜか兜姿の)味皇様は、どんぶり兄弟のカレー丼を絶賛。でも、陽一&一馬ペアのカレー丼の方が美味しく、口からレーザー光線を出して大阪城を浮かび上がらせます。

そして、ここでいったん陽一&一馬ペアの勝ちとなり、リアクションは終わるのです。でも判定に不服をもらすどんぶり兄弟。そんな態度に味皇様はキレて、どんぶり兄弟に向けてお説教をするのです。ここで、巨大化して大阪城を身にまとい、壊すのでした!

「やあやあ遠からんものは音にも聞け、近くばよって目にも見よ!」から始まるお説教。どんぶり兄弟は自らのうちにある邪心を認め、改心するのでした。

ちなみに豆知識としては、この大阪城決戦のナレーターというか司会をやっているのは嘉門達夫さんだったりします。


ちなみに三大○○なので惜しくも選に漏れましたが、44話「荒磯勝負・陽一式石焼魚の秘密」のリアクションもなかなかすごいです。前編にあたる43話では刺身を食べただけで口からビームを吐き、島を浮き上がらせます。そして、本番にあたる44話では石焼魚を食べて興奮し、口から大量の海水を吐いた後に海面を走り回り、さらには服を脱いでふんどし一丁でそのまま海面や海中を走り回るのです。書いていてなんだかよくわからなくなってきましたが、こうなんですよ!

さあ、ミスター味っ子アニメ版に興味を持った人もいるんじゃないでしょうか。ちなみに全99話なのですが、4部構成になっているということを頭にいれた方がいいかもしれません。

1部(1話から25話):原作にほぼ忠実で、味皇グランプリまでを描いています
2部(26話から50話):陽一くんと丸井シェフの味探しを描いています。(父親代わりの)丸井シェフを超える、父親越えストーリーとも言えます。
3部(51話から75話):味頭巾(味皇様のもう一つの姿。正体は誰も知らないことになっています)が登場し、怪傑味頭巾日本全国行脚編とも言えます。最後は味将軍グループと決着をつけます
4部(76話から99話):行方不明になった味皇様を探しだすと、味皇様は記憶を失っていました。記憶を取り戻すために各料理人が料理を作ります。

と、4部は結構暗いお話になっていて、心を折られて見続けられなかった友人もいたりします。最後はハッピーエンドになるので、心を強く持って最後まで見てください。

ちなみにアニメは原作とはストーリー的に完全に別物で、キャラクターの設定も異なります。原作マンガ版はこの2月発売のミスター味っ子2の最終13巻で完結しました。大団円を迎えたその後のエピソードも、イブニングスペシャルサイトで垣間見ることができます。

この機会に日本史上に残る料理漫画作品、ミスター味っ子の漫画版とアニメ版を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(杉村 啓)