仕事のこと、家族のこと…と、目の前のことに精いっぱいだった30代、40代を経て、人生の折り返し地点に差しかかり、この先のことを考えるとふと不安を覚えるということはないでしょうか。とくに、老後の大きな不安のひとつが「お金」の問題です。お金の不安に向き合い、自分なりの安心を見つけたという、マンガ家、イラストレーターのなとみみわさんにお話を伺いました。

50歳を目前に離婚と大病。夢みたひとり暮らしの結果は…

なとみみわさんは、義母の介護を経て、49歳で夫と離婚。愛犬とともに家を出て都内の賃貸マンションで暮らし始めましたが、なとみさんは、その後、激しい「老後の不安」に強く苦しめられたといいます。

【写真】地元で始めたキッチンカー

「離婚してひとりになってから、今後の自分の人生について現実的に考えるようになりました。それまでは、根拠のない自信があって『ひとりになったら、自由で、なんでもできる〜!』って思っていたんです。でも実際にひとりになったら寂しくて寂しくて(笑)。

同じ時期に初期のがんを患い、『いつまでも元気でいられる保障はない』とも気づきました。おひとりさまで、自由に生きていくということは、ずっとこの先も元気で働き続けることが前提。『何歳まで仕事ができるのか?』と考えたら、老後のお金が不安になってきたんです」(なとみさん、以下同)

「小手先のもの」では寂しさや不安は埋められない

コミックエッセイ『老後のお金が不安です! おひとりさまマンガ家の50代からの資金計画』では、なとみさんの前に表れた分身「不安ちゃん」と、支出の見直し、年金、投資…と、これまで向き合ってこなかった老後資金づくりに奮闘する様子が描かれています。

また、お金について考えることで、自分自身がなにをしたいか、を見直すきっかけにもなったのだそう。

「マンガにも描いているのですが、ひとり暮らしを始めたあと、猛烈に寂しかったんです。『自分が家族を壊してしまった』という罪悪感に襲われたり、とにかくつらかった。飲み会とか深夜のネットショッピングとか、小手先のもので、ちゃちゃっと、寂しさや不安感を埋めたから、支出もすごくて。

雑誌の仕事で、家のものを片づける企画をしたことをきっかけに、身のまわりのものを一気に手放して、今まで自分が、どれだけ自分のことをないがしろにしていたかがよくわかりました。深く考えず、小手先のものだけで、今、一瞬、心の穴を埋められればいいやって。だから、人にも依存しちゃうし(笑)」

あふれるものと向き合い、優先順をつけて取捨選択していく作業が自分自身と向き合うことにもなったのだそう。このときの経験が、お金と向き合うきっかけにもなりました。

「本当につらくて苦しいときは、ただ、『今を乗りきる』ことも大切だとは思うんです。でも、多くの人はそのあと何十年も生きていくんだから、もっと先の自分のこともきちんと考えて『これからどう生きていたいのか?』『どういう人生を送って、死にたいのか?』に真剣にならないといけない。老後のお金について考えるというのも、まさに、自分自身がどう生きたいかを探ることだと思うんです」

「失敗した〜〜」と思っても「でも勉強になったね!」

なとみさん自身、老後のお金について考えたことで、「なにをしたいか」がクリアになり、東京を離れて故郷・石川にUターン移住することを決断。さらには、地元でキッチンカーを始めることになるなど、目まぐるしく環境が変化。本書にはその顛末も描かれています。

「いや、本当に人生は、山あり谷ありだな〜と(笑)。でも、すべて、自分が『やりたい!』と思って選んだ道なので、毎日一所懸命進んでいます。こうしたい、ああしたいって思っていると、似たような考えを持つ人に必ず出会うし、そこでまた新しいつながりが広がっていく。

石川県に戻ってきてから、まさに日々そんな感じで、忙しいけど、充実しています。忙しすぎて『寂しい』なんて思ってる暇がない。後悔するかどうかは自分が決めるので、たとえ「失敗した〜」と、思っても、「でも勉強になったね!」ってきり替えられれば後悔は残らないんです」

最後に、読者に向けてこんなメッセージもいただきました。

「50代からは、人生のステージが変わる時期だと思うんです。体も、環境も、様変わりします。そんなときに、自分の人生これでよかったのかな? やり残したことがあるな…やろうか? どうしようかな? と、悩んでいる方に、読んでほしいです。読んでみて『こんな人もいるんだ(笑)。じゃあ私もやってみようかな』と、笑ってもらえたらうれしいです」