新岡隆三郎キャディーが語る上田桃子との8年間「いつも新人のよう」「右手に包帯を巻きながら優勝」
今季限りで第一線を退く女子ゴルフの上田桃子(38)=ZOZO=は、大王製紙エリエールレディス(14〜17日、愛媛・エリエールGC松山)に出場する。2017年からコンビを組み、2勝を挙げた新岡隆三郎キャディー(51)が見てきた新人のような姿や、忘れられない一戦など、8年間の思い出を語った。今週は最終戦のメジャー、JLPGAツアー選手権リコー杯(21日開幕、宮崎=報知新聞社後援)出場へ向け、タッグ3勝目に挑む。(取材・構成=富張 萌黄)
上田は3日に自身のインスタグラムで休養を発表した。7日には記者会見を行い、「そろそろ次のステップに行く時期がきた」と語った。だが、第一線を離れる考えは以前からあったと新岡氏は明かす。
「2年くらい前から『今年でちょっと(引退)かなって考えてます』とは言っていた。でも、今年になって本当なんだと」今季の上田は序盤に3試合連続予選落ちなど、思うような成績が残せずにいる。トップ10入り3度は、14年の日本ツアー復帰後ワースト記録。けがにも悩まされていたという。
「春先に左手首を痛めて実際、あまり良くなかった。練習量も少なくなって、腰も痛めてトレーニングもできなくなって、今年のシーズンは良くなかった」ツアーを離れることについて、相談はなかった。新岡氏は上田の意志を尊重。走り続けた20年間は常に全力だったという。「『(離れようと)思っています』と言われて。でも結局、話したところで『頑張りなよ』と言うこともないし、本人が決めることだから。いつも新人のようにやっていた。中途半端じゃないし、20年やり尽くした。逆にめちゃくちゃやったでしょ。体も元気だし、(飛距離も)飛ぶし」
6月に38歳を迎えた上田。プロ20年目のベテランになっても、心は常にルーキーのようだったという。今年の苦しい時期も気持ちの面は、何一つ変わることがなかった。「試合の準備中に『今週はこういうテーマでいきたいです』と。新人かよ(笑い)。終わってからも「私なんでこんな下手なんですかね」と課題を作って、全部に全力投球。技術、練習法もインスタで見つけてきたり。一打一打も全力。17勝も全部気持ちで勝っていると思う」
上田との思い出の試合を聞くと、「19年のTポイント×ENEOS」と即答。1打差2位で最終日を迎えるも、前日の夜に右手中指の激痛に襲われた。最終日の朝、コースに来たものの、棄権するつもりだったという。そんな中で優勝をつかみ取った一戦。新岡氏にとって忘れられない大会となった。
「右手に包帯を巻きながらやって優勝した。それが衝撃過ぎて。朝は『棄権するんで』とあいさつだけ来た。それでも練習場で『桃ちゃん、やってみない? ちょっと打って』と言った。スタートして1番でパー取って次のホール、次のホールとやっていった。そしたらどんどん距離が普通に戻ってきて。しまいには、ロング(パー5)の2打目で『スプーン(3ウッド)ですかね、クリーク(5ウッド)ですかね』みたいに迷ってて『迷うなよ、スプーンだよ』と。そこで優勝してというのは一番、思い出に残ってる。しかも次の日『治りました』と連絡が来たので」
タッグを組んで8年目。2人で手にした勝利は、19年のTポイント×ENEOSと、22年の富士フイルム・スタジオアリス女子オープンの2回のみ。上田にかけたい言葉にも、申し訳ない思いがあふれているという。「結局、2勝しかしてないから、最後は『力不足でごめんね』と言おうかな。本当はもっと2人で勝ちたかったから、あるとしたらそういうのかな」
今週は上田のバッグを担ぐ新岡氏。やはり最終戦出場をターゲットにすると話す。メルセデス・ランクは46位と厳しい状況だが、37位程度に浮上させれば出場も視野に入る。指標まで70・21ポイント差。今週、単独8位以上(70・5ポイント)なら、上田の雄姿を来週も見ることができる可能性が高まる。気合いの入る一戦だが、普段と変わらない気持ちで臨むと新岡氏はいう。
「どうにかリコーまで行ければ。そしたら本当に最高。でも、今週も普段と変わらないと思う。やり始めたら絶対(普段通りのスイッチが)入るから」
リコー杯出場を果たせば、上田の初メジャー制覇へのラストチャンスにもなる。次週での有終の美へ―。2人でまずは今週4日間、18勝目に挑む。