「パニック症」を起こす不快な感覚を、どう分散すべき? 「注意のコントロール術」は練習で鍛えられる

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パニック症は、パニック発作をくり返す病気です。パニック発作は、身体的な原因はないにもかかわらず、さまざまな不快な症状が突然生じるもの。パニック症の本質は、「このまま死ぬかもしれない」という強い恐怖感・不安感にあります。恐怖や不安は、危険を避けて生き延びていくために必要なものですが、行きすぎれば生活に支障をきたします。発作を避けようとしてどんどん「できないこと」が増えていけば、自己否定感が強まり、うつ状態に陥ることもあります。そんな「パニック症」の最新情報や、正しい理解のための本『名医が答える! パニック症 治療大全』より一部抜粋してお届けします。

前編<「パニック発作」のきっかけ、不快な感覚を気にしないコツは?

どうすれば、注意を分散できるようになりますか?

体の内外の情報すべてに気づけている状態、つまりマインドフルネスの境地を目指すことで、不快な感覚・感情・思考への一点集中は避けられます。しかし、あらゆる感覚を一度に感じ取るというのは、なかなか難しい話です。より実践的な取り組みとして、注意を向ける先を切り替え、シフトさせることで注意の分散をはかる練習をしていきましょう。

注意を分散させる「注意のコントロール術」は、習得のために練習が必要なスキル(技術)です。ふだんから、発作がないときに練習しておきましょう。

マインドフルネスや注意のコントロール術は、認知行動療法としておこなわれるエクスポージャー療法に取り組む際に、補完的に用いることもできます。

エクスポージャー療法は不快な感覚・感情にあえて向き合おうとする方法で、ときに苦しさを覚えることもあります。そんなとき、注意を分散させる方法が身についていると乗り切りやすくなるでしょう。

発作時の注意の集中を避けるために、日々の練習を続けましょう。

・体内の感覚に集中する(約2分間)目を閉じて、心臓の鼓動や呼吸による変化、手足の重さなど、体内の感覚に注意を向けましょう。さまざまな感覚のなかでも、とくに視覚は優位に働きます。目を閉じると視覚以外の感覚にも注意が向きやすくなるので、体内の感覚を観察しやすくなります。

・外部の環境に目を向ける(約2分間)目を開けて、見えるもの、聞こえる音など、体の外側にあるものに注意を集中させましょう。視界に入ったものをただ眺めるだけでなく、さまざまな形や色、色の濃淡、光と影、光の反射など、細かな質感までじっくり観察します。同時に聴覚も働かせます。時計の音、電化製品が発する雑音、窓の外から聞こえる車の音、話し声など、ふだんは聞き逃している音にまで注意を向けていきましょう。

・思考も観察の対象とする「『いやだ』と感じている自分」「いやなことを考えている自分」も観察対象のひとつです。思い浮かぶ考えは、「『うまくいかない』と私は考えている」「『うるさい』と私は思っている」といったように、「そう考えている自分」に気づき、観察するにとどめます。そして再びその感覚に注意を向け直すようにします。

練習は生活のあらゆる場面で

体内の感覚へ、次に外部の環境へ、そしてまた体内の感覚へと注意を向ける先を切り替える練習を1日10分続けていきましょう。慣れてくれば、目を開いたままでも体内の感覚に気づけるようになります。練習するための時間を特別に設けなくても、生活のあらゆる場面で実践できます。

・移動中に練習する歩きながら、あるいは乗りものに乗りながら、見えるもの、聞こえる音を観察しましょう。

・食べながら練習する食べたり飲んだりしたときの味や後味の違いなど、味覚を通じて体外からの刺激をキャッチします。

・音楽を聴きながら練習するメロディーラインだけでなく、べースやドラムの音などを聴き分けてみましょう。

ふだんから練習しておくことで、発作につながるおそれのある身体感覚が生じたとき、そこから注意の切り替えをできるようになっていきます。

「パニック発作」のきっかけ、不快な感覚を気にしないコツは?