綾瀬はるかが語る「一歩を踏み出す勇気」 日本初のハラスメント裁判に着想、映画『ファーストボイス』主演
日本初のセクシュアル・ハラスメント裁判として知られる「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」に着想を得た映画『ファーストボイス』が10月2日に公開される。本作でハラスメント裁判に挑む女性弁護士・朝日道子役を演じたのが、主演の綾瀬はるかさんだ。
職場で理不尽な嫌がらせを受け、退職を余儀なくされた上原恵(ファーストサマーウイカ)は、会社と上司を相手に前例のない「ハラスメント」裁判を起こそうとする。新人弁護士の藤野栞(松本穂香)が「勝ち目がない」と反対するなか、お人好しの弁護士・朝日道子(綾瀬)が「この裁判は必ず未来に繋がる」と立ち上がるというストーリー。
立ちはだかる常識という壁に、依頼者とともに挑む朝日を演じた綾瀬はるかさんは「弁護士という仕事は、俳優と似ている」と語る。作品に込めた思い、そして役を通して見えた弁護士という職業とは──。
●「世間はこうだから仕方ない」に抗う一歩
──台本を読み、朝日道子という弁護士に、どのような印象を持ちましたか
綾瀬:当時「絶対に負けるだろう」と言われていた裁判に、時間をかけて、諦めずに戦う姿が印象に残りました。
「無理だ」と言われたことでも突破していく朝日弁護士は、とても強い先生です。同時に、目の前の人に寄り添う優しさと、困っている人を放っておけず、最後まで一緒に戦う粘り強さも兼ね備えています。
以前にも弁護士役を演じたことはあるのですが、今回はバブル期が舞台で、時代も人物像も全く異なりました。
──ハラスメントという概念もまだ乏しかった時代に、裁判に挑んだ弁護士や原告について、どう感じましたか
綾瀬:相当なプレッシャーや批判にさらされたのではないでしょうか。世の中の「それが当たり前でしょ」という常識を変えるのは、すごく大変なことです。
一人ひとりが抱えた違和感や悔しさを「世間はこうだから仕方ないよね」と飲み込んでしまいがちなところを、きちんと言葉にして一歩を踏み出す。その勇気はすごいことですよね。
でも、誰か1人が動けば、「私も」という人は絶対に増えてくるんです。
朝日先生たちにも「誰かがやらないと、ずっとこのままだ」という思いがあったのだと思います。朝日先生には娘さんがいますから、「自分の娘も同じような世の中に置かれてしまうのではないか」という思いが、パワーの源だったのではないでしょうか。
●起き上がり小法師のような強さと寄り添う優しさ
──朝日弁護士の魅力はどんなところにありますか
綾瀬:しなやかなユーモアがあって、倒れても起き上がり小法師みたいに「大丈夫よ、やりましょう」と起き上がり、前向きに突き進んでいく強さですね。目の前の人に真摯に寄り添う優しさもあるので、この先生なら安心して何でも話せるし、一緒に戦えると信頼できるのだと思います。
未来に繋がる裁判だと信じ、諦めずに粘り強く行動できるところや、何かあっても物事を整理して立て直していく強さも魅力的です。私自身も「難しいな」と悩んだときに、「何かできるんじゃないか」と可能性を探るようにしているので、共感できるというか、朝日先生ほどではないけれど、似ているところもあるのかなと思いますね。
●「弁護士には粘り強さがとても必要」
──弁護士役を演じて、裁判や弁護士の仕事について驚いたことや印象に残ったことはありますか
綾瀬:裁判の期間が長いことですね。この作品でも提訴から判決まで約3年かかっていますが、実際の裁判でも判決まで年単位でかかることは珍しくないと、弁護士さんから聞きました。 その長い期間を、弁護士は依頼者や支援者とともに戦わなければいけません。
劇中でも、ハラスメント被害者である原告が、支援者や弁護士に「これは私の裁判なんです」といった主旨のことを言ったり、支援者が「私達は色んなモノを犠牲にして支援してきたのよ!」と発言したり……。そういった現実的な駆け引きや葛藤がとてもリアルでしたね。 弁護士という仕事はとても大変ですし、粘り強さが必要なのだと感じました。
●「弁護士という役を演じている部分もある」
──役作りでは、実際に弁護士から話を聞いたのでしょうか
綾瀬:『エリン・ブロコビッチ』など、法律の世界を描いた作品をいろいろ観ましたし、現場に監修でいらしていた弁護士の先生にも、たくさんお話を聞かせていただきました。
その先生が「裁判では、弁護士という役を演じているような部分もある」とおっしゃっていて。台本にある駆け引きや心理戦は、決してドラマの中だけの話ではないのだと。本当にすごいお仕事ですし、俳優と似ているところがあるのだなと感じました。
●違和感を否定しないことが、最初の一歩
──この映画を通して、どんなことを伝えたいですか
綾瀬:自分の中に感じた違和感や「あれ?」という気持ちを否定せず、意見すること。それが最初の一歩として大事なんだということです。朝日先生たちが何かを信じて一歩を踏み出し、諦めずに戦っていく姿から、観客の皆さんにも一歩を踏み出す勇気を感じてもらえたらうれしいですね。
勝ち負けに関わらず、誰かが一歩を踏み出すことで、同じ思いをしてきた人たちの力になり、時代や周りが動いていったのだと思います。裁判に挑んだ弁護士さんや原告の方々の一歩があったからこそ、今の時代がより良くなっている。そのことを、とてもありがたく思いました。
【作品情報】
『ファーストボイス』 2026年10月2日(金)全国ロードショー
出演:綾瀬はるか、ファーストサマーウイカ、松本穂香
監督:前田 哲 脚本:橋本裕志 音楽:富貴晴美
主題歌:ちゃんみな「History」 NO LABEL MUSIC / Sony Music Labels Inc.
製作:「ファーストボイス」製作委員会
配給:松竹/ワーナー・ブラザース映画

