観光客が洞窟に落としたお菓子が「洞窟の世界を変えてしまう」と国立公園が注意喚起
by - Adam Reeder -
日本を訪れる旅行客が増えるにつれて、マナー違反などに地域住民が迷惑するオーバーツーリズムの問題が顕在化していますが、そんな「観光公害」に悩まされているのは人間だけではありません。貴重で繊細な生態系が息づく洞窟を訪れた観光客がお菓子を捨てたばかりに、そこに住む生き物に天変地異に等しい影響が出ていると、アメリカ・ニューメキシコ州のカールズバッド洞窟群国立公園が訴えました。
https://www.dailymail.co.uk/news/article-13834969/cheetos-bag-national-park-cave-critters.html
US cave system’s bats and insects face existential threat: discarded Cheetos | New Mexico | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/article/2024/sep/10/cheetos-carlsbad-caverns-national-park
世界遺産にも登録されているカールズバッド洞窟群国立公園の公式Facebookアカウントは2024年9月6日に、「人が洞窟に入ると、そのたびに微細な糸くずが落ちるような、防ぐのが困難または不可能な影響が生じることがありますが、それ以外の影響は避けることができます。例えば、ビッグ・ルーム(カールズバッド洞窟群の中で最も大きな地下室)のトレイルからそれた場所に誰かが落とした満杯のスナックの袋などです。お菓子の落とし主にとっては偶発的なことだったかもしれませんが、洞窟の生態系には大きな影響がありました」とのコメントを付けて、洞窟の地面に落ちたチートスの袋の写真を投稿しました。
洞穴生物の中には、飢餓に耐えるために7年間まったく動かずに生きる動物もいるほど、洞窟は食料が乏しい環境です。そのため、洞窟に外部から人間の食べ物が持ち込まれると、生態系が大きく混乱します。
チートスの袋が捨てられていた今回のケースでは、生態系の混乱を防ぐために国立公園のレンジャーが20分ほどかけて、洞窟の表土からカビやデトリタス(生き物の死骸由来の有機物)を慎重に取り除かなければならなかったとのこと。
カールズバッド洞窟群国立公園の公式アカウントは「人間からすれば、こぼれたスナック菓子の袋はささいなことのように思えるかもしれませんが、洞窟の生き物にとっては世界を一変させることになりかねません。規模の大小にかかわらず、私たちはどこに行っても影響を残すものですので、私たち全員が世界を見つけたときよりいい場所にしていきたいものです」と述べました。
by Mathieu Lebreton
カールズバッド洞窟群国立公園には17種のコウモリが40万〜80万匹生息しており、その中には北米のコウモリに壊滅的な影響をもたらしている感染症「白鼻症(White-nose syndrome)」を免れているブラジルオヒキコウモリもいます。
洞窟の生態系は繊細なため、国立公園は観光客らに「立つ鳥跡を濁さずの原則(Leave No Trace principle)」を徹底するよう要請しています。
その後の投稿でカールズバッド洞窟群国立公園は「知らなかった人もいるかもしれませんが、実は洞窟は大きなゴミ箱ではありません。それにもかかわらず、レンジャーが毎日の終わりにトレイルを歩くとよくゴミを拾うことになります。それはガムの包み紙やティッシュのときもあれば、残念なことに人間の排せつ物や吐いた唾、かみタバコのときもあります。トレイル沿いにゴミを落とさないようにし、指定されたトイレを使用することで、トレイルをきれいに保つことにご協力ください」と述べました。
観光客のちょっとした不注意や悪ふざけが環境に大きな影響を与える例は、食べこぼしだけではありません。国立公園は2024年8月に、少なくとも6万の洞窟構造物が破壊されていることを報告しました。その多くは、観光客が土産物にするために、違法に洞窟の中の物を持ち去ったものだと見られています。