名門・横浜高校野球部・村田浩明監督の「パワハラ」を元主将OBが実名告発 窃盗の罪を着せられた部員が退部、学校側の再調査で「関与は認められない」と結論も監督の謝罪なし
春夏通算39回の甲子園出場、6度の全国制覇という実績を誇り、プロ野球選手を数多く輩出してきた横浜高校。その指揮を執る村田浩明監督(39)の資質が問われる疑惑が浮上した。部員へのパワハラ疑惑と、村田氏が頼る"謎の除霊師"の存在に、ノンフィクションライターの柳川悠二氏が迫る。【前後編の前編】
【写真】電話をかけながら素通り 記者からの直撃質問にも答えなかった村田浩明監督
「やっていません」と言っても信じてもらえず
名門・横浜高校に次男が在籍するという保護者から連絡があったのは、5月の連休中のことだ。
「息子は村田浩明監督に寮内で起きた窃盗の罪を着せられて居場所を失い、退部しました。私たちと同じような目に遭う親子を今後出さないためにも問題にしたいと思っています」
告発者は若杉聖一氏。1994年の春夏甲子園に出場した横浜高校で、多村仁氏(元横浜ほか)や斉藤宜之氏(元巨人ほか)らと共にプレーし、主将を務めた人物だ。同校OBである村田監督の10年先輩にあたる。
次男のA君(18)は、神奈川で世代を代表する投手として小学生時代から活躍。2024年4月、父と同じ横浜高校に入学し、1年生の春から登板機会を得たが、2024年10月に起きた事件をきっかけに、昨年1月に野球部を退部した。今年5月には同校を自主退学し、新たな野球人生を踏み出したばかりだ。再起をかけるA君と、実名告発を選んだ若杉氏の2人からは覚悟が窺えた。
事件が起きたのは2024年10月22日。秋季神奈川大会を制し、翌春のセンバツ切符をかけた関東大会を1週間後に控える時期だった。寮内で1年生部員の財布から現金7000円がなくなったことが発覚する。当時1年生だったA君は翌日、監督室に呼ばれた。
「村田監督から『お前がやったんだろ』と言われ、いくら『やっていません』と言っても信じてもらえませんでした。村田監督は『お前の(治安の悪い)地元柄をオレは知っているんだぞ』とも言ってきました」(A君)
村田監督は、寮の防犯カメラにA君の犯行の様子が映っていると主張し、映像を見せてほしいと言っても「できない」の一点張りだったという。
「監督は『窃盗を認めないと(約1週間後の)関東大会のメンバーには入れない』『嘘をつくヤツは信頼できない』って。さすがにメンバーには入りたかったので仕方なく認めてしまったんです。他の部員には伝えないということだったから」
疑問に思うのはなぜ村田監督がA君を窃盗犯だと疑ったのか、だ。
「以前にも部内で窃盗があり、村田監督が部員を疑うような発言をしたことがあった。同級生の7000円がなくなったとき、自分の財布には1万7000円が入っていたので『ワンチャン、自分が疑われるかもしれない』と思ったんです」
そこでA君は財布から2000円を出して単語帳に挟みバッグに入れた。その様子を見た同級生がA君のバッグを持ち出し、コーチに渡したことで、A君が疑われたという。
父の若杉氏が事件の経緯を知ったのは約1か月後だった。村田監督から次のような説明を受けた。
「『息子はそんなことしない』と信じたかったんですが、『防犯カメラに映っているんですよ』と。そう言われたら謝罪するしかなかった。部内で大事にはしないということだったので、その時点では息子には問い質しませんでした」
しかし、村田監督はA君にも若杉氏にも、一度も防犯カメラの映像を示していない。財布から現金を抜いて隠すというA君の行動を他の部員が怪しんだとしても、犯行が映っていたとする映像を頑なに見せない村田監督にも疑問符がつく。寮の見取り図と防犯カメラの位置をイラストに起こしながら、若杉氏は言った。
「防犯カメラは寮の入口に2か所ありますが、廊下が映ったとしても、財布が盗まれた部屋の中まで映るはずがない。映像なんてなかったのではないか」(若杉氏)
「このまま残ってもどうせ退学だから」
一度は窃盗の罪を認めたA君を、村田監督は関東大会のメンバーに入れなかっただけでなく、練習にも参加させなかった。再びA君の証言だ。
「アカボウって言うんですけど、横浜高校には何かやらかしたヤツがグラウンドの清掃活動をするペナルティがある。窃盗なんてやっていないのに、どうしてアカボウをやっているんだろうと思うと、情けなくなりました」
A君は監督室に赴き、改めて「自分はやっていません」と訴えた。しかし村田監督は聞く耳を持たなかったという。
「監督室にある金色の龍の置物を指さし、『お前はこの方に裏切られた』と言われました。意味が分かりませんでした」
若杉氏もこう振り返る。
「関東大会のメンバーから外れた理由について、『神に選ばれなかった』と言われました。話をした時、監督室の中には奇妙な御札が貼られていて不気味でした」
A君が退部を決意した出来事は、年が明けた2025年1月4日に起きた。
「村田監督が『また現金が盗まれた』と言い、自分のほうをちょくちょく見てきた。今回もやってもない罪を着せられるのかとウンザリしました」
1月10日には、部室に置いていたA君のグローブが紛失。しかし、同級生の現金紛失とは打って変わり、こちらが部内で問題にされることはなかったという。
A君はようやく若杉氏に「窃盗の罪を着せられた」と告白。親子で話し合い、一度は村田監督に野球部への復帰を申し出たのだが……。
「新たに起きた事件も含めて『2件とも罪を認めろ。認めないなら復帰はさせない』と言われたんです。やっぱりこの監督のもとでは野球を続けられないと思いました」
昨年1月に野球部を退部した後も、A君は村田監督から信じがたい言葉をかけられたという。
「『このまま残ってもどうせ退学だから』と言われました。多分、自分にはいなくなって欲しかったんだと思います」
「高校野球をもっとやりたかった」
昨年2月には、A君の体に異変が生じた。靄がかかったように右目が見えにくくなり、実兄とのキャッチボール中に距離感がつかめなくなったのだ。診断書には「ストレス性視覚障害の疑い」と記されていた。
「自分、メンタルは強い方なんですけど、弱いヤツなら自殺していたんじゃないですかね。それぐらいあの時期はしんどかったです」
野球部退部後、若杉氏はA君の名誉と将来を守るためにも、冤罪を晴らすべく学校に再調査を依頼した。当初は公式戦などを理由に明確な返答は得られなかったが、事件から約1年が経過した昨年9月20日付で、学校側は次の「調査報告書」をまとめた。
〈再調査の結果、周囲の証言とA君(原文は本名、以下同)の主張が一致せず、A君の関与を断定することはできませんでした。/よって、学校としては、A君の当該事案への関与について、証拠不十分により認定しないと結論づけました〉
村田監督がA君を窃盗犯と決めつける根拠とした防犯カメラの映像には触れないまま、若杉氏やA君の主張が認められたかたちだ。学校は同日付で、A君のグローブの「紛失・盗難届」を受理している。だが、報告書が出た後も、村田監督より謝罪の言葉などはなかったという。
A君が心中を明かす。
「甲子園で投げたかったというよりも高校野球をもっとやりたかった」
若杉氏が続ける。
「高校に進学する際に、他の学校に進学する選択肢も与えてあげるべきだった。息子に申し訳ない気持ちでいっぱいです。村田監督には退任と謝罪を求めたい。私もいちOBとして全国の球児と高校野球ファンが憧れるような、横高の本来の姿を取り戻したいです」
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横浜高校野球部で注目されているのは、パワハラ疑惑だけではない。後編記事では、村田監督が頼る"謎の除霊師"の存在について、詳細にレポートする。
▼▼▼後編記事▼▼▼
【つづきを読む→】横浜高校野球部・村田浩明監督が頼る「謎の除霊師」の存在 ベンチには解読不能な文字が書かれた黄色い御札、主力選手に対し除霊行為も
【プロフィール】柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/1976年、宮崎県生まれ。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。他の著書に『甲子園と令和の怪物』がある。
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※週刊ポスト2026年7月10日号
