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衆議院選挙の各党の主張でも意見が分かれる選択的夫婦別姓制度。様々な意見がある中、夫婦別姓家庭で育った当事者はどう感じているのでしょうか?当事者として、そして法律婚するも、元の名字に戻すためにペーパー離婚と同じパートナーと再婚の経験がある方に取材しました。

■名字で家族のあり方が変わる?

日本は、民法で「夫婦は夫又は妻の氏を称する」と定められていて、「夫婦同姓」が義務づけられています。「姓を変えることはアイデンティティーの喪失」など選択的夫婦別姓制度を望む声がある一方で、「姓が異なると家族の絆が壊れてしまう」などの反対意見も。

両親が国際結婚していたため日本人である母親とは名字が違う夫婦別姓家庭で育ったスミス・ミッシェルさん(29)は当事者としてこう感じるといいます。

「(別姓であることは)本当に関係ないと思っていて、多分家族同士って下の名前で呼び合うことしかないと思うんですけど、その中で名字が話題になることは本当にないので、『別姓だからなに?』という感じで、本当に意識することってない。本当に困ったことはなくて、もうそれが当たり前で育った」

現在1歳の子どもがいるスミスさん。夫の目からみたスミスさんの実家の家族は。

「もう、本当に仲の良い家族です。名字がどうとかって話は1回も出たことがないんで。すごく自然なことなんだと思います」

■「名字も自分の名前の大切な一部」悩んで選んだ法律婚

スミスさんは結婚の際は法律婚を選びました。

「事実婚も検討したのですが、子どもが生まれたときに親権を片方が得られないのは嫌だねというのと、どちらも実家の近くに住んでいるわけではなかったので、何かがあって例えば手術に同意しないといけないときに、そこができないのは怖いと思い、法律婚にしました」

どちらの姓にするかについては…

「私は父の姓をついでいるので、余計に強く自分がアイデンティティー感じる部分なのかなと。名字も自分の名前の大事な一部なので、変えたくなかった」「当初から、結婚するとなったときには改姓したくないと夫に伝えていて、夫も『自分は改姓はしたくないけど、名前にそこまでこだわりはないから、自分(夫)の方が変えていいよ』と」

しかし、法律婚により選んだのは夫の姓でした。
「いざ、結婚するとなって両家の両親に(妻の姓にすること)を話したときに、夫の両親から『夫の姓にしておいたら』といわれて、当時、そこを深く議論するのも怖かったというか、そこで家族の仲がこじれたらと思ってすごい怖くなってしまってあまり深く突っ込むことができなかった」

「ただ、変えたこと自体がすごいつらくて、もう夫とも何度も結婚してからも話しあって。このままでは生きていけないといったら大げさですけど、やっていけないと思ったので」

当時について夫は。
「名字に妻ほど強い気持ちはなかったので、どっちが強いって考えたときに妻のほうが強い、それなら妻のほうにした方がいいだろうと」

一方で。
「夫である私の名字にした方がいいんじゃないと言われたときに、結婚前に名字の話を深く話して、結婚の勢いを壊したくない気持ちが私も少なからずあったんですね。なので、妻が諦める流れになったとき、私も正直安心したところがあります」

「そこから時間がたって妻と話し合いをする中で妻が本当につらそうなのを見て、そこでやっとこれは本当に解決しなきゃいけないし、当時もっと大事に捉えているべきだったと強く思って、それでこれは動くしかない、絶対そっちの方(妻の名字にすること)が正しい道だと思って親と話しました」

■家族で決めたペーパー離婚

「妻の悩みは本当に真剣なものでと親に説明したら、『あっ、そこまでだとは思ってなかった。なら絶対そうした方がいいよ』って」

家族で話し合い、名字を妻の姓に変えるため、一度ペーパー離婚。そして再婚することに。しかし、夫も望んで名字を変えたわけではありませんでした。名字が変わった状態で、手紙などが届くと違和感を感じるといいます。

今回の結婚を経て感じたことについて、夫は
「結果的にはですけど、結婚前にもっと話し合っておけばよかったというのはあります。ただそもそも、選択的夫婦別姓制度が認められていれば、議論にもなっていないはずなので。今思えば妻もつらい思いをしたし、私も特に望んだ議論ではなかった。本当に制度さえ整っていたら誰もこんなつらい思いせずに済んだのにと思うと、なんで認められていないんだろうっていう思いがより強くなっていきましたね」

■「名前と結婚をてんびんにかけないといけないのはおかしい」

1996年の法務省での法制審議会の答申では、すでに選択的夫婦別姓の導入が提言されていました。それからおよそ30年。現在も選択的夫婦別姓制度の議論は続いています。

スミス・ミッシェルさん
「進まなさすぎだと思います。高校生くらいのとき、両親は夫婦別姓なのに日本人同士だと認められないとわかったときには、自分が結婚するときには導入されているだろうと思っていた。でも実際結婚した時にまだ導入されてないのは、すごいやるせなさを感じました」

「せっかく結婚の制度を使いたい人がいるのに、門戸を狭めてどうするんだって。本当に選択肢を一つ増やすだけ。やらない理由がないのになって思います」「名前って本当に自分の一部。そもそも当たり前にあるべき権利だと思うんですよね。それを結婚とてんびんにかけて選ばないといけないような事態が存在することがよくない」

夫は、こう話します。
「この話で重要なのは選択的であるということだと思う。家族でみんな名字が同じというのを望む人はそれを選べばいいし、別にしたいという人は、別にすればいいしっていう選択を生む話なので、必ずしもみんながみんな、別にしなきゃいけないということじゃないことを今一度、考えるべきなんだと思います」

選択的夫婦別姓制度の導入には根強い反対の意見もあり、今回の衆議院選挙でも各党の主張は異なっていて、今後の議論が注目されます。