【セルジオ越後コラム】涙のロッカールームよりも悲しい日本の未来

13日に日本代表が発表された。2月2日のベネズエラ戦、そしてその後の東アジア選手権に臨むメンバーで、国内組だけで選出されている。いくつかトピックがある中で、もっとも注目を浴びているのが鹿島の小笠原満男のメンバー入りだね。

小笠原が昨シーズンのJリーグMVPになり、なんで呼ばれないんだという世論の流れを受けて岡田監督が翻意したとのいじわるな見方もできるけど、MVPにならなくても当然選ばれるだけの実力を持ち合わせている選手だ。

小笠原のメンバー入りは今後の日本代表を見ていく上で非常におもしろい。強烈な競争が持ち込まれたことになるからだ。岡田監督はフランスW杯直前にカズと北澤を外した過去があるけど、もしベネズエラ戦や東アジア選手権で小笠原が活躍すれば、これまで選ばれている選手が南アフリカW杯本大会のメンバーリストからはじき出されることになる。

それが中村憲剛なのか本田圭佑なのか。小笠原を攻撃的MFとして期待していることを明言したこともあって、そのポジションに競争が生まれることは必然だ。こういう競争はもっと早く持ち込まれるべきだったとも思うけど、これからの4試合で小笠原がどんな使われ方をしてどんなプレーをするかは必見だね。そうは言っても、岡田監督が中村俊輔を外す決断を下すことはありえないと思うけれど。

それから、12日には高校サッカー選手権の決勝戦が行われた。山梨学院大付が初出場で初優勝を遂げたわけだけど、これで5年連続初優勝校となった。伝統校がタイトルを独占していた頃に比べ、群雄割拠になった現在は、見る側にとってはスリリングでおもしろいかもしれないが、問題はそれが高いレベルなのか低いレベルなのか、ということだ。僕は現在の高校サッカーが前者だとは思えない。

山梨学院大付の選手のうち、何人がこの後プロでやっていけるだろう。去年大活躍した鹿島の大迫勇也も、その前年にブレイクした清水の大前元紀も、言い方は悪いがパッとしない。さらに、即プロではなく進学を希望する高校生が増えていることも、日本のサッカー界にとっては決していい状態とは言えないね。

土のグラウンドでやっていた昔に比べて、天然芝や人工芝で練習しているチームは増えたし、指導者もライセンス制度が導入された。にもかかわらず、トップで活躍する選手は昔よりも生まれてこない。
「涙のロッカールーム」もいいけど、本当に泣くべきは日本サッカーの近未来かもしれないよ。(了)


セルジオ越後 (サッカー解説者) 
18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中


●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中