自身のYouTubeチャンネルの登録者数が50万人を突破した落合博満氏

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立浪監督「退任表明」後の怪情報

 プロ野球中日で立浪和義監督(55)の後任を巡る監督人事は一見、波風立たずに決着しかけているように映る。10月3日、井上一樹2軍監督(53)は球団から来季監督への就任を要請されたことを明らかにした。井上氏は返答を保留したものの立浪監督が指揮を執る現チームの全日程が終わっていないことに配慮したもので、受諾は確実の情勢になっている。立浪監督が今季限りで退任すると表明したのは9月19日だった。スポーツメディアによると、井上氏自身が明言した球団からの要請が10月2日だとすれば、約2週間のブランクがあったことになる。

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 これまで新監督候補を巡っては、外部招聘で有力OBの山崎武司氏(55)や山本昌氏(59)、内部昇格では和田一浩打撃コーチ(52)らの名も挙がっていた中で、終わっていれば最有力とされていた井上氏という最も無難な結論に落ち着きそうだ。しかしこの間、現場の選手、スタッフらにはどの紙面にも候補に挙がらなかった、ある大物を巡る情報が駆け巡っていた。

自身のYouTubeチャンネルの登録者数が50万人を突破した落合博満氏

 落合博満元監督(70)のことだ。

 落合氏の中日監督時代を知らない、さる中堅選手はこう証言する。

「球団首脳が落合さんに頭を下げて(来季監督就任を)お願いしたという話がチーム内に出回っていました。みんな信じられないようでしたが、本当にそんなことがあったんでしょうか。ただ、前回の与田(剛)監督の時も、全く予想していなかったところに候補として出てきたので、今回もあるのかなと……。(低迷を極める)今のチーム状況を考えると、球団が本当に立て直す気があるなら落合さんというのは説得力がありました」

 落合氏は2004年、現役時代にプレーした中日の監督に就任した。監督経験ゼロ、補強ゼロにもかかわらず「現有戦力の10%のレベルアップでの優勝」との公約を、1年目で鮮やかに果たしてみせた。07年には球団を53年ぶりの日本一に導くなど、在任期間中は常にAクラス。球団史に燦然と輝く黄金時代を築いた、紛れもない名将である。

落合氏でも観客動員に影響なし

 2011年もリーグ優勝を果たしての退任だった。

「当時、事実上の解任に追い込まれた理由は、勝っても観客動員につながらなかったことでした。しかし、今はチームが低迷していてもファンは集まってきています。その点で球団が落合さんの要請に至ったとしても、何ら支障はなかったはずです」(古参のチームスタッフ)

 ほとんどの球団が今季も観客動員は好調だ。中日は3年連続最下位の危機にあっても例外ではない。新型コロナウイルス禍が明け、モノ消費よりコト消費が優位となった時勢や、SNSで選手や野球の存在が身近になったこと、そして大谷翔平(ドジャース)による野球熱の高まりなどが要因に挙げられており、活況は名古屋でもしばらく続きそうだ。かねて中日では「(「ミスタードラゴンズ」だった)立浪監督ではなく、誰が監督になっても集客には苦労しないだろう」とみる向きは少なくないのだ。

 他球団の監督人事に目を移すと、阪神の岡田彰布監督は昨季、セオリー重視の「普通の野球」で就任1年目にして日本一に。今季も終盤まで優勝を争っての僅差の2位となった。

 岡田監督招聘時、球団は当時の平田勝男2軍監督(現ヘッドコーチ)の昇格案を固めていた。しかし、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が岡田監督を推したことで一本化された。

1軍と2軍は違う

「はっきりとモノを言う岡田監督が『選手ファースト』に慣れ切った選手たちが受け入れられるかどうかは当初、不安視されていました。しかし、結果を見れば杞憂でした。岡田監督の成功は選手に気を使ってばかりでは好成績が望めないということを示し、角会長の選択は英断となりました。派手さはなくても当たり前のことを積み重ねて優勝する。これは落合さんのオーソドックスな野球も同じです。中日のオーナーが直接要請したかどうかはともかく、球界に原点回帰の流れが生まれてきた中で、トップに落合さんを呼び戻したいという思いがあったとしても不思議ではありません」(NPB球団元監督)

 井上氏は選手の意欲を高める「モチベーター」として優れていると評判だ。今季はウエスタンリーグでチームをソフトバンクと優勝争いしての2位浮上に導いた。今の時代の選手にマッチした指揮官として期待が持てそうなのだが……。

「育成メインの2軍で結果を出したからといって、勝負が全ての1軍でも同じように結果が出せるとは限りません。立浪監督は(選手時代の)実績があるからこそ、選手たちは指導に従おうとしていました。実績という意味で井上氏は立浪監督に遠く及びません。力がある選手ばかりならモチベーションを上げるだけでチームががらっと変わることはありますが……。投打に一本立ちできていない選手が多い中日で、他に(指導や采配の)引き出しを持っていなければ、壁にぶち当たることでしょう」(元監督)

中田が不協和音の火種?

 さらに、井上氏は難題を抱えることになる。中田翔内野手(35)の処遇だ。

 中田は昨オフ、立浪監督のたっての希望で、巨人との3年契約を途中破棄し、中日に移籍した。今季は精彩を欠き、来季は契約最終年で、選手生活の崖っぷちに立たされている。

「井上監督は重荷を背負わされることになりますね。(中田の状態が)いい時はいいでしょうが、年齢的に上がり目はないだけに、今季のような不振になり、その際の起用法を誤れば、影響力があるベテランなので不協和音を招きかねません」(同)

 日本代表の井端弘和監督が26年春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で指揮を執った後は中日監督に就任することが有力視されている。井上氏の契約は、まずは同年までの2年か。立浪監督よりも短い“つなぎ”の任期中に結果を出すことは容易ではない。前途は多難のようだ。

デイリー新潮編集部