足踏み、バッティング、クリンチからの頭部攻撃…。中国人ボクサーの変則ステップの影響か…終始反則スレスレの攻撃を連発して日本人選手を流血に追い込んだ中国人選手に「反省の色なし」「反則負けにしろ」など批判が殺到。一方、試合に勝利した日本人選手は試合後、額からの流血を拭う様子もなく「全ボクサーにリスペクトなので拍手でお願いします」と相手選手を気遣う男気発言。これには「かっこよすぎる」「人間出来すぎ」「応援する」など称賛の声が相次いだ。

【映像】批判が殺到した試合の様子

 10月31日、後楽園ホールで開催された「Lifetime Boxing Fights 24」。森武蔵(志成)とペン・ファン(中国)の試合は最終8ラウンド途中に、相次ぐファンのバッティングによる森の負傷を理由に試合がストップされ、途中までのスコア3−0で森が判定勝利を飾った。頭から突っ込むファンのファイトスタイル、さらに判定を聞いた直後、相手選手や陣営に握手や礼も無くリングを後にする振る舞いに対しても厳しい批判や疑問の声があがった。

 元OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級&WBOアジアパシフィックフェザー級王者の森は、体調不調からOPBF王座を返上後1年4カ月ぶりとなる試合。対するファンは日本での試合2戦目、8月の判定負けからの復帰戦となる。

 開始のゴングと同時に、ファンの左のオーバーハンドで森がグラつきヒヤリとする立ち上がり。ややブランクを感じさせた森だが、徐々に主導権を握りペースを上げていく。

 一方のファンについてABEMA実況・西達彦アナウンサーが「独特のステップワーク」との指摘。解説・木村吉光が「普通はしない入り方でやりづらい。コケるように来るので読み難い」とそのクセの強い動きを指摘。そんななか、森の足を踏んで放ったファンの左フックが再び森を捉える。森も距離感を掴みはじめしっかりパンチを当てて反撃するが、早くもファンからは「ずっと足を踏んでいる」「わざとだよなぁ…」と疑問の声があがる。ファンのトリッキーな攻撃には解説席からも「セオリーと違って嫌(な戦い方)」との声も。

 パンチを打ちながら前へ出るファン独特の「突っ込みスタイル」。木村は「この打ち方だとイチ(一発)しか打てない」と分析。さらに「やりづらいだろうなぁ…」とボクサー視点の本音を漏らした。

 しかし4ラウンド、森も相手の変則的な動きに対応してカウンターを当て始める。単発で飛び込むスタイルで生まれるガラ空きのボディにも強いパンチを数発。第5ラウンドにはファンの打ち終わりからのクリンチの離れ際に左を合わせるなど、厄介な相手への攻撃の糸口を掴み始めた。

 6ラウンド以降、森は距離を取りながらの戦い。頭ごと突っ込んでくるファンの攻撃に対しても、下がりながらボディショット。頭突きに合わせてカウンターのアッパーなどをことごとくヒットさせる。しかし、ファンのバッティングで森は口をカット。ファンはさらにクリンチから後頭部攻撃など、なりふり構わない戦い方を展開。ストレスがたまる展開に「バッティングがひどい」「必ず足踏むよな」「減点しないのか?」と憤りの声も上がりはじめる。

 7ラウンド、再三に渡るファンのバッティングに減点が言い渡されるが、それでも懲りずに頭から来るファンに「反省の色なし」「反則負けにしろ」と怒りの声多数。その後もファンのバッティングで森が額をカットすると解説の木村も「怪我をしそうなのでアウトボクシングしてほしい」と苦笑いを浮かべた。

 試合は8ラウンド開始早々、再びのファンがバッティング。ここで森にドクターチェックが入ると、選手のダメージと安全を考慮しレフェリーが試合をストップ。木村も「ここで止めて陣営も安心かと。これ以上、怪我して切って今後につながったら駄目だと…」と選手の立場を代弁した。

 試合は8ラウンド途中までのスコア3−0で森の勝利。額をカットし痛々しい姿の森だったがマイクを握ると「相手の選手、バッティングが多くて切っちゃいましたけど、向こうの選手も中国からアウェイに乗り込んで戦ってくださったので、全ボクサーにリスペクトなのでみんな拍手でお願いします」と額から流れる血を拭う様子もなく冷静なコメント。そんな森のコメントに「かっこよすぎる」「人間出来すぎ」「応援する」など称賛の声が相次いだが、判定を聞いたファンは相手選手、陣営への挨拶や握手もなくリングを後にするなど、後味の悪い試合となってしまった。