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マイナーチェンジをどうするのか悩んだ

日産セレナが昨年末にマイナーチェンジし、フロントまわりが一新された。改めて担当デザイナーである日産自動車(以下日産)プロダクトデザイン部プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さんに、そのポイントなどを聞いた。

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「6代目セレナのデザイン評価は良かったんです」と入江さんは明かす。


昨年末にマイナーチェンジした新型日産セレナのデザインスケッチ。    日産自動車

「女性がターゲットユーザーなのでそこに向けてデザイン開発したのですが、ニュートラルでジェンダーレスな感じだと、男性からも非常に評判が良かったんですね。特に日産が得意とする、インテリジェンスでハンサムルックみたいなところがうまく刺さっていました。ですから、正直、マイナーチェンジをどうするのか悩みました」

そこで考えたのはふたつ。ひとつは評判は良いものの競合車と比較して、「若干品が良すぎてインパクトが少ないという声」があったこと。もうひとつはデビューから3年少々経ちフレッシュさが欲しいということから、ヘッドランプを含めたフェイスリフトが行われた。

しかし、一般的なマイナーチェンジでヘッドランプまで変更することはあまりない。

「改良前はVモーショングリルの横バーのクロームがヘッドランプの中まで入っていましたので、ヘッドランプ込みですごく長いデジタルVモーションを表現していました。ですからヘッドランプの中のクロームを変えないとフロントフェイスを変えた時のデザインがつながらなくなってしまうんです。

ですが、クルマとすれ違う時の顔の一瞬の印象はインパクトがありますから、ここは変更感を出さないいけませんでした」

和モダンをもっと強めようというテーマ

そんなインパクトにつながるのは、縦基調になったことだ。

「今回テーマとして、和モダンをもっと強めようというのがありました。(マイナーチェンジ前も)和のテイストにモダンインプレッションを加えるというコンセプトだったのですが、さらに進化させるようにしています」


日産グローバルデザイン本部第二プロダクトデザイン部プログラム・デザイン・ダイレクターの入江慎一郎さん。    内田俊一

横基調から縦基調になったことについては、「日本は縦基調の文化ですし、格子のきちんとした縦のラインで構成し、かつ着物と同じような合わせで非対称にしたグリルを採用しています。それがロアグリルまでつながっているんです」と説明する。

実は違和感が出るのではと入江さんも心配していたが、「うまく品の良いまとまったアイデアが出たので、大きくダイレクションチェンジしました」。その一方で、縦基調ではないデザイン案もあった。

「もっとアーティスティックなものや、縦基調でもパターンをいくつか考えていました。例えば全ての面が違う方向を向いたり、光の移ろいによって見え方が全然違う幾何学模様も考えて、揺らぎみたいなものができないかと。それも日本っぽさですから。

しかし、まわりの面構成が割とジオメトリックで幾何学的なので、そことの相性はやはり縦桟にして、ジオメトリックなパターンを使いながらも、アシンメトリック、非対称にするという案が最終的に残りました。

よく見ると、左右でパターンだけでなく、一本一本の縦桟の断面も変えているんです。それも結構チャレンジでしたね」

ルキシオンとハイウェイスターでどう差別化するか

そのグリルを実現するには困難を極めた。開発責任者の松井達彦さんが振り返る。

「クルマの正面に人が立って、横桟のグリルを見下ろすと奥まで見にくくなるんです。しかし縦桟のグリルではラジエーターなどの中身が丸見えになってしまうので、そこを消して潰していくのは大変でした」


セレナのデザインを担当した入江さんと、開発責任者の松井達彦さん(右)。    内田俊一

そこで入江さんは、こう説明する。

「縦桟の場合、角度によっては見えにくくも丸見えにもなるんですね。例えばインテリアのデフロスターの桟も見る角度によって中まで見えないでしょう。それをうまく利用して、左右で断面を変えることによってどちらかが丸見えになるという状況を防いだんです」

一方、松井さんは笑いながら「そうすると空気の流れが変わるんですよ。ですからそこでまた計算をし直して仕上げていったんです」と苦労を語った。

さて、『ルキシオン』と『ハイウェイスター』でデザイン面ではどう差別化したのか。再び入江さんが説明する。

「これまでは、ヘッドランプ横のフロントフェンダーの上に付いているフィニッシャーの色で差別化していましたが、プレミアム上級のルキシオンで、縦桟を使いながらもハイウェイスターよりも幅広くリッチに見えるように、横基調の色の使い方をしています。

さらにグリルの真ん中で切れてるところを上手く使いながら縦基調でありながら、横への流れを作ってよりプレミアムな設えにしています。ハイウェイスターは、よりスポーティになるよう、真ん中を黒にして左右だけに色をあしらいました」

競合車と比較し威圧感はないセレナのフロントだが、新型になったことで、品格はそのままにインパクトを増したデザインは見事といえる。この『品』はセレナのアイデンティティのひとつとして保ち続けて欲しいと感じた。