大西洋を挟んで約6000km離れた2つの場所で同じ恐竜の足跡が発見される
現代の学説では、地球上に存在するいくつかの大陸は長い年月を経て分裂したものであり、かつては1つの大陸だったと考えられています。南メソジスト大学の古生物学者であるルイス・L・ジェイコブズ博士が率いる国際研究チームが、大西洋を挟んで約6000km離れている南アメリカ大陸とアフリカ大陸で一致する恐竜の足跡を発見したと報告しています。
Matching dinosaurs footprints, different continents
Matching dinosaur footprints found on opposite sides of the Atlantic Ocean
https://phys.org/news/2024-08-dinosaur-footprints-sides-atlantic-ocean.html
ジェイコブズ博士らの研究チームは、ブラジル北東部のボルボレマ高原と、カメルーン北部のクム地方で恐竜の足跡を発見しました。研究チームはこれらの足跡の年代や地質学的背景、そして形状を詳細に分析しました。
以下がその足跡。左がブラジルで発見されたもので、右がカメルーンで発見されたものです。
足跡は当時の河川あるいは湖の泥に残されたもので、足跡が残されていた堆積物層に含まれていた花粉を分析したところ、足跡が形成されたのは約1億2000万年前の白亜紀初期であることが判明。また、足跡の形状はブラジルで発見されたものとカメルーンで発見されたものでほぼ同一であったこともわかりました。足跡の大多数が三本指の獣脚類によるものでしたが、一部は竜脚形類や鳥脚類の足跡と思われるものも含まれていたとのこと。獣脚類は主に肉食、竜脚形類は雑食性あるいは草食性、鳥脚類は主に草食でした。
研究チームは、堆積物から「大陸間の接続が切断される前は川や湖が存在していたこと」がわかり、発見された足跡からは「植物が草食恐竜の餌となり、その草食恐竜が肉食恐竜の餌になる」という生態系が示されていると論じています。
ブラジルのある南アメリカ大陸とカメルーンのあるアフリカ大陸は、現代でこそ大西洋を挟んで約6000km離れていますが、1億2000万年前は同じ大陸の一部でした。研究チームによると、足跡が発見された両地域は、地殻が引き延ばされるときに形成される「ハーフグラーベン盆地」という特殊な地質構造を示しているとのこと。
by Fama Clamosa
ジェイコブズ博士は「南アメリカ大陸とアフリカ大陸の間は地質学的に最も若く、接続部の1つはブラジル北東部とカメルーンのギニア湾沿岸でした。1億2000万年前、両大陸はその狭い範囲でつながっていたので、動物も接続部を横断して両大陸を移動することができました」と述べています。
ブラジルで発見された足跡を見ると、恐竜が移動した経路がそのまま残っています。
研究チームは、今回の発見は恐竜の生態系や環境だけでなく、大陸移動についても重要な情報を提供するものだと主張しており、足跡の分布と地質学的調査の結果を組み合わせることで、大陸分裂の過程をより詳細に理解できるとしています。