「ニンテンドーミュージアム」オリジナル花札から巨大コントローラーまで、任天堂の歴史を学べる体験展示を先行レビュー
10月2日 開業予定
所在地:京都府宇治市小倉町神楽田56番地
チケット(事前予約制) 大人:3,300円
中学・高校生:2,200円 小学生:1,100円 未就学児:無料
任天堂は、10月2日にオープンする資料館「ニンテンドーミュージアム」のメディア向け内覧会を9月25日に開催した。「ニンテンドーミュージアム」は、9月23日に創業135年を迎えた任天堂が作り上げてきた娯楽の歴史を体験できる施設。このレポートでは、その中でも「体験」にフォーカスした展示やアクティビティをまとめて紹介したい。
ミュージアム1階にある体験展示を遊ぶには、入場時にもらえる入館証に入っているコインが必要だ。コインは1回の入場で10枚もらえる。ほとんどの体験展示はコイン1枚か2枚で遊ぶことができるが、中には4枚必要なものもあり、残念ながら1回の来場ですべてを遊びつくすことはできない。今回は内覧会ということで、メディア向けのパスで全て体験することができたので、自分が行くときにどれを遊ぶかの参考にして欲しい。
【ニンテンドーミュージアム Direct】エントランス近くには土管の記念撮影ポイント
ミュージアムの外観は工場そのもの
触るとメロディを奏でるキノピオがお出迎え
ゴールのポールに捕まるマリオ
全身で遊ぶ幻想的な百人一首「しぐれでんSP」
ミュージアム1階中央にあるフロアを使った巨大な百人一首のアクティビティ。かつて京都嵐山にあった「小倉百人一首」をテーマにした施設「時雨殿」のアトラクションを基にした体験展示となっている。20人が同時にプレイすることができる。必要コイン数は2枚。
大人数でやると、見ていても面白い
参加者はそれぞれスマホ端末を渡される。ゲームが始まると床がコイの泳ぐ池になり、そこに下の句が書かれた巨大な札が浮かんでいる。
スマホはチュートリアルも兼ねている
端末の画面には百人一首の上の句が表示される。上の句を読み上げる声に同期して、隣のスペースにじわじわと下の句の絵が表示されていく。参加者はこの画面と音声をヒントに、床にばらばらと置いてある下の句から目標の札を見つけ出して、スマホのカメラで映してからタップする。
真剣な顔で取り札を探す
タップしたタイミングで、下の句を読み終わる前にタップできれば100点、読み終わると90点、2回目の読み上げが始まっていると80点がはいる。お手付きは-10点だ。数枚繰り返して最終的な点数を競う。スマホごとに勝負札が決められており、これを取ることができればボーナスが入る。なお得点が入る体験展示で記録した点数や、途中にカメラ撮影がはいる体験で撮影したデータは、ニンテンドーアカウントと紐づいたチケット情報に、来場してから30日間保存される。
読み上げが始まると、全員が真剣な顔で一斉に動き回り始めるさまは、周りで見ていても面白い。参加者が歩いた床には、波紋が広がり、まるで本当に水面を歩いているように見えるのも幻想的だった。
大画面のド迫力シューティング「ザッパー&スコープSP」
任天堂が1970年代に展開した大型レジャー施設「レーザークレー」を現代風にアレンジしたシューティングゲームの体験展示。光線銃型コントローラー「ザッパー」とバズーカ型コントローラー「スーパースコープ」のどちらかを選び、巨大なモニターの前にずらりと並び、好きな武器を使って、次から次へと表れるノコノコやクリボーらを撃っていく。必要コイン数は4枚。
ステージは3ウェーブに分かれているので、途中で武器を変えることもできる。視界いっぱいに広がる横長の大画面は迫力満点で、VRのような臨場感がある。
武器を変えつつ、大画面に向かってひたすら撃ちまくる
60年代の部屋を再現したバッティングゲーム「ウルトラマシンSP」
1968年に発売された家庭用ピッチングマシン「ウルトラマシン」を、当時の家庭をイメージした空間で体験できる。体験ブースは、右打ち用が5部屋と、左打ちが1部屋の6部屋。子供部屋や台所、トイレなどすべて異なる内装に造られており、家具調テレビやレコードプレーヤーなど当時を思わせるレトロな家具がおいてある。必要コイン数は2枚。
昭和のインテリアを再現した空間
1回のプレイで20球打てるが、特定の家具に当てると「1UP!」の声とともに球数が増える。さらに壁の額がガタンと下がったり、テレビが付いたりと球が当たるとリアクションがある家具があり、あちこち狙ってみたくなる。
ピンポン玉なので、軌道が読み切れず。思っていたよりも当てるのが難しい
花火を土管に入れて打ち上げろ「ウルトラハンドSP」
任天堂が1966年に発売した「ウルトラハンド」を操作して、鎖にぶら下がっている玉を掴んで土管に入れる。制限時間内に土管に入れた数だけ、ゲーム終了後に花火が上がる。必要コイン数は1枚。
玉を掴んで土管にいれていくゲーム
大文字焼きがよく見ると「天」になっている
伸ばすというアクションとアームを開くアクションの同期がポイント
人が遊んでいるのを見ると実に簡単そうに見えるのだが、実際に自分でやるとかなり難しかった。ウルトラハンドは思いのほか動かすのに力が必要なうえ、あまり力をかけすぎると、いきなりぐんと伸びて思った場所にいかない。
実際にやってみると、割と難しい
なんとか球を掴んでも、たわむアームに力が入らず、玉を鎖からもぎ取るのがまた難しい。さらに、土管に入れるにもまた悪戦苦闘する。特に、ひときわ大きなポケモンボール柄の玉は取るのが難しく、今回は結局成功しなかった。ぜひ読者の方はあのポケモンボールをもぎとって欲しい。
京都の町並みから上がる花火。結果は2発
2人の「ラブ度」を診断する「ラブテスターSP」
1969年に発売した2人1組で「ラブ度」を測定できる「ラブテスター」が巨大化して登場。左手と右手にそれぞれターミナルボールを握った2人が手をつなぎ、3つのミニゲームで「ラブ度」を診断する。必要コイン数は2枚。
プレイ中はずっと手をつないでいる必要がある
手をつないだまま風船を割るゲーム、タイミングを合わせて同じ帽子を被るゲーム、そしてだんだんと体を寄せていかざるを得ない相合傘ゲームの3つは、カップルはもちろん、友達同士や親子でも盛り上がれそうだ。
体を使って遊ぶ「ゲーム&ウォッチSP」
ミュージアム1階の数カ所で「ゲーム&ウォッチ」の「マンホール」と「ボール」を遊ぶことができる。壁に投射された画面に向かって、両手を認識させて、体で直接操作する。必要コイン数は1枚。
下からマンホールの蓋を支える「マンホール」
両手でボールを投げる「ボール」
ファミコンやスーファミの名作を遊べる「ニンテンドークラシック」
「ニンテンドークラシック」のコーナーでは、Nintendo Switch Onlineで配信されているファミコン、ディスクシステム、NINTENDO 64、スーパーファミコンのゲームをコイン1枚で7分間遊ぶことができる。「ドンキーコング」や「レッキングクルー」、「新鬼ヶ島」など懐かしい名作が80作以上勢ぞろいしている。
ニンテンドークラシックのコーナー
コイン1枚で7分間遊べる
ファミコンとディスクシステムのゲーム
スーパーファミコンのゲーム
NINTENDO 64のゲーム
同じ空間内にある「ファミコンチャレンジ」は、「ドンキーコング」、「ピンボール」、「マリオブラザーズ」、「バルーンファイト」、「スーパーマリオブラザーズ」の5本を連続で遊んで、総合得点を競う体験展示。点数はアカウントに紐づいた情報として後からでも確認できるので、SNSなどで点数の獲得競争が盛り上がりそうだ。必要コイン数は1枚。
5つのゲームを順次プレイして、制限時間内に高得点を狙う
心を合わせて巨大コントローラーを操る「ビッグコントローラー」
巨大なコントローラーを2人がかりで操作するアクティビティ。巨大ファミリーコンピュータ コントローラー、巨大スーパーファミコン コントローラー、巨大NINTENDO 64 コントローラー、巨大Wiiリモコン、巨大バランスWiiボードという巨大なコントローラーが並ぶブースで、それぞれのゲームマシンのゲームに挑戦できる。必要コイン数は1人につき2枚。
巨大ファミリーコンピュータ コントローラー
ファミコン コントローラーでは、「ドンキーコング」、「スーパーマリオブラザーズ」、「ドクターマリオ」の3種類のいずれかに挑戦できる。筆者たちは、「ドンキーコング」を選んでみた。いざやってみると、ジャンプボタンを押す係と、十字キー操作係のシンクロが不十分で、なかなか登れない。わちゃわちゃと遊んでいる姿は、正面にあるカメラで撮影される(最初に撮影するかどうかを自分で選択できる)。撮影された画像は、ニンテンドーアカウントに紐づいたチケットの情報に30日間保存される。
巨大Wiiリモコン
巨大Wiiリモコンでは、2人が協力して操作する「Wii Sports Resort」の「遊覧飛行」と、「Wiiリモコンプラス バラエティ」の対戦プレイ「アイスクリームチャレンジ」を遊ぶことができる。巨大Wiiリモコンを地面に置いたまま積みあがっていくアイスクリームのバランスを取っていると、自然体まで傾いてしまった。
2人が息を合わせないと勝てない!
スタッフの人に手伝ってもらってクッパとの戦いに挑む
巨大NINTENDO 64 コントローラー
作るワークショップ「ちょっと、花札をつくろう」
カフェ「HATENA BURGER」の中央あたりにある階段を上ると、2階には花札のワークショップがある。「ちょっと、花札をつくろう」は、特製キットを使って4枚の花札を作るワークショップ。参加費は2,000円(税込)で、所要時間は作る札の難易度によって30分から1時間程度だ。
ワークショップの内部
作業台
花札には、1月が松、2月が梅と12カ月それぞれに植物をモチーフにした4枚の札がある。ワークショップでは、自分が作りたい月を選んで、かつて花札が手作業で作られていた時代の作業手順にしたがって4枚の札を作ることができる。
筆者は昔から、柳に蛙の札が大好きなので、今回は11月の柳を作ってみた。柳は黄色、紫、水色、橙色、赤、黒の6色を使う。花札の中でも、この柳と5月の菖蒲(あやめ)は「色数が多いので、少し難易度が高いかも」と後からスタッフの人に教えてもらった。
人気があるのは、「任天堂」の文字が入った12月の桐、そして華やかな4月の桜など。8月の芒(すすき)は、絵柄が単純なので子供でも簡単に塗れておすすめとのことだ。
作業台には色を付けるために使う顔料インク。塗るための刷毛、裏紙をつけるためのノリ、バリをとるための爪切りとやすり、縁をノリ付けした後挟むクリップなどがあらかじめセットしてある。爪切りやクリップなど、いかにも町工場の手作業で使われていたという風情の道具があるのがリアルだ。
簡単な説明を受けた後、服に付かないよう、作業を始める前に不織布のエプロンと腕抜きが配られた。あとは手順が書かれたシートを見ながら作業を進める。
2月の花札梅は赤と黒が多くてなかなか難しそう
特製セットの中には、あらかじめ主線が印刷された花札の台紙と、色を付ける部分だけ切り抜かれた半透明の型紙、完成した花札を飾るための紙製のスタンドが入っている。
台紙はパレットも兼ねており、小さな刷毛にインクを付けてステンシルの要領で1色ずつ色を入れていく。型紙を外していい感じに色が付いていると嬉しくなる。
柳は赤と黒の面積が多いが、面積の多い部分を塗るときに、刷毛にインクをつけすぎるとにじんでしまう。綺麗に塗るには、のばし紙で刷毛の色を薄めたうえで、何度も重ね塗りをして色を濃くしていく。
机にセットされている色は、赤、桃色、橙色、黄色、緑、水色、紫、黒の8色。使う色は札によって指定されているが、絶対に従わなくてはならないわけではなく、自分の感性で自由に色を付けて構わない。実際、見本置き場には黒い柳を緑にしたり、青い桜が咲いていたりと個性的な札が飾られていた。
刷毛を使って色を付けていく
ノリで黒い裏紙を貼る
花札はあらかじめ切れ目が入っているので、着色が終わった後はその切れ目で台紙から切り離す。爪切りややすりでバリを落としたあと、裏側から薄い黒紙を貼り付けて後ろと縁を作る。
完成したオリジナル花札
特製キットには完成した花札を収納して飾るための紙製スタンドも付いている。売れるほど素晴らしいというわけではないが、自分で作った花札は、それだけで愛着がわいてくる。1回で作れるのは1カ月分だが、オープンすればきっと12カ月分フルセットでそろえる強者がかならず登場しそうな、楽しいワークショップだった。
12カ月分の特製キット
花札を運んでいるピクミンを発見
遊ぶワークショップ「ちょっと、花札であそぼう」
もう1つのワークショップ「ちょっと、花札であそぼう」は、花札の代表的なあそびの1つ「花合わせ」をベースに、プロジェクションを使ってビジュアルで説明を交えながら初心者でも花札で遊ぶことができるという珍しいワークショップ。体験は有料で、2人1組で500円(税込)、約チュートリアルを含めて30分間の間何度でもプレイできる。
このワークショップでは、本来は48枚の札を使うゲームだが、ワークショップでは簡略版として32枚で勝負する。チュートリアルはじめ、手取り足取りのガイドがあるので、花札初心者でも楽しく遊ぶことができる。
ワークショップ「ちょっと、花札であそぼう」の部屋
ワークショップは畳部屋風に造られており、座布団に座ってのプレイ。対面したプレイヤーの間には、プロジェクションマッピング付きの場が作られている。そこに実物の花札を並べると、天井からガイドが流れ、それにしたがってプロジェクションでガイドが何をすればいいのかを指示してくれる。音声とプロジェクションのガイドは、「英語」というカードを置くと瞬時に英語表示に代わる。2人のうちどちらか片方だけ英語にすることもできる。
例えば、札を場に正しく並べると白い枠が緑になったり、場に自分の手札で取れる札があると矢印で表示してくれたり、持ち手の中に役ができると、「赤短」とか「花見で一杯!」といった風に、役の名前をドンと中央に表示してくれる。非常にわかりやすいUIはさすが任天堂といったところ。
プロジェクションのガイドでわかりやすくゲームが進行する
手持ちの札がなくなると、自動的に集計されて点数が表示される。便利すぎて、家にもひとつ欲しくなる。花札で遊んだことがない人は、ぜひともこのワークショップで遊んで見て欲しいと思った。
オリジナルバーガーが作れるカフェ「HATENA BURGER」
80年代のポップな雰囲気の店内では、工場だった時代に実際に使用されていた、社名の入ったパレットやケースがインテリアとしてリサイクルされている。工場だった時、表に掲げられていたという「サービスセンター」の看板も再利用されている。
「HATENA BURGER」のロゴ
「HATENA BURGER」の店内
再利用されているロゴいりケース
再利用されている「サービスセンター」の看板。店内に2カ所ある
利用するには、まずは入り口で番号が書かれたQRコードを受け取り、先に座席を確保したうえで、スマホでQRコードを読み取って注文する。注文が終わるとスマホに表示されたバーコードをレジで提示して代金を支払い後は自分の注文番号が完成済みモニターに表示されるまで待つというシステムだ。
メニューはハンバーガーが基本。いくつかの定番が用意されているが、このカフェの目玉メニューはなんといっても、6つのパーツを選んで、積み上げて、自分だけのオリジナルバーガーが作れる「HATENA BURGERセット」だろう。価格はオリジナルバーガーにドリンクとポテトかコールスローが付いて2,100円(税込)。
バンズはブラウン、レッド、ブラックの3つから選べる。メインの具材はビーフパティ、すきやき肉、フライドチキン、サワラの西京焼き、ビッグキノコの5種類。それぞれ+400円でダブルサイズを選べる。
さらに、11種類のトッピングから3つを選ぶ。トッピングには厚揚げや万願寺とうがらし、九条ネギにしば漬けなど、京都名物が並んでいる。
最後に7種類のソースから1つを選べば完成だ。選択次第でベジメニューや激辛バーガーも作ることができる。今回筆者はブラックバンズ、メインにサワラの西京焼き、トッピングには九条ネギ、厚揚げ、チェダーチーズ、ソースはしば漬けタルタルソースという京のおばんざいバーガーを作り上げた。
珍しいものを紹介したいライター根性と、味への不安がない混ぜだったが、いざ食べてみると、さすがというか、普通においしかった。むしろ、とろりと柔らかい厚揚げとチェダーチーズが甘みのある西京焼きにベストマッチングしており、今までに食べたことのない食感に感動した。
サワラの西京焼きいり、しば漬けタルタルソースバーガー
ビーフパティダブルのすき焼きソースバーガー
筆者が作ったメニューのGIF
自分が積み上げたオリジナルバーガーの画像はGIFとして保存、公開することができる。面白いバーガーを作ったら、SNSでドヤることができる。
ポップな店内は椅子が「マリオブラザーズ」のようなレンガ模様だったり、「ゼルダの伝説」のステンドグラスがあったり、階段の手すりが「エキサイトバイク」になっていたり、とそこかしこにファンを喜ばせる仕掛けがあり、それを探すのが楽しい。また、BGMは任天堂ゲームのBGMが使われており、「あつまれどうぶつの森」のチルなBGMを聴きながらバーガーを食べていると、取材であることを忘れそうにリラックスできた。
レンガ模様の入った椅子
お座敷風の席
「ゼルダの伝説」モチーフのステンドグラス
「エキサイトバイク」が飛び交う階段
(C)Nintendo