三菱商事、KDDI、ローソンが合同会見を開催、「未来のコンビニ」への変革に向けた取り組みを説明した。

ローソンは1975年に大阪・豊中市に1号店をオープンし、ダイエーがチェーン展開、2000年になって三菱商事が出資参画、2017年には同社の子会社となった国内3位のコンビニエンスストアチェーンだ。

そして2019年にはKDDIがローソンと資本業務提携、直近では新体制として三菱商事50.0%、KDDI50.0%となった。

三菱商事、KDDI、ローソンが目指す未来のコンビニ。新生ローソン第1号を東京・高輪ゲートウェイシティのKDDI新社屋にオープンするという

コンビニとしてのローソンは、来年2025年に創立50周年を迎える。そんなタイミングでの未来のコンビニ構想の披露というわけだ。今後は三菱商事、KDDI、ローソンの3社で未来のコンビニを目指していくという。

○ロボットが活躍、あらゆる業務をデジタル化

ローソンは2030年を目処に、ロボティックスとデジタル化によって店舗でのオペレーションを30%削減することをもくろんでいる。

その準備として2028年度には、本部や店舗のシステムを総刷新する予定で、そのタイミングで、この50年間に積み上げたあらゆる業務をデジタル化する計画だ。

その新生ローソンのスタートアップとなるのが、2025年に竣工する東京・高輪ゲートウェイシティのKDDI新社屋にオープンする新生ローソンの1号店だ。

そこでは、納品や陳列、調理、清掃などのあらゆる業務をロボットが担当、客は客でセルフレジで精算する。ここは、社会課題解決のための実験場でもあるとKDDI代表取締役社長の高橋誠氏はいう。

納品や陳列などあらゆる業務をロボットが担当する

○リアルのわずらわしさとは無縁の店舗

そのコンセプトはネットでのショッピング体験をリアル店舗で実現することだ。

レジに並ばないでAIスマホレジで精算、これが欲しかったという最適な商品をレコメンドするAIサイネージ、そして空間を演出するサイネージなどが駆使された空間となり、リアル店舗特有のわずらわしさとは無縁でショッピングができる。

またAIは、雨天時にイベント開催時の需要を予測したり、配達に伴う配送員の配備を考案したり、食材の手配を最適化したりと、データ分析基盤として構築される。あらゆるリアルとあらゆるバーチャルのゲートウェイとして経済圏を築いていくことになるという。

未来のコンビニは通信とテクノロジーの力によって地域のマルチハブになっていく。公共サービスの拠点として、防災の拠点として、交通の拠点として、産業連携の拠点として機能しながら、それらの拠点が街を構築していく。

そのマルチハブコンビニを全国へ拡大し、災害発生時に街のライフラインとしての役割を果たせるように、3社では災害対策協定を締結した。1社では難しかったことが、3社の連携でできるようになるという。

○未来のコンビニを構成する要素とは

会見会場には未来のコンビニを構成するさまざまな要素が展示されていた。

建物の玄関にはau SHOP CARが横付けされていた。ローソンの駐車スペースに横付けしたこのクルマの中で、立ち寄ったお客さんが遠隔地の拠点とテレビ電話で対話し、さまざまなコンサルティングを受けながら買い物ができる。都心部に出て実店舗に行かなければ難しかった大きな買い物や契約などが、歩いて行ける近所のコンビニで成立するようになうという。

また、オニギリや弁当が並ぶ陳列棚にはAIサイネージが掲げられ、前に立った客の年齢や性別を認識して、商品をレコメンド、あわせて購入するとおトクな飲み物などにも誘導する。品出し陳列などもロボットがきめこまかに対処する。

au SHOP CAR。遠隔地の拠点とテレビ電話で対話し、相談しながら大きな買い物ができる

陳列棚の隣にはAIサイネージ。棚の前に立った客を認識して新たな商品をレコメンドする

買い物の会計精算は自分のスマホでセルフで行う。カゴに入れながら商品のバーコードをスキャンすれば自動的に決済までが行われる。

このほか、店舗に直結したチョイ乗り拠点としてのモビリティサービスmobiの活用などで、あらゆる方面からのデジタル活用によって未来のコンビニが成立する。

スマホレジ。専用アプリを使い、レジに並ばず会計ができるほか、購入パターンや行動履歴からおすすめ商品も提案する

モビリティサービス「mobi」とも連携。会場では定額乗り放題プランも紹介されていた

もっとも、紹介されている事例を見る限り、びっくりするような新技術は見当たらない。「未来の」というよりも「明日の」というイメージだ。だが、これを全国津々浦々に瞬く間に展開することができればすごい。

最寄りのコンビニまでですら徒歩30分という地域がそれなりにある。過疎と高齢化との戦いが強いられる市場でもある。それに本気で取り組むKDDI。出自が通信事業者であったことを忘れてしまいそうだ。

ローソンに立ち寄るとギガがもらえる新サービス「povo Data Oasis」は通信事業者ならではの施策。詳細は今後発表されるという

著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら