人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている54歳のRitaさん。SNSでもスペインと日本の違いについて発信しており、人気です。そんなRitaさんがスペインでも毎日のように立ち寄るスーパーマーケット。「今では特に疑問に感じず利用できるようになりましたが、当初は戸惑いだらけでレジでの支払いすら緊張していました」と語ります。そんな日本との違いを7つ教えてもらいました。

1:牛乳類は常温で販売

乳製品は冷蔵庫に入っているものが日本では当たり前でしたが、スペインの牛乳は常温販売で一般の棚に並んでいます。いずれも密閉高温殺菌で衛生面には問題なく、賞味期限は1年程。日本でも常温で置かれているパックジュースのようなイメージです。

牛乳も豆乳も冷蔵品を探す方が難しく、最初は恐る恐る飲んでいましたが、冷蔵庫で冷やしてから飲めばまったく違いはありませんでした。なにより便利なのは、開封前なら冷蔵庫に入れる必要がないこと。多めに買っても冷蔵庫を占領せず、棚に入れて管理できます。

なおヨーグルト・バター・チーズはしっかりと冷蔵コーナーに並び、日本の陳列と大きな違いはありません。

2:ダースのパッケージ商品は自分で解体して好きな分を購入

ペットボトルや缶・ビン製品は搬入されたままの状態で積み上がり、6本セット、12缶セットなど、ダースで包装されたままです。

この商品はセットでしか買えないのか? 勝手に分解していいのか? 最初はさっぱり分からず、他のお客さんのやり方をこっそり見たところ…みんな自分で思いきり破り、欲しい本数だけレジへ持っていけばいいことがわかりました。

家族の人数が多かったり大勢で利用する時にはダースごとに購入ができ、ボトルを6本セットで買う人も頻繁に見かけます。

3:スペインの伝統スープが多く売られている

野菜たっぷりの伝統冷製スープ「ガスパッチョ」。すぐ飲める状態でたくさん売られています。ソフトドリンクのようにこのまま飲むこともあれば、お皿へ盛り食事メニューにも利用できるもの。スペインでは体調管理のための栄養源とも言われ、このコーナーも夜は品数がずいぶん少なくなります。

陳列はジュース売り場ではなく野菜売り場。冷蔵品として幅広いスペースに並び、スペイン人にとって必需品であることがよくわかります。

4:割引商品が複雑で、ハードルが高い

たびたび見かける割引品やタイムセール。お得感があり興味深いのですが…私には表示がとてもわかりにくいんです。単純に○%引きだけでなく、3個買ったら2個の値段になるもの、2個買ったら2個目だけ50%引きになるものなど。また表示されている値札は安くなった1個分だけのことが多く、レジでは2倍3倍の金額を言われて驚くことがあります。

しっかり頭を使わないとうっかり割高になってしまう値引き商品。疲れていると計算すら面倒で、購入を諦めてしまうこともあります。

5:レジ係から声がかかったらレジへ進む

会計はあいているレジで行うことになりますが、お決まりのかけ声が「Siguiente(シギエンテ)!」。これは「次!」という意味で、レジ係からこのかけ声があったらそのレジへ進むことができます。たとえレジがあいてもかけ声の前に行くと、「まだまだ戻って!」と、待機の線まで戻らされることも。

レジ係は急に電話したり集計したり仲間と会話することがあり、タイミングはレジ係のペースがいちばん大切なんだそうです。

6:レジでは、商品が少ない人に順番を譲る場面も

レジに並んでいると目の前の人から「よかったら先にどうぞ!」と声をかけてもらうことが頻繁にあります。後ろの人の品数が自分よりずいぶん少ないと先に回してくれる配慮で、私も心がけるようになりました。

「そう? ありがとう!」「急いでないから後でいいわよ!」と入れ替わりは臨機応変ですが、気持ちのいい譲り合いがあり、私が好きな日常のひとコマです。

7:袋づめの場所がない

袋づめは自分で行いますが、じつはそのための場所はありません。商品がスキャンされるとレジの向こう側へ積まれ、それを自分でつめるのですが、その最中に合計金額を言われ、支払いをしなけければなりません。もたもたしていると次の人の商品が迫ってきて、なかなか焦る作業です。

こんなにスピード感が求められることを皆はどうやってこなしているのか? 周りをよく観察してみたのですが…品物がどんなに積まれても、のんびりとレジの人と世間話をし、後ろの人が笑いながら前の人の手伝いをし、だれひとり焦っている人がいませんでした。周りを気にせず自分のペースで大丈夫なんだそうです。

各スーパーマーケットは、日曜日や祝日は閉まっている店舗が多く(観光客の多い中心地は例外)、また閉店時間の30分前には片づけが始まり、10分前にはお店の中にいるのも申し訳ない空気になってきます。従業員がいっせいに帰りたいので閉店直前のレジは異常な速さで進み、まるでゲームのように楽しげに片づけている店舗もあります。

でもたとえギリギリに滑り込んだとしても、レジでは「やあ! 元気? 今日は会えないかと思ったよ!」なんてリップサービスも忘れません。

節度をわきまえながらも不思議なゆとりを感じるスペインのスーパーマーケット。私もいつの間にか、レジでの袋づめに焦ることはなくなりました。