香港人いわく「どちらかといえば日本的だよね」という像。日本のイメージとは一体!?

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香港郊外の新界という地域に、黄金に輝く一万体もの仏像がずらりと並ぶ「萬仏寺」という寺がある。金の仏像は参道から山の上にある本堂まで続き、あまりの派手さから香港を代表する“珍名所”と日本人観光客の間では噂されているそうだ。早速、真相を確かめるため現場に急行。調べてきた。

最寄り駅は香港鉄路東鉄線の「沙田」駅。改札口を抜けて5分ほど歩くと参道入口に着く。そこから本堂までは約15分の坂道だ。境内に入ると、噂通り黄金色の仏像が上へと連なっている。これら仏像は五百羅漢像と呼ばれる釈迦の弟子たち。日本の寺でもポピュラーなもので、一体一体異なった表情をしているため、自分と似た像を必ず見つけることができると言われる。ただし、萬仏寺の場合はその表情と仕草が特にユニーク! これでもかと珍名所の空気を、参拝客に見せつけてくるのだ。

実際訪れてみると、マニア受けするような名所というより、欧米や東南アジアからの観光客も多く、普通にツーリスティックな雰囲気だった。年齢層も若者が多い。なぜ、日本人的には珍名所に思える寺が、一般の外国人観光客を集めているのだろうか? また、欧米人にとって萬仏寺はどのような位置づけなのか? そこで海外のガイドブックに注目してみた。

この萬仏寺、『地球の歩き方』の香港2011〜12年版ではさらりと触れられている程度だが、『ロンリープラネット』等の海外ガイドブックには、しっかりした解説が載っている。今回参考にしたのは、フランスの旅行ガイドブック『ミシュラン』の香港2011年版。ミシュランといえばレストランガイドが有名だが、通常の旅行ガイドブックも発行している。ご存知の通り、各スポットを「星なし」「一つ星」「二つ星」「三つ星」の四段階で表している。

萬仏寺の箇所を調べてみると観光地としての格付けは一つ星になっていた。ちなみに香港編で、同じ格付けの場所をさがすと、屋外にある大仏で世界最大の寶蓮寺が一つ星だった。さらに『ミシュラン』日本編の格付けとも比較してみた。例えば、東京では六本木が一つ星。京都だと京都御所が一つ星だった。つまり、ミシュラン的には萬仏寺と六本木もしくは京都御所は同じランクにあるらしい。

ところで、香港人は萬仏寺の様子をどう感じるだろうか。香港人に写真を見せて感想を聞いたところ、金色の仏像群に関しては特に驚いた様子はなかった。彼らにとって、その光景はそれほど奇異なものではないらしい。ただし、すべてが普通というわけではなく、一部の像に関してのみ違和感があるそうだ。
香港の寺院装飾は傾向が派手とはいえ、やはり日本人が感じる“珍名所”の空気は、現地人から見ても少々漂っているようだ。
(加藤亨延)