シャドーで先発が濃厚な南野。ゴールやアシストなど決定的な働きが期待されている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

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 2026年北中米ワールドカップ・アジア最終予選も中盤に差し掛かった。C組で首位に立つ日本のライバルと目されたオーストラリアとサウジアラビアが11月14日の直接対決で0−0という結果に終わった。

 これで日本が15日のインドネシア戦で勝てば、両国との差は7に拡大。さらに19日の中国戦でも勝利すれば、完全なる独走体制に入る。2024年を理想的な形で終え、2025年へとつなげるためにも、まずはインドネシアから確実に勝点3を手にして弾みをつけたいところだ。

 最終予選突入後、基本的に3−4−2−1のメンバーを固定している森保一監督は、今シリーズで負傷による選外のFW上田綺世とDF谷口彰悟の不在を受け、最前線に小川航基(NEC)、最終ラインに橋岡大樹(ルートン)を入れる見通し。それ以外は過去4試合を踏襲するはずだ。

 唯一、変動のある2シャドーのポジションに関しては、久保建英(レアル・ソシエダ)が10日のバルセロナ戦にフル出場し、代表の全体練習合流が13日にずれ込んだのを踏まえると控えが有力。

 となれば、今回は9月のバーレーン戦と10月のサウジアラビア戦で見られた南野拓実(モナコ)と鎌田大地(クリスタル・パレス)のコンビがスタートから行くことになるだろう。

「僕は常にフォワードの近くで仕事をすることが自分の生きるパターンだと思います。個人的にはそれをどううまく出していけるかを練習から意識しています」と南野は語っていた。今回は1トップが小川になる分、近い距離感でサポートしていくことが、攻めの厚みを加えるポイントになりそうだ。
 
「航基と綺世は似たところがありますけど、ゴール前の動き方の特徴はちょっと違うのかなと。航基の方が裏に動く回数が多いと思うし、彼はダイナミックな動き出しが本当にストライカーっぽい。

 僕らシャドーとかがチョンチョンとボールを触った後に、動き出したところをタイミング良く使ってあげれば、良いチャンスを作れる」とも南野は強調。鎌田とうまく連係しながらお膳立てにも回る構えだ。

 南野&鎌田のコンビで小川の良さを引き出し、早い段階で先制点を奪えれば理想的。そういう形に持ち込みたいところだ。

 インドネシアのシン・テヨン監督もそのあたりの特徴を徹底分析し、対策を講じてくるだろう。日本が攻めあぐねる展開もないとは言い切れない。

 それでも、森保監督にとって心強いのは、多種多様なシャドーの組み合わせを状況に応じて使えること。南野・久保、鎌田・久保というコンビもありだし、オーストラリア戦のように堂安律(フライブルク)と三笘薫(ブライトン)をシャドーに動かして、外に伊東純也と中村敬斗(ともにS・ランス)という打開力と推進力のあるタイプを配置するのも可能である。

 インドネシアが5バックで来ることを想定すると、オーストラリア戦で絶大な効果を発揮した三笘&中村のドリブラー併用は今回も有効な策かもしれない。彼らはどちらも自らゴールに直進していくプレーができる。前田大然(セルティック)がワイドに入り、中に三笘か中村が陣取っても同様だろう。

 ここ一番で点が欲しい時に、彼ら左サイドのスピードと機動力を前面に押し出すという策があるのは、日本にとっての大きな安心材料になるはずだ。

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 それに比べると、右サイドの方はどうしてもクロスを入れる攻めに偏りがちだった。そこは伊東も久保も反省している点だ。

「僕はやっぱり早めにクロスを上げるとか、そっちの方にフォーカスしてしまったというのがある。そこで決め打ちせずに、人に頼るんじゃなく、自分の良いところを出せるように頑張りたい」と久保も自戒の念を込めて語っていた。

 確かに彼も伊東も堂安も、思い切って中に侵入してシュートを打てる選手。その強みを出さなければ、相手も怖さを感じないし、守りやすくなってしまうのだ。

 昨冬のアジアカップでの対戦を振り返っても、日本がインドネシア相手に決定的なチャンスを作っていたのは、守備陣のギャップを突いてポケットを取ったり、ペナルティエリア内で空いたスペースから大胆なシュートを放った時だった。
 
 今回のインドネシアが複数の帰化選手を加えたとはいっても、その弱点がすぐに克服されるわけではない。日本としては、2シャドーを中心にゴールに直結するようなアタックを心がけていくことが肝要なのだ。

 インドネシア戦で森保監督がシャドーに関して、どのような采配を見せるかは注目されるところ。1年ぶりに呼び戻した古橋亨梧(セルティック)も有効活用しながら、さらに幅広い組み合わせや攻めの形が見られることを期待したいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)