繊細なデザインに高い評価=紋章上絵の地主成利さん―現代の名工・京都
現代の名工に選ばれた「地主紋章工芸」(京都市中京区)の地主成利さん(69)は、着物に家紋を施す紋章上絵の職人。
紋型紙を手彫りで作製し、専用の筆と墨で描いていく伝統的な技法を用いる。大河ドラマや映画の舞台衣装なども手がけ、繊細で美しいデザインは着物業界以外からの評価も高い。
山形県鶴岡市出身。幼い頃から絵を描くことが好きで、中学卒業後に紋章上絵の世界に入った。地元で6年修行した後、知り合いの紹介を受け、京都で技術を磨いた。
コンピューターを使用した家紋のデザイン作製の開発にも早くから取り組んだ。家紋のデータベース化を進め、「きれいな線を素早く描ける取っ掛かりになった」と語る。コンピューターを用いた方法は当時前例がなく、周りからは批判されることもあったという。「一からの勉強だった。描く作業もあり、その勉強も並行してやらなければならなかった」と振り返る。
現在はバブル期と比べて仕事が安定せず、「若手を育成しても、独立して頑張れと勧めにくい」と語る。それでもプライドを持って仕事をする若手の力になれればと、アドバイスを続けている。
線を均等にそろえながら描くのが紋章上絵の難しさだ。今も技術を追求し続けているといい、「どうやったら美しいものが作れるか」と日々葛藤している。「家紋の素晴らしさを世界中に広めていきたい。それくらい夢があった方がいい」と笑顔で語った。