Image: Florence Ion / Gizmodo US

9月20日に発売したApple(アップル)の新しいiPhone 16シリーズ。今回も例年通り発表から予約開始、そして発売まで注目を集めているわけですが、新たな機能や性能の向上と惹かれる要素がある反面、まだ購入を迷っているという方もいらっしゃると思います。

米Gizmodoは約1週間の間iPhone 16 Pro/Pro Maxに触れてみました。実際に使ってみたレビューをご紹介します。

Apple iPhone 16 Pro/Pro Max

これは何?:Apple Intelligenceという未来のために特別に調整された最高のiPhone

販売価格:iPhone 16 Pro 15万9800円〜(公式ストア)、iPhone 16 Pro Max 18万9800円〜(公式ストア)

好きなところ:より薄く軽くなり、画面はより大きくなった、カメラのセンサー向上により細部が鮮明に撮影可能に、光学ズームがProとPro Maxで同じ仕様になっている

好きじゃないところ:カメラコントロールボタンは便利だけど現状はあまり必要性を感じない、Apple Intelligenceは望まないとしても標準搭載されている

iPhoneはAppleの製品でも特に注目を集めます。多くの人が注目するだけでなく、スマートフォンのベンチマークとして、あるいはほかのメーカーの目指すべきライバルとしても。

私が特に注目しているのはAppleのAI(人工知能)の取り組み方で、ほかのデバイスやプラットフォームのやり方よりも個人的に気に入っています。

実際、iPhone 16シリーズのAIの実装についてはほかのプラットフォームほど大々的だったり目立つものではないように見えます。しかし、機能としては同じように実現されているといえます。

いうなれば、機能として実現可能にするハードウェアをすべて備えてはいるものの、iPhone 16 Pro/Pro MaxはAI実装のための器として売り出しているわけではないということです。

7つのレンズを備えたカメラからバッテリー寿命まで、すべてがしっかりと設計されています。新しいカラーバリエーションもいい感じですしね。

iPhone 16 Pro/Pro Maxを使い始めて1週間程度ではありますが、次に何が起こるか期待を感じさせます。

全体のデザインについて

個人的に特によいと思ったのは、GoogleのPixel 9 Pro/Pro XLのときと同様にiPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Maxで同じカメラシステムを採用しているという点です。iPhone 15のときは、5倍の光学ズームを備えていたのはPro Maxのみでした。

今年は、バッテリーとスクリーンサイズ以外にiPhone 16 ProとPro Maxの間にほとんど違いはないといっていいでしょう。

筐体の大きさは昨年のiPhone 15 Proよりも大きくなっています。iPhone 16 Proで6.3インチ、Pro Maxで6.9インチ。iPhone 15 Proの6.1インチ、Pro Maxの6.7インチと比べ、どちらも大きくなりました。また、厚みはわずかに薄くなったため、ケースをつけたとしてもかさばる感じはせず、大きなディスプレイがよく機能していると思えますね。

今回のiPhone 16 Proは、カメラ性能に一切妥協せずに完璧なサイズを獲得した、と感じられます。

iPhone 16 Pro Maxは、レビュー用に使用したデザートチタニウムのカラーが最もよいと感じました。とはいえホワイトチタニウムやナチュラルチタニウムも素敵で、ブラックチタニウムもモダンでよいと思います。

今年はProシリーズにピンクがないとの不満もありました。が、デザートチタニウムは光の当たり具合でブラッシュローズのような色味に見えますね。

新実装のカメラコントロールボタン

Image: Florence Ion / Gizmodo US

今回のiPhoneの最大の物理的特徴といえるのがタッチセンサー対応の「カメラコントロールボタン」です。

このボタンは、カメラアプリを開いたり、シャッターとして機能します。さらに撮影時のズーム、露出や被写界深度の操作、フォトグラフスタイルなどの設定の変更にも使えます。詳しい使い方はこちらからご覧ください。

さて、今回レビュー用にiPhone 16 Proで写真を撮ってみたわけですが、実際には1週間も立たないうちに、カメラコントロールボタンよりも、スクリーン上のビューファインダーから設定の変更や操作をするほうがよいと思いました。スマホを握るのが苦手な人にとっては、ボタン操作のほうが面倒になることがあると思います。

とはいえ、少なくともすばやく写真を撮影したいときに使える専用のカメラボタンができたのは確かです。これについては、スマホのロック画面からロックを解除してカメラのショートカットをタップして…とするよりもはるかに高速で行なえるという価値があるということです。

ちなみに、iOSの標準カメラアプリよりも好きなカメラアプリがある場合は、カメラコントロールボタンから別のカメラアプリを起動するように再マッピングもできます。また、カメラコントロールは開発者向けガイドラインが公開されているので、より多くのサードパーティアプリがこの新しいボタンの興味深い使い方を探ることができるようになっています。

あらゆる用途に対応する「A18 Pro」チップ

iPhone 16 Pro/Pro MaxではSoCに新しい「A18 Pro」チップが採用されています。

6コアの3nmプロセッサは、システム全体の効率やパフォーマンスの向上に貢献しています。また、Apple Intelligenceが実行するすべての機能に備えて準備された16コアのNeural Engineも搭載さてれています。また新しいGPUによりモバイルゲームのレイトレーシングも向上しました。

iPhone 16 Pro/Pro Maxは、内部設計を再構築して熱処理性能が向上しました。これにより、これまでのモデルよりもパフォーマンスも向上したとされています。こうした数値に関しては、ベンチマークテストも検証途中です。が、Geekbench 6でのテスト数値は、Google Pixel 9 ProがTensor G4で出したものよりも印象的な数値だったといえます。

筐体はやはり多少熱くはなります。ケースをつけたiPhone 16 Proをキッチン用温度計で測ってみたところ約36.6℃でした。

バッテリーについては、米Gizmodoでベンチマークテストを行なう予定です。このテストは、YouTube動画を200ニトでストリーミングし続け、バッテリーが切れるまでの時間を測定するというもの。これまでiPhone Proシリーズはこのテスト最高の結果を出しており、前回iPhone 15 Pro Maxでは25時間も駆動しました。iPhone 16 Pro Maxでは、カタログスペックでもバッテリー性能は向上しており、これを超える結果が出ると思われます。

現時点までで使ってみた感覚でも素晴らしいバッテリー性能と感じます。たとえば、iPhone 16 Proで、AirPods 4を接続してANCオンにした状態で6時間外出した後でもバッテリーは20%残っていました。また、iPhone 16 Proのバッテリー残量が83%から外出し、アプリのインストールや写真撮影、通話、ポッドキャストの視聴、Apple Arcadeでのちょっとしたゲームプレイなどを7時間続けましたが、バッテリー残量は24%残っていました。

7つのカメラを1つにしたようなカメラ性能

Appleは、iPhone 16 Pro/Pro Maxでは7種類のプロ用レンズを搭載しているような感覚であるとしています。

これには、さまざまな撮影視点に対応する24mm、28mm、35mmの範囲のレンズとなる48MP Fusionカメラによって4つのレンズの役割を果たします。さらに新たな48MP超広角カメラによってさらにマクロと13mmの2つが加わります。さらに5倍の光学ズームによって望遠の7つ目のレンズとなるということです。

iPhone 16 Pro(左)とPixel 9 Pro(右)で比較
Image: Florence Ion / Gizmodo US

このカメラシステムは、Androidスマートフォーンメーカーが採用している戦略と似ています。たとえば、SamsungのGalaxy S24 Ultraは1つのデバイスにたくさんのカメラが搭載されていることで高い評価を得ました。

Appleはこの戦略を借用したようなかたちで、iPhone 16 Proをプロレベルのデバイスとして際立たせることに成功しているようにみえます。3つのレンズを1つのカメラにまとめるという設計は昨年のiPhone 15 Proから引き継がれたもので、今回はさらにそれを強化したかたちになっています。

今回iPhone 16 Proで、前回のモデルやPixel 9 Proよりも明るい写真が撮影できるようになったのは、カメラのセンサーが大きくなったためだと思いましたが、実際は新しくなっただけでした。これには、一度に複数のブラケット撮影をする処理性能が向上したため、iPhone 15 Pro Maxの写真よりも明るい写真が撮影できるようになった、ということです。

Image: Florence Ion / Gizmodo US

iPhone 16シリーズで新しくなったたくさんの機能の中でも最重要といえるのが「フォトグラフスタイル」です。

この機能によって、写真を撮影する前に「リッチなコントラスト」「鮮やか」などのスタイルで写真の色調を調整できます。

さらに、このスタイルは撮影後にも写真アプリで調整可能なのです。写真アプリで画像を選択して、編集のボタンをタップするとスタイルの変更ができます。このときにスライダーをスワイプすることでトーンとカラーの調整も可能です。

また、画像に映っている人の肌の色相を調整するスキントーンのフィルターもあります。これは風景写真では変化はあまり見られませんが、人が映る写真やセルフィーでは「クールローズ」や「アンバー」「ローズゴールド」などのプリセットによって肌の色合いの変化がわかるはずです。

今回iPhone 16 Proシリーズを触ってみて、これまでのiPhoneよりもさらに「クリエイターのためのツール」という要素が盛り込まれていると感じました。一方で、家族のためのホームムービーを撮ったり、思い出や記録のために写真や動画を撮るといった場合でもiPhone 16 Pro/Pro Maxが最適なカメラであるように目指しているとも感じます。Appleはいずれのユーザーをも満足させるものを生み出しているといえると思います。

Apple Intelligenceについて

Image: Florence Ion / Gizmodo US

公式ストアの「Apple Intelligenceのために設計」という文言を見ても、iPhone 16シリーズがApple IntelligenceというAI向けに構築されたものであることがわかります。

しかしながら、現状のユーザーエクスペリエンスはその恩恵を100%受けているわけではなく、むしろまだ多くの部分が反映されていないといえるでしょう。これについて批判もあるとは思いますが、Google(グーグル)やSamsung(サムスン)といったメーカーが進めてきたことを考えると、準備が整っていなくても飛び込まざるを得なかった状況だったことは予想できます。

Appleの戦略は、AIをゆっくりとした展開のなかで“高品質なプロダクトを作るために必要なもの”といった売り出し方をしており、それがうまくいっていると思います。このゆるやかなアプローチは、Appleがユーザーを引き止めるための戦略として最も賢明なように感じます。

確かにAI競争で遅れを取っているように見えます。が、一方で個人的にはAndroidデバイスであっても、Gemini Advancedを導入したことによる成果の実感はまだ待っている段階です。

これらについての議論は、業界がさらに勢いを増していき、Appleがさらに多くのApple Intelligenceの機能を発表したあとに再び考えるべきことだと思います。そして同じようにGoogleにもまた次の発表を期待したいところです。

現時点でのApple Intelligenceの機能については、主にデバイスをすばやく操作するためのツールといえるでしょう。メールの要約や通知の最適化、AIによる強化されたライティングツールなどがあり、文章の編集やトーンの変更などなどの機能が使えます。

写真アプリでは、特定の写真をすばやく見つけたり、映り込んだ余計なものを除去したりもできますね。それからApple IntelligenceによってSiriも改善して、チャットやコマンドが使いやすくなりました。

iPhone 16 Pro/Pro Maxは購入すべき?

先述のように、Appleの新しいiPhone 16シリーズはApple Intelligenceを念頭に設計されているわけですが、現時点でこの新しいスマホの最大の魅力はそこではありません。

AIの機能、そしてその強化は現状応答性やパフォーマンスに重きを置いています。徐々に機能を導入していくこと、さらに現時点ではユーザーとのやりとりにはあまり導入していない、といったアプローチは過度にユーザーをイライラさせないように考えられていて賢明だと思います。ユーザーに今はまだ無理にAIに適応しなくていいとしている点、これもよいことでしょう。

今年中にスマートフォンを買い替える予定でProにしようと思っているのなら、iPhone 16 Pro/Pro Maxを検討すべきだと思います。今後1年の間にApple Intelligenceの機能追加とともに今現在とは状況は変わっていくでしょう。とはいえ、現時点でも全体の性能もよく、特にカメラの性能はよいということはいえます。

注意しておくべきなのは、Apple Intelligence自体はiPhone 15 Proシリーズでも連携は可能であるということです。実際、1年前に購入して、しかもProモデルである場合は無理にアップグレードする必要はないと思います。今回追加されたカメラコントロールボタンはすばらしいですが、現時点では絶対に必要とはいえません。むしろこの機能は多くのアプリとの連携がなされたときに真価を発揮することでしょう。

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