「年金を早くもらって、本当によかった」5年繰上げで月17万円→月13万円のはずが、むしろ「激増」…67歳で資産8,000万円超えの“安泰老後”へ。始まりは、上司が放った「恐ろしい言葉」
「60歳以降、給料は厳しいぞ」――吉沢さん(仮名)は、会社の上司に突き付けられた現実に愕然としました。「何か手を打たなければ、老後は苦しくなる」。そこから始まった彼のチャレンジ。さらに、減額というデメリットを踏まえながらも「年金の繰上げ受給」を決断した背景と結果とは?
老後不安が可視化された「上司のひと言」
「年金繰上げをすると、早くもらえる代わりに減額されます。でもね、私の場合は増えたんですよ」
そう話すのは、67歳の吉沢ひとしさん(仮名)。始まりは、50代半ばで会社の上司から聞いた、こんな言葉でした。
「うちの会社は65歳まで働けるけど、役職がなくなって下手したら給料が半分ぐらいになる。ちゃんと準備しておいたほうがいいぞ」
給料が半減――。あまりに恐ろしいひと言であり、それまで現実味がなかった“老後の不安”がリアルになった瞬間でした。
当時の貯金は800万円程度。住宅ローンあり、子どもの教育費あり。退職金1,000万円が頼みの綱ですが、それでも足りないかもしれない……。吉沢さんが一念発起して始めたのが、投資の勉強でした。
とはいえ、日中は仕事があり、株価を追う時間はありません。行き着いたのは「じっくり世界経済の成長に乗る」という王道のインデックス投資でした。
50代からの巻き返し…「とにかく入金」の日々
月3万円からスタートし、徐々に増額。子どもが大学を卒業すると、学費に消えていたお金やボーナス、余剰資金を猛烈な勢いで投資信託へ回していきました。
「我が家は私が財布を握っていたので、当時、何をやっていたか妻は知りませんでした。今思えば、ちょっと怖いですよね(笑)。でも、自分なりに研究して『積んでいけば大丈夫』という確信ができたんですよ」
途中、コロナショックで画面上の資産は激減。血の気が引く思いをしましたが、吉沢さんは売らずに握り続けました。その後、市場は急速に回復。暴落時に積み立てを続けたことも功を奏し、60歳の定年を迎える頃には投資資産と貯蓄で2,500万円を突破。さらに会社から退職金約1,000万円が支給され、手元には十分な資産が出来たのです。
さらに、ここで吉沢さんは「ある決断」を下します。
「年金を60歳から、前倒し(繰上げ受給)でもらおう――」
年金が減るのに…それでも「繰上げ」を選んだワケ
日本の公的年金は原則65歳支給ですが、時期をずらすことができます。「繰下げ受給」の場合、1ヵ月遅らせるごとに受給額が+0.7%。65歳から70歳まで5年繰下げると+42%です。一方、「繰上げ受給」の場合、1ヵ月早めるごとに受給額が-0.4%。65歳から60歳まで5年繰上げると-24%になります。
吉沢さんの年金は、通常通り65歳から受け取ると月額17万円ほどの見込みでした。仮に5年繰り上げて60歳からもらい始めれば、24%の減額で月額13万円ほどに減ってしまいます。早くもらえる代わりに受給額は生涯減ったまま。しかし、吉沢さんはこう考えました。
「自分の資金力と当時の株高・円安トレンドを考えて、年金を減らしてでも『今すぐキャッシュを手にいれよう』と思ったんです。給料が下がる分を年金で補填し、その分、運用に回したほうがいいと」
こうして、吉沢さんは、60歳からの繰上げ受給を決断。自分と妻の勤労収入と繰上げた年金を生活費に充てながら、投資信託を運用し続けました。その際、同い年の妻の年金は繰上げないという「保険」もかけました。
その結果、車の買い替えや旅行などで取り崩しもありながら、67歳のいま吉沢さんの資産は8,000万円を超えたといいます。取り崩しを差し引いた結果だけの単純計算(平均)でも、年利12%以上というペースで資産が増えた計算になります。
「早く年金をもらえたうえに、資産全体が増えた。結果論ですし、誰にでもおすすめはできませんが、私は繰上げという選択に満足しています」
「年金繰上げ×投資」のメリット・デメリット
吉沢さんが選んだ方法は、「時間を味方につけた運用の最大化」でした。通常、60歳〜65歳の間は収入が減るため、資産を取り崩しがち。繰上げた年金を生活費などに充てることで、運用資産の減少を最小限にしたのです。
単純計算ですが、60歳時の資産3,500万円を年利5%で5年間運用するだけで、計算上は約4,470万円(+970万円)。ここ数年の相場でいえば、投資先によりますが10%超えもそう難しくはありませんでした。
ただし、この戦略にはリスクとデメリットも存在します。一度繰上げ請求をすると、取り消しはできません。また、65歳前に病気や怪我をしても、障害基礎年金を受け取れないなどの、制度上の制約も生じます。
なにより、吉沢さんの場合はちょうど右肩上がりの相場でした。しかし、もし60歳で繰上げ受給をスタートした直後に大暴落が起き、数年間相場が低迷していたら、「年金は減らされ、投資資産も目減りする」という事態に陥っていた可能性もあります。
長生き時代とはいえ、高齢になれば回復まで待つことが若い世代よりも難しくなります。自分の資産額、健康状態、リスク許容度などを冷静に見極めたうえで、老後の資金計画を立てることが必要です。

