戸田奈津子ら字幕翻訳者18人が選ぶ外国映画ベストテン
年末年始になると評論家など映画関係者によるベスト10がのきなみ発表されるものだが、この度、戸田奈津子や菊地浩司といった字幕翻訳者18人が、外国映画オールタイム・ベストテンを発表した。全157タイトルが挙げられており、日本の映画翻訳家協会に属する翻訳者たちが、翻訳者ならではの独自の基準と視点で選出していることから興味深い結果となっている。
映画翻訳家協会が編集した書籍「字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン」が昨年末に刊行された。ある意味、映画をもっとも深く見ている字幕翻訳者の生涯の外国映画10本は、1920年代から50年代の『黄金狂時代』『駅馬車』『第三の男』といった王道の作品群から、ハリウッド大作の『天使と悪魔』『ボーン・アルティメイタム』を選ぶなど、多岐に渡った157作品。
折しもハリウッドでは、映画の創世記を題材にした映画『アーティスト』や『ヒューゴの不思議な発明』が話題となっているだけに、時代を越えて愛される映画の魅力が見てとれる。これらの選出について「その日の気分でコロコロ変わる(戸田)」「自分の翻訳した映画は可愛いのだ(菊地)」「このような選出をするのは初めての体験(寺尾次郎)」といった、わかりやすいストレートな表現が並ぶのは、限られた文字数で端的に物語の内容を伝える翻訳者の職業柄といえる。
なお、同書には翻訳者たちの映画人生を書き下ろした原稿や知られざる字幕制作の裏話。また、映画評論家の渡辺祥子×菊地浩司による、評論家から見た字幕の問題点などを語る対談は、映画好きならば一見の価値がある内容だ。(南 樹里)
書籍「字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン」はAC Booksより発売中