楳図かずおさん死去 功績を振り返る 手塚治虫が「天才」と称えた画力 タレント・映画監督としても活躍
「漂流教室」「まことちゃん」などで知られる漫画家の楳図かずお(本名・楳図一雄=うめず・かずお)さんが10月28日、死去した。88歳。小学館が5日発表した。胃がんを患っていたといい、施設で療養中だった。
楳図さんは独自の作風を築き、漫画、芸術界の巨匠として数々の賞を受賞。さらにタレント・映画監督としても活躍し、明るいキャラクターで多くの人に愛された。
楳図さんは1936年9月生まれ、和歌山県出身。1955年に貸本漫画家として活動を始め、「週刊少年サンデー」などに作品を発表。55年に「森の兄妹」でプロ漫画家デビューを果たした。1972年から74年にかけて少年サンデーに連載された、小学校児童たちの生存競争を描いた「漂流教室」は一世を風靡(び)。87年には映画化もされ、同作はアメリカとの共作で「漂流教室 (DRIFTING SCHOOL)」として米国で公開もされるなど、世界的に知られる代表作となった。
「漂流教室」は時代を超えて愛され、2002年には常盤貴子、窪塚洋介を起用しフジテレビ系でテレビドラマ化。09年にはお笑いコンビ「品川庄司」庄司智春ら出演で舞台化され、18年には人気ゲーム「モンスターストライク」とのコラボも発表された。
巨匠・手塚治虫から「天才」と称賛されるほどの画力で数多くの作品を生み出したが、95年に「14歳」を描き終えると画業を休止。長くペンを握らず、1990年代後半からはタレントとしても活躍した。赤と白のボーダー柄の衣装がトレードマークで、飾らぬキャラクターで親しまれた。
2014年には自身が監督・脚本を手掛けた初の長編ホラー映画「マザー」を発表。楳図さん役を片岡愛之助が演じ、楳図さん自身も出演を果たした。
長く筆を置いていた楳図さんだが、22年には、1995年以来27年ぶりの新作「ZOKU−SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」を発表。大きな反響を呼んだ。
楳図さんはホラー、SF、ギャグと幅広い分野で漫画文化へ貢献。1974年に第20回小学館漫画賞を受賞し、18年に「わたしは真悟」でアングレーム国際漫画フェスティバルの遺産部門を受賞。19年に文化庁長官表彰、20年にミケルッツィ賞最優秀クラシック作品賞、23年には第27回手塚治虫文化賞の特別賞を受賞した。