実物拝見、シャープのEV! 気になることも聞いてみた
シャープが電気自動車(EV)を作っていると聞いて驚き、コンセプトモデルの実物を「東京国際フォーラム」で展示していると聞いてまたびっくりしたので、急いで現地に行ってみた。シャープというと家電のイメージだったのだが、EVも見た目は電化製品っぽい? 気になることも聞いてきた。
シャープのEVを発見!
どんなEV?
シャープは東京国際フォーラムで技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」を開催し、会場でEVのコンセプトモデル「LDK+」(エルディーケープラス)を展示した。今回が世界初公開だ。
このクルマはシャープが親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業(台湾)と連携し、ホンハイが発売済みのEV「Model C」で使っているオープンプラットフォームをベースに企画・開発したもの。EVの開発・販売を手掛けるフォロフライ(京都府)も協力している。
「LDK+」のベースとなったホンハイのEV「Model C」。ボディサイズは全長4,695mm、全幅1,895mm、全高1,625mm、モーター最大出力は172kW(230PS)、航続距離(NEDC)は505km。だいぶサイズは違うが、LDK+はModel Cと同じプラットフォームを使っている
「LDK+」を後ろから見てみると、なんとなく冷蔵庫っぽい?
「LDK+」はコンセプトモデルとのことだが、「まだまだ夢の段階だがとりあえず作ってみたもの」「発売に向け、スタディも兼ねて作ってみたもの」「ほぼ市販モデルのプロトタイプ」の3つから選ぶとすると、どの段階なのか。会場にいたシャープの説明員によれば「2番目」が近いとのことだった。展示を通じて顧客らの声を聞きつつ、ブラッシュアップを加えながら市販化に向かっていく方針とのことだ。
クルマ関係の展示イベントに行くと、自動車メーカー以外の企業がクルマのカタチをした「コンセプトモデル」を展示しているのをよく見かけるが、その中で市販に結び付いたという例はほとんど聞かない。その点、シャープは「数年内」(前出の説明員)のEV発売を目指しているそうだから、かなり真剣に、商品としてどうなのかという観点も踏まえながら開発したものと考えていいだろう。
「LDK+」のサイズは全長が約5m、全高と全幅が約2mとかなり大きい
「LDK+」は車内を「リビングルームの拡張空間」としてとらえ、「“止まっている時間”にフォーカスしたEV」であるとのこと。コンセプトモデルは車体の後ろの部分に広々とした空間を作り、大きなディスプレイや可動式のテーブルなども据え付けて部屋のような仕立てにしてあった。自宅や仕事の出先などで、止まっている状態のクルマを「もうひとつの部屋」として活用できるのは便利そうだ。
後部座席は回転させられる。「液晶シャッター」を閉じれば車内にプライベート空間が創出可能だ
シャープ独自のAI技術「CE-LLM」や「AIoT」の技術などを活用し、クルマと住空間を結ぶアイデアも検討中とのこと。例えばクルマに乗る人が普段、家のエアコンの温度をどのくらいに設定しているかという情報をIoTで共有して、クルマが走り出す前に乗る人の好みに合わせた温度設定にしておく、といったような考え方だ。
ここからは、現場でシャープの説明員に聞いたことをお伝えしていきたい。
ボディタイプはバンで決定?
こちらについては「検討の余地あり」。LDK+を見た来場者からは「後ろの空間を楽しむという観点ではクルマは大きい方がいい」という意見もあったし、「自分の家に置くと考えると、大きさが気になる」という声もあったそうだ。そもそも、バンのカタチで発売するかどうかも現時点では確定していないという。「住宅にマッチしたサイズ感を考えていかなければ、という認識はあります」と説明員は話していた。
これって商用車? 自家用車?
両方とも考えられるというのがシャープの説明。BtoBであれば、後ろの空間を荷室として使ったり、席をこしらえて「マイクロバス」のような使い方もありうる、とのことだ。ただ、家電に深い知見を持つシャープとして、「最も訴求したいのは、部屋としての使い方」なのだという。
クルマのブランドはシャープ?
「シャープのブランドにしたいという思いはありますが、OEMのようなカタチもありえます」と説明員。OEMというのは、クルマの開発・製造はシャープらが担当し、どこかのメーカーにクルマを提供(OEM供給)して、供給を受けた企業が自社のブランドでクルマを売る、という形態のことだ。例えば、シャープらが作ったクルマをどこかの自動車メーカーが自社ブランドで売り出すという話もなくはない。
「SHARP」ロゴのクルマに街中で出会えるかも?
フル充電で何km走る? バッテリーの種類は?
まだ決まっていないそうだ。というのも、クルマのサイズからして変わる可能性があるので、バッテリーのサイズ(容量)が確定させられないからだ。バッテリーの種類については「いろいろと新しいのが出てきている段階なので、できるだけ最新で安全性が高いものを選びたい」とのことだった。
EVは「逆風」なのでは? なぜ作る?
EV普及には「逆風が吹いている」との意見があることは率直に認めつつも、「最終的に、長いスパンで見ればEVシフトは続くと考えています」と話したシャープの説明員。同社はカーボンニュートラルの実現に向け、家電からエネルギーシステムまで幅広い取り組みを進めているのだが、CO2排出量の大きいもので「残っているのがクルマ」であり、この分野に取り組むことが重要との思いでEV開発に乗り出したそうだ。
単なる話題作りでEVのコンセプトモデルを作っているのであれば、EV逆風と言われるこのタイミングにあえて公開はしないはず。シャープは真剣なようだ
シャープが「速いクルマ」を作る競争でフェラーリやポルシェに勝てるとは到底思えないが、「乗っていて快適なクルマ」を作る競争ということになると、話は変わってくる。クルマとしての乗り心地という面では既存の自動車メーカーに分があるとしても、「住みよい部屋」にタイヤを付けて走らせるというようなクルマ作りであれば、シャープの知見も強みも存分に活用できるからだ。自動運転技術の普及が進んでいけば、こうしたクルマの重要性はますます大きくなっていくに違いない。
シャープのEVを発見!
どんなEV?
シャープは東京国際フォーラムで技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」を開催し、会場でEVのコンセプトモデル「LDK+」(エルディーケープラス)を展示した。今回が世界初公開だ。
「LDK+」のベースとなったホンハイのEV「Model C」。ボディサイズは全長4,695mm、全幅1,895mm、全高1,625mm、モーター最大出力は172kW(230PS)、航続距離(NEDC)は505km。だいぶサイズは違うが、LDK+はModel Cと同じプラットフォームを使っている
「LDK+」を後ろから見てみると、なんとなく冷蔵庫っぽい?
「LDK+」はコンセプトモデルとのことだが、「まだまだ夢の段階だがとりあえず作ってみたもの」「発売に向け、スタディも兼ねて作ってみたもの」「ほぼ市販モデルのプロトタイプ」の3つから選ぶとすると、どの段階なのか。会場にいたシャープの説明員によれば「2番目」が近いとのことだった。展示を通じて顧客らの声を聞きつつ、ブラッシュアップを加えながら市販化に向かっていく方針とのことだ。
クルマ関係の展示イベントに行くと、自動車メーカー以外の企業がクルマのカタチをした「コンセプトモデル」を展示しているのをよく見かけるが、その中で市販に結び付いたという例はほとんど聞かない。その点、シャープは「数年内」(前出の説明員)のEV発売を目指しているそうだから、かなり真剣に、商品としてどうなのかという観点も踏まえながら開発したものと考えていいだろう。
「LDK+」のサイズは全長が約5m、全高と全幅が約2mとかなり大きい
「LDK+」は車内を「リビングルームの拡張空間」としてとらえ、「“止まっている時間”にフォーカスしたEV」であるとのこと。コンセプトモデルは車体の後ろの部分に広々とした空間を作り、大きなディスプレイや可動式のテーブルなども据え付けて部屋のような仕立てにしてあった。自宅や仕事の出先などで、止まっている状態のクルマを「もうひとつの部屋」として活用できるのは便利そうだ。
後部座席は回転させられる。「液晶シャッター」を閉じれば車内にプライベート空間が創出可能だ
シャープ独自のAI技術「CE-LLM」や「AIoT」の技術などを活用し、クルマと住空間を結ぶアイデアも検討中とのこと。例えばクルマに乗る人が普段、家のエアコンの温度をどのくらいに設定しているかという情報をIoTで共有して、クルマが走り出す前に乗る人の好みに合わせた温度設定にしておく、といったような考え方だ。
ここからは、現場でシャープの説明員に聞いたことをお伝えしていきたい。
ボディタイプはバンで決定?
こちらについては「検討の余地あり」。LDK+を見た来場者からは「後ろの空間を楽しむという観点ではクルマは大きい方がいい」という意見もあったし、「自分の家に置くと考えると、大きさが気になる」という声もあったそうだ。そもそも、バンのカタチで発売するかどうかも現時点では確定していないという。「住宅にマッチしたサイズ感を考えていかなければ、という認識はあります」と説明員は話していた。
これって商用車? 自家用車?
両方とも考えられるというのがシャープの説明。BtoBであれば、後ろの空間を荷室として使ったり、席をこしらえて「マイクロバス」のような使い方もありうる、とのことだ。ただ、家電に深い知見を持つシャープとして、「最も訴求したいのは、部屋としての使い方」なのだという。
クルマのブランドはシャープ?
「シャープのブランドにしたいという思いはありますが、OEMのようなカタチもありえます」と説明員。OEMというのは、クルマの開発・製造はシャープらが担当し、どこかのメーカーにクルマを提供(OEM供給)して、供給を受けた企業が自社のブランドでクルマを売る、という形態のことだ。例えば、シャープらが作ったクルマをどこかの自動車メーカーが自社ブランドで売り出すという話もなくはない。
「SHARP」ロゴのクルマに街中で出会えるかも?
フル充電で何km走る? バッテリーの種類は?
まだ決まっていないそうだ。というのも、クルマのサイズからして変わる可能性があるので、バッテリーのサイズ(容量)が確定させられないからだ。バッテリーの種類については「いろいろと新しいのが出てきている段階なので、できるだけ最新で安全性が高いものを選びたい」とのことだった。
EVは「逆風」なのでは? なぜ作る?
EV普及には「逆風が吹いている」との意見があることは率直に認めつつも、「最終的に、長いスパンで見ればEVシフトは続くと考えています」と話したシャープの説明員。同社はカーボンニュートラルの実現に向け、家電からエネルギーシステムまで幅広い取り組みを進めているのだが、CO2排出量の大きいもので「残っているのがクルマ」であり、この分野に取り組むことが重要との思いでEV開発に乗り出したそうだ。
単なる話題作りでEVのコンセプトモデルを作っているのであれば、EV逆風と言われるこのタイミングにあえて公開はしないはず。シャープは真剣なようだ
シャープが「速いクルマ」を作る競争でフェラーリやポルシェに勝てるとは到底思えないが、「乗っていて快適なクルマ」を作る競争ということになると、話は変わってくる。クルマとしての乗り心地という面では既存の自動車メーカーに分があるとしても、「住みよい部屋」にタイヤを付けて走らせるというようなクルマ作りであれば、シャープの知見も強みも存分に活用できるからだ。自動運転技術の普及が進んでいけば、こうしたクルマの重要性はますます大きくなっていくに違いない。