「パニック症」を周囲にどう伝える? 伝えられた方はどう接するのが正解?

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

前編<「パニック発作」を起こさないために、ふだんの生活で気を付けること。不安を軽くするコツ

自分の病気のことを周囲に話せません

周囲に自分の病気のことを伝えること、つまりカミングアウトすることにはためらいを覚える人も多いようです。日常生活には支障がない状態を保っている場合、まわりの人に自分がパニック症であることを告げる機会は訪れにくいかもしれません。

ただ、カミングアウトしていない場合、理由を告げないまま苦手な状況を回避し続けた結果、「あの人は誘っても来ない」「つきあいが悪い」などと思われるようになるおそれもあります。発作そのものより、「知られたくない」という思いが人とのかかわりを減らし、孤独感を生み出しやすいのです。

孤独感は、不安やうつ症状を強めてしまいます。「どうせわかってもらえない」などと決め込まず、話をしやすい人には「じつは私、こういう状況だとパニックになりやすくて……」などと、自分の病気のことを話してみるとよいでしょう。近年、パニック症という病名は広く知られるようになりました。理解してくれる人はきっといます。話すことで楽になる場合もあります。気持ちが楽になるだけでなく、「人に説明する」ということが、自分の状態をふり返るよい機会にもなるでしょう。

・家族・パートナーと話す自分の思いを率直に伝えましょう。本書を読んでもらえば、理解を得やすくなります。

・友だちに話す日頃から「聞き上手」の人には、思い切ってカミングアウトしてみましょう。エクスポージャー療法にも協力してもらいやすくなります。意図的に家族以外にも、人づきあいの輪を広げていきましょう。

・関係者に話す仕事の関係者には、事情を伝えておけば、仕事量の調整などをお願いしやすくなります。

また、飛行機を利用する際は、予約時にパニック症であることを伝えておくと、座席の配慮などをしてもらえることがあります。

・患者どうしで話すパニック症を患う人や、不安に悩む人が集う自助グループなどもあります。インターネットで検索し、参加してみるのもよいでしょう。

周囲の人は、パニック症の人にどう接していけばよいでしょう?

検査をしても異常はないのに発作をくり返すこと、「発作が起こるかもしれない」とひどく心配し、制限だらけの生活を送っていること──それらはパニック症の特徴そのものですが、はたで見守る人にとっては理解しにくく、心配とともに歯がゆさもあるかもしれません。しかし、それをあらわにするだけでは、本人の不安・心配も募ります。逆に言動に気をつかいすぎると、かえって本人は心苦しく感じることもあります。力を抜いて、本人といっしょに病気について学んでいきましょう。

・本人の話を否定せずに聞くまずは本人の話をゆっくり聞きましょう。知ることは大切ですが、正しい知識を一方的にまくしたてるだけでは、本人の不安な気持ちは行き場がなくなってしまうこともあります。「いっしょに学ぶ」ことが大切です。

・治療に否定的なことを言わない「薬に頼っていると依存症になる」「長く飲まないほうがいい」などと、不正確な情報で、治療を否定しないでください。認知行動療法などの取り組みについても、「そんなことで治るの?」などと、意欲をそぐような発言をするのは避けてください。

・ほどほどにつきあう医療機関への受診の際、本人が嫌がらなければつきそい、いっしょに主治医の話を聞くようにすると、どんな点に気をつけてサポートしていけばよいかわかりやすくなるでしょう。また、エクスポージャー療法を進めるうえで協力できる場面もあるでしょう。ただし、世話を焼きすぎると、本人の治療意欲がそがれることもあります。ほどほどの距離感も大切です。

・大きな決断は保留にするよう促す退職や退学、パートナーとの離別など、重要な決断をしようとするのは「うつ」の現れかもしれません。「今、決めなくていいよ」と、引き留めてください。うつ状態のときは判断力が低下します。状態が改善したあと、自分の決定を後悔することが多いからです。

身近な人が病気への理解を深め、落ち着いて対応していくことは、患者さんの大きな支えになります。安心感を与える存在になってください。

「パニック発作」を起こさないために、ふだんの生活で気を付けること。不安を軽くするコツ