「死刑執行ボタンを押す瞬間」に起きたあり得ない事態…死刑に参加した刑務官が告白
日本では死刑判決はどう行われ、死刑囚はどんな生活をして、死刑はどう執行されるのか。漫画家・一之瀬はちさんが実際に死刑に立ち会った刑務官に取材した『刑務官が明かす死刑の秘密』を取り上げる。
執行ボタンを押す瞬間
一之瀬さんが取材したのは、実際に死刑に立ち会った経験のあるM刑務官。大学卒業後、刑務官試験に合格。地方刑務所、拘置支所勤務を経て、現在は某拘置所に勤務している。
日本での死刑は絞首刑つまり縊首(いしゅ)と刑法11条で定められている。これは、首に縄をかけて床が抜けることで首が締まり死に至るという方法で、その床を抜くボタンを押すのが刑務官だ。
「3〜5個並んだボタンのうち1つのみが床を作動させ、どのボタンが作動ボタンかは分からないようになっています。また、落下の直後は死刑囚の体が動いて傷がつく可能性などがあるため、上で縄がぶれないように押さえるのも刑務官の仕事です」(M刑務官)
ミスは許されない
執行室にボタンがあり、執行の瞬間に刑務官が押す――単純な作業だが、そのプレッシャーは計り知れない。M刑務官は続ける。
「ボタンを押すのは人間だからやはりミスはありえる。そんな不慮の事態に備え、刑場には“レバー”が用意されています。たとえば一斉にボタンを押すはずが誤って押されなかった場合、当然床は開かず執行が出来なくなってしまう。そんな事態に陥った際に、あくまで『緊急対応用』として床を抜くことができるレバーが設備として備え付けられているんです」
実際に使用されたことはあるのだろうか。
「無い!と言いたいですが、死刑執行という特殊な空間でヒューマンエラーは高い確率で起こりうる。実際過去に1度だけ使用されたこともあったといいます。失敗が許されない死刑が故の特殊設備といえます」
執行までの長い生活
裁判を終え、死刑が確定した死刑囚は執行の日まで拘置所での生活を送ることになる。とは言えすぐに死刑が執行されるわけではなく、ここから執行までの長い生活が始まる。
「死刑確定後、その暮らしに必須なアイテムとなる『所内生活のしおり(死刑確定者用)』が手渡されます。そこには朝から夜までの一連の流れなど、拘置所内の生活について詳細に書かれている。死刑囚はこのしおりをもとに生活を送ることになります」(M刑務官)
そのしおりに記されているのはどのようなことなのだろうか――。