照天神社のワイン。

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一時期、神社によく足を運んでいた。世間で話題になっている神社にも行ったし、通りすがりで気になった神社へフラッと入るのも好きだった。
実は神社って千差万別。“受験に強い”神社もあれば、“恋愛に効く”神社だってある。

そして、ここは恋愛に強い神社。素敵な人を探してくれたり、子供を授けてくれる神様「天之佐具女(アマノサグメ)」を祀る、「照天神社(てるてんじんじゃ)」(神奈川県相模原市)が、非常に話題になっているのだ。

正直、「縁結びに強い」と謳っている神社は数多い。その中でも、どうしてこの神社は話題になっているのか? その理由は「照天神社」のホームページに訪れると、少しだけわかってくる。
同神社ではなんと、お祓いの際にワインをくれるそうなのだ。そして、“携帯電話のお祓い”なんてお浄めもしてくれる。かなり斬新な試みを実施しているようだな……。

そこで、実際に相模原まで足を運んでみました。どうして、そんな事をするようになったのか。
当日に対応してくれたのは、神主の金子雄貴さん。
「色々なお祓いで乾杯に日本酒を使っていたのですが、みんな飲まないんですよね。事実、若い人は飲みに行っても日本酒は注文しない。そこで『若い人が飲むんだったら、ワインだろう』と思い付きました。実際にあげると、みんな凄い喜んでくれまして(笑)」(金子さん)
地鎮祭などではお神酒で日本酒を飲んでもらい、その後にワインを差し上げる。金子さん曰く「神様の体を通ったものを飲んでもらうのだから、それは日本酒じゃなくたっていい。皆さんに喜んで飲んでもらうのなら、やっぱりワイン」だそう。今の時代の要請を受けると、この結論は自然なのかもしれない。

また、“携帯電話のお祓い”を始めたきっかけが面白かった。お参りに来た女性から聞いた、ちょっとしたエピソードが決め手となったようだ。
「『彼氏と電話で話をしていて、アタマに来て携帯をブン投げた!』という話を聞いたんです。よく考えると携帯電話って恋愛だけでなく、人と人を繋ぐ現代の人間の体の一部みたいになっているんですよね」(金子さん)
だからこそ、携帯から悪い縁ができないようにお祓いをする。車だって新しくしたらお祓いするだろう。それと同様の考え方だ。「機種変更したから、お祓いに行こう」みたいな。

ただ、それは理由付けの一つでしかない。
「恋愛や人生に悩んでいたからといって、神社には来る人はあまりいません。ただ、“携帯電話のお祓い”目的で来た方のお話をじっくり聞くと、やっぱり何かを抱えていらっしゃいます」(金子さん)

そう。この神社が他の神社と異なる最も大きなポイントは、参拝客と一対一で1時間以上会話をするという事だろう。そこで相談に乗り、まとめた悩みを金子さんが文書にまとめて神様にお伝えする。ある意味、問診のような形に近い。
「私に特別な力なんてありません。『どういう生き方をしていくべきか』というのを、全て自分の経験からお話しています」(金子さん)
今までに神主として壮絶な道を歩んできたという金子さん。先輩からの虐めや左遷、さらに鬱にかかったこともある。それらが、血となり肉となった。

では、実際にどういうお悩みで参拝に来る方が多いのだろうか?
「恋愛と、あと仕事ですね。塞ぎ込んでしまった方も多いですが、時には『テメエ、馬鹿野郎。そんな所、辞めちまえ!』と言ってしまう場合もあります」(金子さん)
ギョッとしてしまうかもしれないが、これも金子さん独特の人間味。今では青森や兵庫、大阪からはるばる叱咤激励を受けにやって来る人も多い。また、一度来た方とはその後に電話やメールで連絡を取り続ける。「死にたい」と電話してきた女性に「生きろ!」と思いとどまらせたこともあった。
「僕はもう、来てくれた方とは知り合いや友達だと思っていますから。『気軽に相談して来て』と言ってあげます」(金子さん)

そして同神社の斬新な試みも、金子さんの信念によるものである。
「若い人が神社に来る機会は、お正月にデートがてら訪れる程度です。今や神棚が無い家も多いですし、お宮参りをしない家庭も増えています。このままだと、段々世の中から取り残されていってしまいます」(金子さん)
若者が結婚して子供を育てていく中、どこかで神社を通じた日本の精神を残してもらいたい。そうした気持ちがあるからこその方針だった。

そして、最後に金子さんから神主らしからぬパワー溢れるメッセージを。
「人間というのは心して生きれば変われるし、運命なんて無いんです」(金子さん)
かつては自身も弱っていた時期があるからこそ行き着いた、この考え方である。何とボクシングと乗馬をこなし、ベンチプレス112.5キロを持ち上げるという、驚くほどのバイタリティに満ちた神主さんでした。
(寺西ジャジューカ)