わずか1マイクロメートルという薄さかつ、熱暴走を検知すると電流の流れを効果的に抑制できるリチウムイオン電池用新素材をLG化学が開発しました。

Thermal runaway prevention through scalable fabrication of safety reinforced layer in practical Li-ion batteries | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-024-52766-9



100x thinner-than-hair material cuts EV battery explosion risk by 50%

https://interestingengineering.com/energy/lg-ev-battery-new-srl-technology

LG化学が開発した新素材「Safety Reinforced Layer」(SRL)は、人間の髪の毛のわずか100分の1に相当する約1マイクロメートルという薄さで、リチウムイオン電池のカソードと集電体の間に配置されます。

SRLはリチウムイオン電池内でヒューズの役割を果たします。通常の動作温度では電気が自由に流れることができるものの、バッテリーの温度が安全な範囲を超えて上昇した場合、SRLが反応。LG化学の研究チームは「バッテリーの温度が90℃から130度の正常範囲を超えて上昇すると、SRLは熱に反応して分子構造を変化させ、電流の流れを効果的に抑制します」と説明しました。これにより、リチウムイオン電池の火災や爆発につながる可能性のある危険な熱暴走を抑えることが可能です。



さらに、SRLはどんな温度変化にも迅速に対応することが可能で、研究チームは「温度が1℃上昇するごとに電気抵抗が5000Ω増加します。この材料の最大抵抗は、常温の1000倍以上です」と語りました。また、SRLは温度が下がると抵抗値を元に戻し、バッテリーも通常どおり機能することになるそうです。

SRLの有効性を実証するために、LGはコバルト酸リチウム電池に対して釘(くぎ)を打ち込む試験を実施。これまでの調査で、標準的なバッテリーは釘を打ち込むと約16%の割合で発火することが分かっています。一方でSRLを搭載したコバルト酸リチウム電池は釘を打ち込んでも発火することはありませんでした。



続いて研究チームは電気自動車用のニッケルコバルトマンガンバッテリーに約10kgの重りを落とす実験を実施しました。標準的なバッテリーに重りを落とすと、全てのバッテリーが発火しましたが、SRLを搭載したバッテリーで発火したのはわずか30%でした。また、発火した30%のバッテリーにおいても、延焼が短時間で沈静化したことが報告されています。



LG化学によると、SRLは既存のリチウムイオン電池の大量生産プロセスに容易に統合可能で、研究チームはすでにSRLの大量生産の実証実験を行っているとのこと。LG化学のLee Jong-Ku最高技術責任者(CTO)は「SRLは短期間で大量生産に適用できるような実験結果を残しました。私たちは、顧客が自信を持って電気自動車を使えるように安全技術を強化し、バッテリー市場での競争力強化に貢献する予定です」と語りました。