ファーウェイの新型スマホ「Mate XT」は、三つ折り式のギミックとともに高級感をアピールする(写真は同社ウェブサイトより)

中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は9月10日、三つ折り式の折り畳み型スマートフォン「Mate XT」を発表した。メーカー希望価格は1万9999元(約40万2200円)からで、9月20日に発売する。

Mate XTの最大の特徴は画面の大きさだ。三つ折りの本体を広げた時の画面サイズは10.2インチとなり、アップルのタブレット端末「iPad Air」の10.86インチに迫る。

「世界最大のスマホであり、ポケットに入るタブレット端末だ」。ファーウェイの消費者向け端末事業を率いる余承東氏は、広東省深圳市で開催した新製品発表イベントでそう胸を張った。

競合より高めに価格設定

ファーウェイは、中国メーカーの中でも折り畳み型スマホの製品化にいち早く取り組んできた。初の折り畳み型スマホ「Mate X」を発売したのは、5年前の2019年のことだ。

同社は折り畳み型スマホの希望価格を、中国の競合メーカーよりあえて高めに設定してきた。例えば、2023年9月に発売した「Mate X5」の希望価格は1万2999元(約26万1400円)から。それに対し、競合メーカーの製品は7000〜9000元(約14万800〜18万1000円)が中心だ。

Mate XTの希望価格はMate X5より5割以上高く、ファーウェイの折り畳み型スマホの価格帯をさらに押し上げることになった。

「この機種の目的は量を売ることではない。三つ折り式の投入を通じて、折り畳み型スマホの高い技術力をアピールするのがファーウェイの狙いだろう」。市場調査会社カナリスのアナリストを務める朱嘉弢氏は、そう分析する。

三つ折り式のスマホは画面の一部を外側に向けて折り畳む必要があり、技術的な難易度が高い。

「Mate XTの量産で最も難しいのは、画面モジュールの歩留まりの確保だ。そのために(素材や部品からの)サプライチェーン全体の技術力が試されている」。前出の朱氏はそう指摘する。


中国のスマホ市場で、折り畳み型スマホは数少ない成長分野だ。写真は折り畳み型の市場シェアで第2位につけるOPPOの「Find N3」(同社ウェブサイトより)

また、市場調査会社カウンターポイントのシニア・アナリストを務めるイーサン・チー氏は次のような見方を示した。

「ファーウェイにとって、Mate XTの投入は折り畳み型スマホの市場でパイオニアとしての地位を固めると同時に、より複雑な折り畳み型スマホの開発ノウハウを蓄積できるメリットがある」

高級イメージの形成に有利

中国のスマホ市場が全体的に伸び悩む中、折り畳み型スマホは数少ない成長分野になっている。市場調査会社IDCのデータによれば、中国市場での折り畳み型スマホの販売台数(出荷ベース)は2023年に700万7000台と、前年の2.15倍に拡大した。

同年のメーカー別の市場シェアは、ファーウェイが37.4%で首位を獲得。OPPO(オッポ)が18.3%で第2位、栄耀(Honor)が17.7%で第3位につけた。


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財新記者の取材に応じた複数の業界関係者は、Mate XTが今後のスマホ市場に与えるインパクトについて次のように予想した。

「最近のスマホ市場は(消費者の買い換え意欲を刺激する)イノベーションの端境期にある。そんな中、三つ折り式スマホの登場は少なくとも外観上の(目に見える)変化をもたらした。それは高級ブランドとしてのファーウェイのイメージを高め、同社のスマホ全体の販売に有利に働くだろう」

(財新記者:劉沛林、覃敏)
※原文の配信は9月10日

(財新 Biz&Tech)