「1日大さじ1杯で若返り」する「あの油」の効能とは? 「加熱調理はしないように」「運動のやり過ぎは要注意」
「ありのまま」をさらして生きてみたいけれど、やはり少しでも若く見られたい……。そんな本音を胸に秘めている方は必読だ。老化と深く関係する、その名もずばり「若返りタンパク質」について日本歯科大学新潟生命歯学部先端研究センター客員教授の前川知樹氏が解説する。
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自分の老いを感じる時--。皆さんにとって、それはどんな場面でしょうか? 「鏡に映った自分の顔を見た時」「歩いていて他の人によく追い抜かれるようになった時」「人の名前がすぐに出てこなくなった時」など、いろんな場面があることと思います。
そこで、少しでも老いに抗いたいと思ったら、目を向けていただきたいのが「DEL-1(デルワン)」というタンパク質です。「若さ」や「老い」に深く関係していることから「若返りタンパク質」とも呼ばれています。

誰でも体内に持っている物質ですが、30~40代くらいから急激に減ることが分かっています。ただし、その減り方には個人差があります。もしも実年齢より老けて見られるなら、あるいは同じ年の人より体の衰えが著しいと感じるなら、それはDEL-1の量と関係している可能性があります。
しかし安心してください。DEL-1は簡単な方法で増やすことができます。しかも、DEL-1の量が少なくなっている人ほど増えやすいのです。もし、太古から人々が追い求めてきた「不老長寿の秘薬」があるとすれば、その正体はDEL-1なのかもしれません。
〈こう語るのは、日本歯科大学新潟生命歯学部先端研究センターの前川知樹客員教授だ。国内外の機関と連携しながらDEL-1研究をリードする、この分野の第一人者として知られる。前川教授のチームはこれまでに約5500人分の健常者の血液データを蓄積し、DEL-1と老化の相関を明らかにしてきた。年齢を重ねても元気な人と、そうでない人の違いはどこにあるのか。その答えの一端が、DEL-1に隠されているという。〉
老化細胞の正体
まずは、次の項目をチェックしてみましょう。三つ以上当てはまったら、体内のDEL-1が不足している恐れがあります。
1 目が乾きやすい
2 歯ぐきが腫れやすい、出血する
3 背中が丸くなったと言われる
4 膝などの関節がよく痛くなる
5 階段の上り下りで息切れがする
6 冬に手足が冷える
7 肌が乾燥してかゆい
8 傷が治りにくく痕が残りやすい
9 風邪をひきやすくなかなか治らない
10 疲れが取れない
私たちはどうして年を取ると、「若い頃とは違った自分」になってしまうのでしょうか? 大きく関係しているのが、老化細胞です。私たちの体をつくりあげている細胞は分裂を繰り返し、傷ついた組織を修復して、古くなった細胞を新しく入れ替えています。
しかし細胞の分裂には限界があります。分裂が停止すると通常は死滅し、免疫細胞によって除去されますが、中には分裂を止めたまま蓄積される細胞があります。それが老化細胞です。炎症を引き起こす有害物質をまき散らし、周囲の正常な細胞へ次々と老化を「伝染」させていくという性質から、老化細胞は「ゾンビ細胞」とも呼ばれています。
老化細胞が増えるとどうなるのか。皮膚で増えればシワやたるみが発生し、血管で増えれば動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳卒中を招きます。骨で増えれば骨粗鬆症に、筋肉で増えればサルコペニア(筋肉減少症)につながり、寝たきりになるリスクを高めます。脳では慢性炎症からアミロイドβが蓄積し、アルツハイマー型認知症の一因になります。蓄積した老化細胞は周囲の細胞のDNAを傷つけ、がん化を促進することもあります。
いずれの症状も「年を取れば仕方がない」と思われていたことですが、それらに老化細胞がいかに関係しているか、お分かりいただけたのではないでしょうか。
三つの主な働き
いま国内外で、老化細胞を取り除く薬やワクチンの研究が進んでいますが、多くは人工的な化合物によるものです。一方、DEL-1は体内に存在するまさに天然の老化細胞除去物質。私たちの研究班は世界で初めてそのシステムを証明し、今年1月、国際的な学術誌で発表しました。
DEL-1の働きは主に三つあります。「老化細胞だけに自死(アポトーシス)を促す」「免疫細胞を自死した老化細胞へと向かわせる」「その老化細胞を免疫細胞に除去させる」です。
私がDEL-1の研究に足を踏み入れたのは2014年、米ペンシルベニア大学で歯周病治療の研究をしていた時でした。歯周病の悪化には、免疫細胞の一種である好中球(こうちゅうきゅう)の過剰反応が関係しています。当時、DEL-1は好中球の暴走を抑える分子という側面が知られており、共同研究者から「DEL-1を調べてみないか」と声をかけられたことがきっかけです。
転機は15年です。マウスを使った研究で、DEL-1が骨を壊す破骨細胞に直接作用し、骨がもろくなるのを防ぐ働きがあることを発見。さらに加齢によってDEL-1が減少していくことを突き止めたのです。以来、DEL-1と老化の相関関係や、DEL-1と病気の関係などについて調査や研究を行っています。
若返りを実現する鍵
特に骨や歯に関しては、DEL-1が若返りを実現させる鍵になると確信を持って言えます。今年1月に発表した研究では、DEL-1が少ないマウスほど老化細胞が蓄積して骨粗鬆症が重症化し、DEL-1を多く持つマウスは老化細胞が効率良く除去され、骨密度が保たれることも確認できました。
骨粗鬆症は、年を取ると避けて通れない病気の一つです。現在の治療は骨の破壊を止める薬の投与がメインで、副作用の懸念も残ります。DEL-1へのアプローチが確立されれば、副作用が少ない根本的な治療が可能になるでしょう。骨の破壊を防ぎ、もし再生を促せれば歯周病治療にもつながります。
さて、チェックリストの10項目に話を戻します。なぜ、これらがDEL-1不足のサインになるのか? DEL-1は体のあちこちにあり、さまざまな不調に関係しているものの、全てが自覚症状として現れやすいとは限りません。例えば、DEL-1は腎臓に非常に多く存在することが確認されていますが、腎臓は沈黙の臓器と言われるほどで、不足していても症状としてすぐには現れてきません。腎臓病によるむくみや疲れやすさを実感するのは、かなり進行してからになります。
1日大さじ1杯で
その点、チェックリストに挙げているのは、DEL-1不足の影響が比較的ダイレクトに現れやすいケースです。特に肌や目、口の中といった「体の表面や粘膜」は、DEL-1の減少で最初に変化が現れやすい部位です。チェック項目それぞれの「因果関係」を簡単に説明すると、次の通りになります。
1 目の乾きやすさ→DEL-1減少で涙腺に炎症が起こっている
2 歯ぐきの腫れ・出血→歯ぐきに炎症が起こっている
3 背中の丸まり→破骨細胞の暴走を抑えられなくなり、骨密度が下がって骨格が崩れている
4 関節痛→関節内で慢性的な炎症が起こっている
5 息切れ→肺胞や血管のしなやかさを保つ力が弱まり、酸素を取り込む能力が落ちている
6 冷え→微小血管に炎症が起こり、隅々まで血流が届きにくくなっている
7 肌の乾燥→皮膚の慢性炎症で、バリア機能が低下している
8 傷の治りにくさ→組織の修復・再生がうまくいかなくなっている
9 風邪の治りにくさ→免疫細胞の老化が進み、病気が治りにくくなっている
10 疲労→全身に老化細胞が蓄積し、疲労が抜けにくくなっている
「見た目が若々しい人ほど長生きする」という説は複数の研究で報告されていますが、私が行ったマウスの研究では、DEL-1を作り続けるよう遺伝子操作したマウスは、通常より寿命が長く毛並みや体つきも若々しいままでした。ヒトでも、DEL-1の量が多い人ほど肌が奇麗な傾向があります。客観性が乏しいのでリストに入れていませんが、毎日できるDEL-1チェックとして「肌の美しさ」を加えてもいいくらいです。
DEL-1の量は血液や唾液で測定できます。この測定法によって、実際にDEL-1が増えることを確認できた工夫が二つあります。一つは、「精製のアマニ油を1日大さじ1杯取る」です。アマニ油は、アマ科の植物「アマ」の種子を搾った植物油で、健康維持に不可欠な必須脂肪酸「オメガ3」が豊富に含まれています。このオメガ3に、DEL-1の産生を阻害する酵素の働きを抑え、体内のDEL-1を増やす作用があることが分かっています。
摂取する際の注意点
オメガ3はすでに世界中の研究で、生活習慣病の予防・改善や炎症の抑制、脳機能の維持、肌の潤いアップなどさまざまな効果が示されていますが、その一因としてDEL-1の増加があるのではないかと私は考えています。40~50代の男女10人に1日大さじ1杯のアマニ油を1カ月取ってもらったところ、DEL-1の量が約1.5倍に増えていました。オメガ3は、シソ科の植物エゴマの種子を原料とする植物油(エゴマ油)にも豊富ですので、アマニ油の代わりにエゴマ油を取っても構いません。アマニ油、エゴマ油のどちらも、スーパーやコンビニで買うことができます。
ただし、DEL-1をアマニ油やエゴマ油で増やすときは、注意点があります。オメガ3は熱や光に弱いため加熱調理は避け、食べる直前に納豆や豆腐、サラダ、味噌汁などにかけましょう。酸化しないように開封後は冷蔵庫で保管し、早めに使い切ってください。取り過ぎるとカロリー過多になるため、「1日大さじ1杯」を守りましょう。
DEL-1を増やすもう一つの方法は、「1時間ウォーキングをする」。運動によって、人間の骨格筋組織にあるDEL-1の発現量が増加することが確認されています。40~50代の男女24人に1カ月間、1日1時間のウォーキングを毎日行ってもらったところ、DEL-1の量がアマニ油と同様、1.5倍に増えていました。ウォーキングでなくても、軽い運動ならなんでも構いません。
飲酒との関係は……
「1日1時間のウォーキングを毎日はちょっと」という人は、1日30分・週3回を目標にウォーキングを取り入れてください。これを1カ月継続するだけでも、DEL-1は増えます。アマニ油にしろウォーキングにしろ、DEL-1は元々少ない人ほど変化が大きく出るため、年を重ねている人こそ取り入れる価値があります。肝心なのは継続すること。運動が苦手で三日坊主になりそうな人は、アマニ油の方が気軽かもしれません。私自身、みそ汁にアマニ油をかけて取っています。料理の味をあまり邪魔せず、毎日続けやすいです。
ほかにも、日々の生活の中で今すぐ意識したいことがいくつかあります。
まず大敵なのがストレスです。過度なストレスは肥満や睡眠不足を招くだけでなく、DEL-1そのものを減らす方向に働きます。ちなみにストレスは精神的なものだけでなく、ハードワークや激しい運動をしてもかかります。あるライターさんは、毎日ジムで1時間のトレーニングを行い、月間100キロを超えるランニングもしていたため「自分はDEL-1の数値が高いはず」と思っていたそうです。しかし、唾液で測定すると低くも高くもない数値でした。試しに運動を週2~3回、1回30分程度の“ほどほどの内容”に変えたところ、1カ月後、数値が見事に上昇していました。激し過ぎる運動がストレスとなり、DEL-1を減らしていたのかもしれません。
体に悪いイメージの強い飲酒は、DEL-1の数値に関してはそれほど直接的な影響を与えないという意外な研究結果が出ています。ただし、もちろん飲み過ぎはよくありません。
共通するのは「若々しい見た目」
同じ年代でも、日頃の生活習慣が違えば体内のDEL-1の量に差がつきます。また、加齢とともにDEL-1は減っていきますが、「若い=DEL-1の量が多い」と単純には言えません。以前、あるテレビ番組出演時に番組スタッフのDEL-1を測定したところ、20代のADさんの数値は40代後半相当。聞けばバランスの取れた食生活とはほど遠く、ご本人も納得の様子でした。一方、ウォーキングを日課にし食事にも気を配っている60代、70代、80代の方の中には、マイナス10歳レベルの高い数値を維持している人もいます。共通するのは、実年齢より若々しい見た目をしているということです。男女の比較では、女性の方が男性よりDEL-1の量が多い傾向にあるというデータが出ていますが、これは性ホルモンの差というより、食事や体調に気を付けている人が女性に多いことが関係していると考えています。
DEL-1と病気の関わりは骨粗鬆症や歯周病だけにとどまりません。成人の5人に1人が該当し、高齢者に多い慢性腎臓病。また、関節炎、失明リスクのある加齢黄斑変性、神経難病の一種である多発性硬化--。これらとの関わりを示すデータも集まりつつあります。骨粗鬆症・歯周病については、マクロライド系抗菌薬(一般的な抗生物質の一つ)がDEL-1を増やすことを確認済みで、治療薬の開発にも着手しています。ただ「薬」は、その病気の人だけが対象で、健康な人が気軽に使えるものではありません。それに対し日常生活での工夫は、薬ほどの効果はなくともいつでもどこでもできるのが利点です。今日から始めてみてください。1カ月後には「何か体が変わった」と感じているはずです。
前川智樹(まえかわともき)
日本歯科大学新潟生命歯学部先端研究センター客員教授。新潟大学歯学部歯学科卒業、同大学院医歯学総合研究科修了。米国ペンシルベニア大学リサーチアソシエート、新潟大学医歯学総合研究科高度口腔機能教育研究センター助教/研究統括機構准教授などを経て現職。DEL-1に関する研究を通じて、加齢性炎症、細胞老化、組織再生の関連を解明する先駆的な成果を発表し続けている、DEL-1研究をリードする日本の代表的研究者の一人。
「週刊新潮」2026年9月17日号 掲載
