パナソニック ホールディングスは、大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」の出展内容について説明するとともに、2025年8月7日に、同社パビリオンデーを開催することを新たに発表した。

パビリオンデーは、公式行事や主催者行事とは異なり、参加催事に位置づけられるもので、民間パビリオン出展社が、会期中の1日だけ選択して実施することができる。

パナソニック ホールディングスでは、パビリオンデーとして、大阪・関西万博会場のEXPOホール「シャインハット」において、「Panasonic Pavilion “Unlock Festival”」を開催。「Unlock your nature」をテーマに、子供たちによるストリートダンスや、パナソニック合唱団と学生による合唱、「ノモのコ」プロジェクトなどが行われる。



パナソニックグループパビリオン「ノモの国」

パナソニックホールディングス 関西渉外・万博推進担当参与の小川理子氏は、「パナソニックグループのパビリオンデーが行われる8月7日は、『パナ(87)』の日である。特別な1日として、パビリオンの活動に弾みをつける。α世代の子供たちが、常識や思い込みから解き放たれ、自身に秘められた力を解き放つUnlock体験を提供し、創造力を磨き上げる催しにしたい」と語った。

パナソニックホールディングス 関西渉外・万博推進担当参与の小川理子氏

パナソニックグループのパビリオンデーの概要

子どもたちのストリートダンスでは、全国ダンスコンテストである小学生限定ストリートダンスコンテスト「LiL' WiLD」と、中学生・高校生限定ストリートダンスコンテスト「DANCE ATTACK!!」の上位3チームがダンスを発表する。これらのコンテストの決勝大会は2025年3月に行われる予定だ。

「ノモの国」のテーマソングの合唱では、パナソニックグループの社員を中心に約90人で構成するパナソニック合唱団が、パビリオンである「ノモの国」のテーマソングを学生とともに披露する。パナソニック合唱団は、全日本合唱コンクールで、16年連続を含む22回の金賞を受賞した実績を持つ。「ノモの国」のテーマソングの作曲は服部隆之氏、作詞は森雪之丞氏が担当しており、現在制作中だという。このほかに複数の合唱曲を披露する予定だ。

「ノモのコ」プロジェクトは、 子どもたちや学生と一緒に「ノモの国」をつくる取り組みだ。会期前から、子どもたちや学生たちと、ワークショップの開催や対話を繰り返しており、いくつものアイデアを採用し、子どもたちと一緒にパビリオンを作り上げているという。

パナソニックホールディングスの小川氏は、「子供たちが自らの可能性に気づき、未来を切り開く一歩を踏み出していくきっかけにしたい」としている。

具体的には、子どもたちの自由なアイデアや発想をヒントに「ノモの国」に実装されるファサード照明演出や展示体験、工場や「ノモの国」を作るときに出てくる端材を活用した展示物およびノベルティの制作や活用に加えて、パビリオンデーを盛り上げるダンスや合唱などの演出に取り組んでいる。

「来場者が体験するコンテンツのプロトタイピングに子供たちに参画してもらった。伝え方や動画表現において、率直に意見をもらった。大人が考えなかった発想に驚かされることも多く、それをしっかりとフィードバックし、コンテンツに実装している。また、米子工業高等専門学校により、パナソニックが開発中のIoT照明のILLUMMEにプログラミングを行い、光や色、音を組み合わせて自由に演出できるようにした。2024年11月からは子供たちの参加者を募集して、演出を追加する形になる。子供たちのアイデアがたっぷりと盛り込まれることになる」とした。

また、端材を活用し、アップサイクルを考える「ハザイソン」では、照明演出に使用するファサード膜の製作過程で出てくる端材を使用したアイデアを募集。ノベルティやスタッフアクセサリなどに活用するという。「丸いフレームに生地を取り付けるため、端の部分にあまりがでる。それを活用するハザイソンを実施した。6月に実施したコンテストには約130の作品の応募があった。そこで選ばれた作品をノベルティなどに活用することを検討している。スカーフやターバン、バックなどにも利用できる」という。







「ノモのコ」プロジェクトの概要

ファサード膜の製作過程で出てくる端材を使用したアイデア。縫い目のところに花びらのようなデザインを施しているのも工夫のひとつだ

さらに、パビリオンデーのスペシャルゲストとして、ブレイクダンサーのShigekixさんや姉のAYANEさん、久留米市出身のダンサー集団である九州男児新鮮組、12歳でDJとして世界頂点に立ったDJ RENAさんが登場して、ストリートダンスを盛り上げる。

「スペシャルゲストのパフォーマンスを見て、子どもたち自身が自分の可能性を“Unlock”し、ドキドキ、ワクワクする楽しさや、学び、気づきを得る機会を提供することになる」という。

説明会にビデオメッセージを寄せた大阪出身でもあるShigekixさんは、「ブレイキンに出会ったのは7歳のときであり、自由度が高く、世界に向けて自分を表現する楽しさに衝撃を受けた。だが、挑戦が増えれば、挫折も増える。悔しい思いもした。それがモチベーションに変わり、新たな目標が生まれる。熱中できるものができて人生が変わった。この経験を一人でも多くの次世代の子供たちに伝えたい。そのエネルギーが伝わった子供たちが、これからの日本を明るく、元気にしてくれる。いまは、来年の万博の開催が近づいてきたというワクワク感がいっぱいである」と述べた。

ビデオメッセージを送ったShigekixさん

パナソニックホールディングスの小川氏は、「今後も、子供や学生、社員が一緒になって、ノモの国を共創する様々なプロジェクトの活動を発表していく。子供たちが自らの可能性を引き出して、未来を切り開く一歩を踏み出すことを後押ししていく。また、閉幕後も子供たちと長期にわたってつながる活動を強化していく。子供たち一人ひとりが、自分が輝く未来を想像し、自分の可能性を信じて、一歩を踏み出すことができる心を育みたい」と述べた。

さらに、ノモの国LINE公式アカウントを新たに開設したことを発表。ノモの国に関するイベント情報の発信、共創活動の報告、子供たちに向けたオリジナルコンテンツの配信も行う。

一方、パナソニックグループパビリオン「ノモの国」の展示内容についても公開した。

パナソニックグループでは、「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい。」をコンセプトに出展。922平方メートルのUnlock体験エリアと、165平方メートルの大地エリアで構成している。「ノモの国」全体の延床面積は1732平方メートル、敷地面積は3508.平方メートルとなっている。

「ノモの国」は4つのZONEと体験エリアで構成される

「ノモの国」の名称は、「モノの捉え方はココロの持ちようで大きく変わる」ことであり、「モノとココロは写し鏡のような存在である」という思いを込めて名付けたという。

Unlock体験エリアは、α世代の子どもたちが思い描く未来社会を実現するために、始まりとなる原体験を「ノモの国」で提供し、次代を担う子どもたちが、常識や思い込みから解き放たれ、自身も気づいていない秘められた力や可能性を「Unlock」する体験型パビリオンと位置づけており、「ひとの理解」研究と、「空間演出」技術を用いて、4つのZONEでの体験が可能だ。

ZONE1の「カガミイケの奥深く」では、「ノモの国」に迷い込んだ子どもたちが、23.4チャンネルの立体音響や映像、ハプティクス技術によって、クロスモーダル(感覚複合的)に感覚が研ぎ澄まされ、風や水、光、生命といった普段は意識しない当たり前のことを全身でとらえることができるようにするという。

ZONE2の「ノモの森」では、未知の世界を探索する体験ができる。

「ノモの森」で結晶を見つけた子供たちは、生命やエネルギーが巡る森のなかを自分の感性の赴くままに探索する。結晶をかざすと、光や音や風を発し、子供たちの感性に反応するという。

ZONE3は、「古木の谷」としており、ZONE2での行動解析データを分析し、一人ひとりの感性とその可能性をストーリーとして映し出す。結晶から蝶が解き放たれ、「ミストの滝」の向こうへと子どもたちを導く演出が行われる。

ZONE4は、「大空へ」と題したエリアで、「ミストの滝」を抜けると、ZONE3で一人ひとりが解き放った蝶が、子どもたちが起こす風に乗って、音を奏でながら、周囲の蝶たちと響き合い、大きなエネルギーとなって大空へと羽ばたいていく様子が見られるという。

バピリオンの建屋は、2024年8月に完成しており、2025年2月の竣工に向けて、ARを用いて空間演出や内装のイメージの検証をしながら、展示および内装工事を進める。

なお、パナソニックグループでは、「ノモの国」での体験をより楽しんでもらうことや、来場できない人にも「ノモの国」の世界観を理解してもらうことを目的に、アニメーションの制作を進めており、来春には、「ノモの国ポータルWEBサイト」などで公開する予定だという。

「ノモの国」のUnlock体験エリアを支えるのが、展示エリアの「大地」である。

研究開発中の技術で具現化した人と自然の営みが循環するアイデアに触れて、より良い未来を生み出したいという思いを後押しすることになる。

大地では、人の営みと自然の営みが、それぞれに360°ずつ循環し、それがお互いに作用することで、720°のつながりが発生。人と自然の組み合わせを通じて、より良い未来を考える展示空間を目指しているという。

具体的には、シアノバクテリア(光合成微生物)、バイオセンサリードーム、ペロブスカイト太陽電池、生分解性セルロースファイバー、バイオライトの5つの自然由来の技術を展示する。

展示エリアである「大地」では5つの技術を体験できる

パナソニックホールディングス 万博推進プロジェクト テクニカルディレクターの原吉輝氏は、「自然の力を活用しながら、自然との新たな関係性を築くことができる技術を軸に選定した。数10種類の先進技術のなかから、5つを選んだ。子どもたちが、実際に手に触れたり、匂いを嗅いだりする直感的な体験を通じて、人と自然がお互いの可能性を広げる未来を体感する機会を提供する」と語る。

パナソニックホールディングス 万博推進プロジェクト テクニカルディレクターの原吉輝氏

シアノバクテリアは、光合成微生物の一種であるシアノバクテリアの力を活用し、CO2の有効利用と食糧生産力の向上を同時に実現するアイデアを紹介する。

「解き放て。光合成微生物のチカラによる食の未来」をテーマに、野菜や果物が生き生きと成長する姿を観察できる。野菜の成長の違いを体感するとともに、CO2活用による環境負荷の低減と持続可能な食糧生産の両立を実感できる展示内容としている。

ペロブスカイト太陽電池は、「解き放て。発電するガラス」によるエネルギーの未来」をテーマに展示。インクジェット技術やレーザー技術を活用して開発しているパナソニックグループの「発電するガラス」を通じて、街の景観や、暮らしに調和した太陽電池の使い方を提案する。壁や屋根、バルコニーなどに採用するだけでなく、地表の植物や微生物にも木漏れ日を届けるアイデアを紹介するという。

植物由来成形材料である生分解性セルロースファイバーは、「解き放て。自然に戻るモノづくりの未来」とし、同社が開発した「kinari」を活用して、高い強度とデザイン性を生かした生活必需品の可能性を提案。石油由来プラスチックの使用量を減らすためのアイデアも紹介する。これまでの技術を進化させた植物繊維(セルロース)が100%近い材料も展示するという。会場では、子どもたちとのワークショップからつくられた様々なハンズオン用小物や、3Dプリンターによる大型オブジェの展示を行う。

バイオセンサリードームは、「解き放て。ひとと自然の営みが循環する未来」とし、バイオフィリックデザインの考え方を取り入れたドーム空間を用意。外界からのノイズを軽減し、様々な感覚刺激によって、自然環境に包まれる心地よさを感じることができるという。きのこの菌とおがくずを混ぜ合わせた菌糸パネルを使用し、将来の建築材料を目指すという。リラックスと適度な集中が調和した状態へと導き、来場者に自己対話や自己解放を促すことになる。

バイオライト(発光微生物)は、「解き放て。発光微生物のチカラによるあかりの未来」をテーマに展示。発光微生物を培養している展示水槽に酸素を送り込むことで、微生物が発光する様子を観察できる。発光微生物を活用して、生き物ならではのゆらぎや生命のつながりを実感することができるほか、未来の日常生活を彩るあかりへの応用などについても模索するという。今回の取材では、研究所で準備を進めている様子を公開した。

研究室に設置されている発光微生物の様子

電気を消して空気を流し込むとバクテリアがエメラルドグリーンに発光する

左がなにもしない状況。右が瓶を振って空気を入れた状態。発光しているのがわかる



空気を流し込んだ様子

パナソニックホールディングス 関西渉外・万博推進担当参与の小川理子氏は、「パナソニックグループパビリオンである『ノモの国』の準備は着実に進んでいる。社会環境や世界情勢の変化とともに、万博の役割が変化し、社会課題に対して、共創し、解決していく取り組みを、世界に発信していくことが求められている。企画はゼロからのスタートであり、最初にコンセプトを固めることがとても難しかった。だが、これがかたちにできてきたことには手触り感がある。開発まで200日を切っているが、まだまだアイデアを追加していく。もっといいものができる」と自信をみせた。

パナソニックホールディングス 関西渉外・万博推進担当参与の小川理子氏

パナソニックグループパビリオン「ノモの国」の現在の建設の様子





建設は順調に進んでいる

■公式サイト

・ノモの国ポータルサイト

https://the-land-of-nomo.panasonic/

・パナソニックグループ公式 2025大阪・関西万博サイト

https://holdings.panasonic/jp/corporate/expo2025