買う理由が限られすぎてて…ANC搭載Airpods 4レビュー
カナル型が苦手で、低音限定ノイキャンでOKな方なら、と。
今年はiPhone 16シリーズとともに、新しいAirPodsも発表されました。ProじゃないほうのAirPodsとしては、今まで通りノイズキャンセリングなしのものとともに、アクティブノイズキャンセリング搭載Airpods 4も登場。オープンイヤー型でノイズをどの程度キャンセルできるのか気になるところですが、米GizmodoのDua Rashid記者が厳しくチェックしていますので、以下どうぞ!
Apple(アップル)は今年初めて、Proじゃない方のAirPodsを2タイプ発表しました。ひとつはアクティブノイズキャンセリング(ANC)搭載 AirPods 4(以下ANC AirPods 4)、もうひとつはANCなしのAirPods 4で、それぞれお値段180ドルと130ドル(日本価格2万9800円と2万1800円)です。Appleにとって、オープンイヤー型イヤホンにANCを載せる初めての試みでもあります。
ANC AirPods 4が、ANC非搭載AirPods 4とノイキャン以外で違う点は、ワイヤレス充電ができることと、「探す」機能でケースを鳴らせることの2点だけです。ということは、ANC AirPods 4を買う人のほとんどは、実質的にANCのために差額(日本なら8,000円)を払っているんだと思われます。つまりノイキャン性能が問われてくるんですが、実際どうなんでしょうか?
アクティブノイズキャンセリング搭載AirPods 4
価格:180ドル(日本価格2万9800円)
好きなところ:低音ではANCが効いてる、感圧センサーはタッチセンサーより操作しやすい、ケースが(AirPods Proより)小さくて持ちやすい、ワイヤレス充電、「探す」でケースを鳴らせる。
好きじゃないところ:ANCは高音には効かない、バッテリー持たなすぎ、フィット感が悪い、AirPodsからは音量コントロールできない。
使ってみたところANC AirPods 4は、低音はちゃんとキャンセルできるんですが、高音はほとんど変わりませんでした。ANC性能という意味では、やっぱりAirPods Proの方が全然いいに決まっています。
ただそれは、AirPods Proはシリコンのイヤーチップでしっかり耳穴をふさぐ、カナル型イヤホンだからです。つまりこの違いはAppleの技術のせいではなくて、オープンイヤー型の仕様だとも言えます。でもその分、バッテリー持ちやフィット感でカバーすることもできたんじゃないか、とも思います。
ペアリングボタンが消えた
AirPods 4に関して最初に気づいたのは、充電ケースがAirPods Pro(2022年モデル)より小さいことです。AirPods Proのケースは横長ですが、ANC AirPods 4のケースはほぼ正方形です。厚さはほぼ変わらずで、印象としては前よりずんぐりした気がします。
AirPods 4のケースには、AirPods Proにあったストラップループがなく、アップデートとしては不自然な気もします。サイズを小さくするためだったのかもしれませんが、今まで使ってた人にとってはガッカリでしょうね。
それから、今までケース背面にあったペアリングボタンもなくなりました。このこと、なぜかAppleの発表では言及されてなかったんですよね。ANC AirPods 4でペアリングボタンの代わりに機能するのは、ケース前面、フタのすぐ下にあるタッチセンサーです。
背面ボタンがなくなってても、ケースを開けると光るバッテリーステータスライトがあるので、センサーを見つけるのは簡単です。ただこの変更はAirPods 4のページ上にもはっきりと書いてないので、もっとちゃんと伝えてくれてたら、とは思います。今までAirPodsを使ってきた人は、ペアリングのときに戸惑ったんじゃないでしょうか? とはいえペアリングって毎日するものじゃないんで、まあいいか、と思える範囲ではあります。
充電ケースの下側にはUSB-Cポートと、「探す」機能で鳴らせるスピーカーがあります。
イヤホン本体のデザインも、ケースと同じく若干ずんぐりと変化し、スリムで軸の長いAirPods Proとは対照的です。ただどちらも、IP54の防塵防水性能は共通です。
ゆるすぎたフィット感
私がANC AirPods 4をアンボックスしたのは、Appleから渡された直後の路上でした。耳に入れるとすぐ、片方のイヤーピースが転がり落ちて一瞬行方不明になりました(幸い通りすがりの人が拾ってくれましたが)。この私とANC AirPods 4の出会いは、その後の我々の関係を象徴するかのようでした。
AirPods 4のイヤーピースはその後も何回か耳から落ち、落ちないときも常に位置を調整し続ける必要がありました。スタスタ歩いてると、だんだんゆるくなってくるんです。水たまりの上や地下鉄の換気口の上を歩くときは、落ちないようにイヤーピースを入れ直してました。
もちろんインイヤー型ほどのフィット感は期待してませんでしたが、それにしてもAirPods 4のフィットはゆるすぎです。今までも無印AirPodsに関しては、フィットがゆるすぎること、イヤーチップがないことが問題視されてました。
ただフィット感というのは耳のサイズによって違うので、買う前に実物を試して見ることをお勧めします。インイヤー型が気持ち悪い人は、オープンイヤー型のほうが好きかもしれませんし。Appleの人も言ってたんですが、ANC AirPods 4のポイントはまさにその、「インイヤー型が苦手な人にもANCという選択肢をもたらす」ことなんです。
感圧センサーはいいけど、首振りの感度はいまいち
タッチセンサー搭載のAirPods Proと違い、AirPods 4の軸には感圧センサーが搭載されてます。感圧のほうがうっかり操作を防げるので歓迎です。AirPods 4では多分、しょっちゅうはめ直しが必要になってイヤーピースに触ることが多いですしね。あとは、操作に対しカチっというフィードバックがあるのもいいところです。
どちらかのイヤーピースを1回押すと、再生、通話開始・終了、マイクのミュート・ミュート解除ができます。2回押したときの動作を設定で割り当てることもできます。どちらかのイヤーピースの長押しで呼び出す機能もカスタマイズでき、片方のイヤーピースではSiriの呼び出し、もう片方ではANCモードの切り替え、とかができます。どのジェスチャーも直感的で、認識される強さも適切だし、反応も遅くありません。
ただ音量調節したいときは、その手段がAirPods 4側にはないので、スマホなりノートPCなりといった音源のデバイス側で操作しなきゃいけません。iPhoneから離れてるときとか、素早く音量を下げたいといったときには不便に感じました。
iOS 18では、AirPods 4を装着してるとき、頭を振ることで通話への応答や拒否ができます。前後にうなづけば通話に応答、左右に振れば拒否、といった具合です。この機能はAppleのデモでは見せてもらえなかったんですが、その理由がわかりました。私はこの機能をレビュー中に7回試したんですが、成功したのは3回くらいで、しかも頭をかなりブンブン振らないと認識してもらえなかったんです。公共の場ではおよそ不可能なレベルでした。
ノイキャンが効くのは低音のみ
AirPods 4の音質については、Appleはかなりよさげなことを言ってました。AirPods Proと同じH2チップってことで、たしかに音はよいと思いますが、180ドル出すほどでもないと思います。
Appleが言うように「高音はくっきり」なんですが、「深い低音」はそんなに感じません。中音域には十分な厚みがありますが、音質を追求するとしたら、要素がもっと分離しててほしいと思います。ANC AirPods 4を買うと決めてる人が音質のせいで考え直さなきゃいけない、ってほどでもないんですが、「音がいいから」を唯一の理由にするのはダメだと思います。
ノイキャン性能もAirPods Proほどじゃないので、没入感も相対的に低い感じです。オープンイヤーだから、しょうがないことなのかもしれません。
Appleが私にANC AirPods 4のデモをしてくれたとき、使ってたのは飛行機内のすごく低い騒音でした。その低音域だけが、このAirPods 4がキャンセリングを得意とする範囲です。他の音域のキャンセリングは、痛々しいほど普通です。
といっても、車のエンジンや足元を地下鉄が通る音はとてもよく消えていました。でも、車のクラクションとか人のおしゃべりは全然通り抜けます。たしかにクラクションやサイレンといった高音は多くのANCイヤホンが苦手としていますが、このANC AirPods 4と同等の価格かこれより安いイヤホンでももっとちゃんとキャンセルできているものはありました。
たとえばサラダのチェーン店でランチをしてるとき、空調の低い音は完全に消えてたんですが、POSシステムのピーピー言う耳障りな音は聞こえてました。ANCと外音取り込みモードを交互に試しましたが、ピーピー音に関してはほとんど違いがありませんでした。
でもこれはオープンイヤー型の問題なんです。耳の穴の入り口にプラスチックがちょこんと乗ってるだけでは、騒音が通り抜けるすき間が当然開きっぱなしです。シリコンのチップを耳に差し込むインイヤー型なら隙間は完全にふさがるし、プラスチックが太刀打ちできない種類の音も吸収できます。
これでは、ANCの分だけ高い金額を払ったユーザーを納得させられません。それに今、Airpods Proの実売価格が下がってきてて、米国だとたった10ドル(約1,400円)ほど足せばAirPods Proを買えて、それではるかに良いANCが手に入るんです。なので私だったら、ANCが要らなければ130ドルのANCなしAirPods 4を買うし、ANCが要るなら190ドルのAirPods Proを買います。
Appleにこの点を聞いてみたところ、彼らもそれに同意でした。「ANC AirPods 4は、オープンイヤーのデザインでノイズキャンセルをしたいユーザーのニーズだけを満たすものなんです」と。つまりそれによって、ANCが標準以下でもしょうがないということなんでしょうね。
でも外音取り込みモードは、私は気に入りました。外音取り込みモードには通常ダミーの騒音が載せられていて、それがやり過ぎになることもありがちなんですが、ANC AirPods 4は全然まともで、周りの状況を把握するという目的をちゃんと果たしていました。
あとはANCの中にも「適応型オーディオ」、つまり周りの音量に合わせて強弱を自動で変化させるモードもあります。それから、人に話しかけると自動で再生音量が下がる「会話感知」もオンオフ可能です。私は会話感知オンのとき、聞いてる音楽に合わせてつい歌ったら、音量が勝手に下がったのであれ?っとなったことがありました。
短さに驚愕のバッテリー
バッテリーライフは、驚きの短さです。ANCオンだと4時間しか持たず、オフにすればもう少し持ちます。ケース込みだと、ANCオンで20時間、オフで30時間とされています。でもANCのために50ドル多く払うなら、ANCを一番よく使うはずなので、ANCオンの場合の持ち時間を意識すべきです。
比較のために、60ドルのCMF Buds Pro 2はANCオンで6.5時間持ちます。200ドル(日本価格2万8200円)のGoogle Pixel Buds Proは、米国だともう140ドル(約2万円)で売ってますが、ANCオンで7時間、オフで11時間持ちます。100ドル(約1万4000円)のOnePlus Buds 3はANCオンで6時間、オフで10時間で、充電ケース込みだと28時間・44時間となります。
私はANC AirPods 4をフル充電して、オフィスで1〜2時間、ランチで30分使ったところ、オフィスに戻るころにはもうライトが赤でした。その後も1時間ちょっと持ちましたが、1時間近くかけて充電したものがこんなに早く赤ライトになってしまうのは残念です。
私は1日のかなりの時間イヤホンつけっぱなしで音楽やポッドキャストを聞いて、さらに1日1時間は電話もします。通話は音楽再生よりバッテリーを消費するので、私の場合4時間持たないと思います。ということは、私なら多分毎晩充電しなきゃいけないということになります。
ただANC AirPods 4はワイヤレス充電ができ、Apple WatchかQiの充電器が使えます。AirPods ProはMagSafe充電対応でしたが、AirPods 4ではこの機能が削除されました。噂では充電ケースを小さくしたせいだと言われていましたが、Appleに直接聞いたところ彼らは否定していました。
AirPods 4のイヤーピース本体はクイック充電ができて、ケースに入れれば5分で45分〜1時間分の充電ができます。が、充電ケースそのものを充電するときにはクイック充電機能がなく、これもこの価格帯としては残念です。
買うべき?
私から見ると、ANC AirPods 4には、十分なユースケースが見当たりません。ANCが最優先なら、私だったら10ドル足してAirPods Proを買います。ANCが要らなければ、ANCなしのAirPods 4を買って、その分50ドルセーブします。
ANC AirPods 4を買うことを正当化できる唯一の場面は、低音(飛行機内や洗濯機、空調のゴォーっという音)に効果的なANCイヤホンを、オープンイヤー型で探してるときだと思います。が、これってかなり狭いですよね。オープンイヤーでもインイヤーでも気にしない人なら、わざわざ妥協してANC AirPods 4を選ぶ理由はないはずです。
細かい改善点、たとえばAirPods ProでタッチセンサーだったのがANC AirPods 4では感圧センサーになってることとかは、いいと思います。でもバッテリーが短いとか、音量調節はスマホやPC側でしかできないといった、より大きな問題があるときに、細かいことでは喜んでられません。つまり、買わない理由はたくさんありますが、買う理由はすごく限定的なんです。