プロ選手と子供たちが意見を出し合って、出来上がった。

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今年のプロ野球、日本シリーズは本当に燃えた。あんなに野球でシビれたのは、正直数年ぶりだ。
確かに、世間の野球熱は以前より下降気味な印象があるが、今年のようなゲームを繰り返していけば、まだまだ絶対大丈夫。実際、私は約20年のブランクを経て野球への興味が再燃しました!

ところで、ジャンル自体の底上げに大事な存在って何だろう? もう言うまでもなく、子供たちだと思うのだ。スター選手に憧れる野球少年が、未来のスターになっていく。そうして、歴史は繰り返されていく。
だからこそ、今回のこの試みが興味深い。ミズノは今年の6月20日より、子供たちとプロ選手が一緒に野球用品を開発する「やきゅう基地 商品共同開発」という企画をスタート。約半年間の開発期間を経て完成したそれらの商品は、来年の5月10日より全国のミズノ品取扱店で発売される予定だという。

これって、本当に意義があると思う。そこで同社に伺ってみた。このような企画を開始したきっかけは?
「少子化や他スポーツの台頭などにより、野球の競技人口は減少傾向にあります。『これを何とかしたい!』と、我々は考えました」(同社・担当者)
野球の楽しさを知るには、小さい頃から触れるのが一番。特に、プロ野球選手の魅力に惹かれれば、それが一番大きな入口になりはずだ。

そこで、起ち上がった同企画。プロが子供時代に「こんなの、あったらいいな」と考えていた要素。もしくは、プロ選手が子供たちを指導する際に「これは、子供たちに合っていないんじゃないか?」と感じてきた点。それらが反映された野球用具が、ついに完成と相成ったのだ。

では、どのように開発は進んでいったのか。
まず、この企画趣旨に賛同して参加してくれたのは、“バット担当”の山崎武司選手(中日ドラゴンズ)、新井貴浩選手(阪神タイガース)、内川聖一選手(福岡ソフトバンクホークス)。“グラブ担当”の東出輝裕選手(広島東洋カープ)。“シューズ担当”の松本哲也選手(読売ジャイアンツ)。“ウエア担当”の由規選手(東京ヤクルトスワローズ)。
以上6選手と子供たちとの間で、開発会議はスタート。

また、インターネットでも全国の子供たちから意見が寄せられている。結果、「握力が弱いのでボールが掴みきれない。特にグラブの先の方で取るようなギリギリのボールは転がり落ちてしまう」、「握力が弱くても握りやすいグリップのバットが欲しい」、「コンクリートで走っても底が磨り減らないシューズが欲しい」といった、子供たちならではの声が届けられた模様。

それらのリクエストを元に完成した野球用具には、以下のような特長がある。
まず、バット。こちらは、各選手(山崎選手、新井選手、内川選手)のモデルで“軟式用バット”、“トレーニング用バット”のそれぞれ1種類ずつが完成している。選手自身の使うバット形状やそれぞれのこだわりが元となっており、手が小さく握力の弱い子供が扱いやすく、正しいフォームで振ることを身につけるための工夫がなされたそうだ。

グラブも、まさに少年向け。打球がグラブに入ってくる感覚を養うことを考え、製作されたとのこと。また人差指を指袋に入れず、革で出来た台に乗せる設計となっている。しかもその台の上には、タッチプレーなどの際に保護できるようカバーも付けられた。東出選手自身が使用する形状に似た、深めのポケット(くぼみ)と丸みが特長である。

スパイクに関しては、足首をサポートしながらも動きを妨げないような形状にしてある。履き口がくるぶしを隠さない程度の高さがあるのだ。これは、「子供の頃から足首の怪我に悩まされてきた」という松本選手自身の言葉を参考にした結果。
さらにミッドソールはグリップ性を向上させ、より地面を掴む感覚を追求している。

最後にアンダーシャツは、投球時に肘を高い位置で維持するインナーシャツを製作した。「子供の怪我で多いのは肘や肩。怪我をしないためには、正しい投球フォームの習得が大切」という由規選手の考えを反映し、投球で理想的な姿勢の一つとされる「ゼロポジション」に導くためのウエアが開発されたのだ。

これら全て、プロのアスリートと野球少年たちの意見が反映された野球用品である。本当に、画期的じゃないか。
「約6カ月をかけた初めての試みだったのですが、選手はとても協力的でした。子供たちも、喜びつつ真剣に打ち合わせに臨んでくれました」(担当者)
これだけの熱があれば、大丈夫。野球の未来は明るい、と信じたい。
(寺西ジャジューカ)

※文中のやまさきたけしの「さき」の漢字は、環境によっては正しく表示されないため「崎」で記載