もともとエコ目的で始まった紙の門松

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正月飾りといえば門松やしめ縄が定番だが、本格的な門松を飾る家はそう多くない。どちらかといえば、門松の描かれた紙で代用している家が多いだろう。

紙の門松は「紙門松」「門松ポスター」「賀正紙」など呼び名はいろいろ。戦後の森林保護活動の一環として、門松自粛を呼びかけたことが普及のきっかけだ。

紙門松を飾る習慣は全国各地でみられるが、なじみのない地域にはまったくなじみがないものらしい。長野市出身の夫は私の実家で初めて見たときかなり驚いていた。たしかに紙門松の存在を知らない人にとっては、家々の玄関に門松のポスターが貼ってある光景はちょっと不思議に映るかもしれない。

私の地元山梨では、紙門松は非常にポピュラーだ。町内会などで配るところが多いにもかかわらず、スーパーやホームセンターでも売られているほど。地元スーパーの人に話を聞くと、
「正月飾りも最近は簡素化され、あまりお金をかけない傾向ですね」
紙門松の価格は1枚100円前後。同スーパーでは値段の違う2種類を販売しているが、差額30円でもやはり安い方が売れるそう。ちなみに値段の違いはサイズではなくデザインの差。高い方が色使いも華やかで豪華な感じになっている。売れ行きも好調で、
「どこの町でも1軒に1枚配られているはずなんですが……」
と店の人も不思議顔。おそらく企業などの需要もあるのだろう。

そんな紙門松だが、近年は財政的な理由や時代の変化を背景に配布をやめる自治体も増えている。たとえば、千葉県市原市では正月飾りの多様化や門松カード利用者の減少を理由に今年の年末で配布事業を終了。平成20年に同市がおこなったアンケートによれば、門松カードを利用している人は59%。配布の必要性については実に57%の人が不要と答えている。一方、新たな入手方法として近年広まっているのがインターネット。市原市のほか、岡山市や京田辺市などのサイトにもダウンロード用のファイルがあった。

本物であっても紙であっても正月を祝う気持ちは同じ。あなたの家では何を飾りますか?
(古屋江美子)