メタがほぼ3兆円で和解、18歳未満は「1日2時間」へ…子どものSNS依存が”企業の責任”とされた決め手

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メタが未成年のSNS中毒をめぐる訴訟で、最大約2.8兆円の和解金を支払うことで米国のほぼ全州と和解した。子供のSNS依存は本人の意思の弱さではなく、ユーザーを故意に依存させる企業側の問題だ--そう認定される流れが、いま世界で生まれつつある。日本の親たちが抱えてきた悩みの正体は何なのか。『マネーの代理人たち』の著者で、経済ジャーナリストの小出・フィッシャー・美奈氏が解説する。

子供のSNS依存は企業責任、メタは約3兆円の和解金

「(息子が)通話アプリで複数の友人と話しながら何時間もゲームをしており、食事や入浴の声をかけても止めず生活が乱れている」

「勉強しようとするとやる気が失せてスマートフォンで動画を見てしまい、勉強時間が足りず成績が下がっている」

「親子で決めたスマートフォンの利用ルールも、守れていたのは最初のうちだけで、今、利用方法について話し合おうとすると暴れて手がつけられない」

これらは、ネットやスマホトラブルについての東京都の窓口「こたエール」に掲載された実際の相談事例だ。生活に影響が出るような子供のスマホやSNS(ソーシャルメディア)の長時間使用をやめさせることができない、どうしたらいいのかーー。親御さんからの切実な悩みが多数寄せられている。

でも、果たしてこれは本人の意思とか親のしつけだけの問題なのだろうかーー子供のSNS依存症が社会問題化するにつれ、その問いは世界で広がっている。

そんな中、先月26日、未成年者のSNS中毒を巡る訴訟で、「フェイスブック」や「インスタグラム」を運営する米メタ・プラットフォームズ社の巨額和解のニュースが飛び込んできた。同社が今後10年間に最大180億ドル(約2.8兆円)の和解金を支払い、18歳未満ユーザーのフェイスブックとインスタの利用を「1日2時間」に制限するなどの措置を取ることで、米国のほぼ全ての州と和解した。

未成年者のSNS依存に「企業責任」を問う動きに風穴を開けたのが、今年3月のカリフォルニア州地裁での陪審員評決だった。幼少時からのSNS依存で、うつや自傷行為などのメンタル被害を受けたと20歳の女性が訴えていた裁判で、陪審員団は、メタとユーチューブのアルゴリズムには、ユーザーを依存症にさせる「意図的な設計」があり、会社側がその危険性を理解していたにもかかわらず対策を怠ったと認めた。

つまり、未成年ユーザーのSNS依存は自己責任ではなく、「無限スクロール」や「プッシュ通知」「いいね」や「おすすめ」などでユーザーを故意に依存させる企業側の「設計責任」だとされたのだ。

これが、米国各州(うち29 州は2023年の合同訴訟に参加)の司法長官がメタに対して起こしていた同様の裁判の流れを決定づけた。人口わずか200万人のニューメキシコ州で追加分をあわせて9億4200万ドル(約1,500億円)の支払いが命じられたことから、合同訴訟の司法長官らは、メタ社に2000億ドルから1.4兆ドル(約32兆円から220兆円)という天文学的な賠償金を突きつける準備をしていたと言われる。

今回和解が発表されると、メタ社の株価は一時急騰した。「ほぼ3兆円」という多額の和解金でも、懸念された桁ちがいの賠償金と比べれば、額が小さかったからだ。

未成年のSNSを禁止する国が続出。日本はどうする?

ここで興味深いのは、子供のSNS規制に対する各国の対応や考え方の違いだ。

EUは米国同様、デジタルサービス法(DSA)で、企業の設計責任を明確にしている。今年2月には、欧州委員会が動画投稿アプリの「TikTok (ティックトック)」に対し、同社のアルゴリズムが依存を誘発する設計になっているとの暫定見解を示し、無限スクロールや自動再生など、ユーザーを依存させる仕組みを段階的に廃止するよう求めた。

さらに7月には同社の未成年者のアカウント設定がDSAの安全基準を満たしていない、との追加の暫定見解も発表した。違反が確定すれば、「全世界売上の最大6%」の制裁金が科されるおそれがある。

これに対して、オーストラリアは、アルゴリズムの規制よりもSNSのリスクを判断できない子供の保護を優先すべき、という考え方を取り、昨年12月、世界に先駆けて、16歳未満のSNS利用やアカウント保有を全面的に禁止した。中国も18歳未満の平日(月-木)のオンラインゲームを全面的に禁止していて、未成年者は週末も、午後8時から9時までの1日1時間しかゲームができない。

また今年に入って、インドネシアとマレーシアも16歳未満ユーザーのSNS利用やアカウント保有を禁止、フランスも15歳未満のSNS禁止を9月から施行する。

こうした中、日本はどうするのか? 世界が「企業の設計責任」に舵を切るなか、日本だけが違う道を歩んでいる。その背景には、規制の遅れという一言では片づけられない、日米の"企業観"の決定的な差があった。詳しくは後編記事〈日本の若者、約140万人がSNSを「病的使用」…それでも"企業に甘い"日本人の国民性〉でお伝えする。

小出フィッシャー美奈

1982年にフジテレビアナウンサーとして就職。ニュース番組のキャスターなどを務めた後、記者職に転向。政治記者として総理官邸、自民党、野党、外務省担当、また外信デスクなどを経験。MBA留学後、投資業界に転職し、外資系証券会社、ニューヨークのヘッジファンドやボストンの大手投資運用会社で日本株のアナリストやポートフォリオマネジャーを務める。2016年に一線を退いたのを契機に本書を執筆。1986年フィリピンでのマルコス政権崩壊の取材で放送批評懇談会のギャラクシー月間賞(奨励賞)受賞。ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院(SAIS)修士、ペンシルバニア大学ウォートン経営学修士(MBA)。米国証券アナリスト(CFA)資格保持者。

著書に『マネーの代理人たち ウォール街から見た日本株』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

・小出フィッシャー美奈さんの過去記事一覧

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