アルザスにある街、ストラスブールでは毎冬フランス最大のクリスマス市が開かれている。

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街はクリスマスムード一色。モミの木の由来とは? ツリー飾りの始まりとは? 本場ヨーロッパはフランスからクリスマスにまつわる話をお伝えします。

クリスマスツリーの歴史には諸説あるがフランス東部アルザス地方もその一つだ。アルザス観光局によると、アルザス中央部セレスタの人文図書館には、1521年にクリスマスツリーが販売されたという最も古い記述がある。その後、モミの木にはリボンや赤リンゴなどで装飾されるようになり、17世紀から18世紀頃にはツリーにキャンドルもともされるようになった。その後、19世になると赤リンゴをかたどった球状のガラス製オーナメントが飾られるようになったという。

なぜ、ガラス製オーナメントを飾るようになったのだろうか? フランス政府観光局によれば、1858年に起きた大干ばつの際にアルザスが位置する辺りは農作物を収穫できず、ツリーに飾るための果物がなかったからだそうだ。そこでアルザスに隣接するロレーヌ地方のゴーゼンブルックにあるガラス職人たちが、実物の代わりにガラスで装飾品を作ったのだ。

さらにクリスマスリースも、ここアルザスが発祥地と言われている。古来、草木を用い作られたリースは「再生」を意味していた。その文化的下地の上に、1930年代にモミの木を使いロウソク、リボン、松の実、ドライフルーツで彩るクリスマスリースが生まれた。飾られるロウソクは4本で、これはクリスマス前4週間の待降節、一年の四季、そして人生を4つ期間で表すキリスト教の思想を反映している。待降節の間、毎週日曜日にロウソクを1本ずつともしていくのだとか。

ちなみにフランスでは、クリスマスイブの12月24日深夜(つまり日付が変わって12月25日)にミサへ行く習慣がある。これは南仏プロヴァンス地方に由来している。また、クリスマスにキリストの誕生を再現した模型を飾る風習も、フランスではプロヴァンスから広まった。元は12世紀に、イタリアの聖フランチェスコがおこなったものが18世紀終わり頃にプロヴァンスへ伝わり、その後フランス全土へ伝播したそうだ。

最後に忘れてはいけないのが、薪の形をしたクリスマスケーキ“ブッシュ・ド・ノエル”。元来はケーキではなくて本物の薪だった。クリスマスの夜は薪をリボン等で装飾し、油やオー・ド・ヴィと呼ばれる蒸留酒、または聖水に浸されたものを用い祝福して暖炉で焼いた。その灰も厄よけのお守りとして大切に扱われたという。この習慣、12世紀頃にはすでにヨーロッパ各地でおこなわれていたそうだ。しかし、その後生活様式の変化とともに暖炉は使われなくなったが、形はそのままに薪がケーキとして今に至っている。
(加藤亨延)