多発する「ゲリラ雷雨」予兆を知らせる3大サイン
いきなり土砂降りの雨になるゲリラ豪雨は近年、増えているといいます(写真:kpw/PIXTA)
夏空が広がって強い日差しが照り付けていたと思ったら、急に空が暗くなって激しい雨や雷雨になる、いわゆる「ゲリラ豪雨(雷雨)」が多発しています。
天気が急変するメカニズムや対策をお伝えします。
数年に一度レベルの大雨も
ゲリラ豪雨(雷雨)は、局地的な豪雨や雷雨のことを指して使われていますが、気象用語ではありません。局地的で突発的に発生するので、奇襲攻撃を仕掛けるゲリラに例えられ、市民権を得た言葉です。
7月20日は青空が広がり、関東から西日本で最高気温35℃以上の猛暑日が続出していましたが、午後は関東各地で雷を伴った激しい雨が降りました。その影響で、東京都足立区の夏の風物詩「足立の花火」が、打ち上げ開始時刻の約20分前に中止になりました。
7月31日も日中はよく晴れて猛烈な暑さでしたが、関東で雨雲が急発達しました(※外部配信先では図版を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。
【7月31日の雨雲】出典:weathermap
夜は東京都と埼玉県で局地的に1時間に約100ミリ以上の雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨情報」が発表されました。
記録的短時間大雨情報は、数年に一度しか発生しないような短時間の大雨によって、災害が発生するおそれがあることを知らせる情報です。東京23区で発表されるのは6年ぶりでした。
8月7日は北日本や東日本で局地的に大雨となり、福島県、埼玉県、群馬県、山梨県に記録的短時間大雨情報が発表されています。
【急な豪雨時の注意点】出典:weathermap
ゲリラ豪雨に見舞われて一気に大雨になると、排水が追いつかずに、道路が冠水したり低い土地が浸水したりします。できるだけ安全な屋内で過ごすようにしましょう。
移動中の場合は、アンダーパスなど周囲より低い場所を避けるようにしてください。中小河川の増水や氾濫、土砂災害のおそれがあるため、危ない場所には近づかないことも重要です。
ゲリラ豪雨が発生するしくみ
天気が急変した7月20日も31日も、東京は猛暑日になっていました。
暖かい空気は上に向かうので、気温が高いと上昇気流が発生し、雲ができます。そして、モクモクと成長した積乱雲などが急な雨をもたらします。
とくに内陸は気温が高くなるため上昇気流が起こりやすく、雲が発生・発達しやすいです。空気が山の斜面を上ることでも雲ができるので、山沿いも天気が急変しやすいのです。
また、雲ができるには水蒸気が必要なため、カラッと暑い日よりも蒸し暑い日の方が、急な雨が降ることが多いです。
「夕立」が夏の季語になっているように、夏の急な雨というのは昔からありました。
ただ、気候変動により気温が上昇していることが一因で、急な雨は増加・激化しているといえます。夏に限った急な雨のデータではないですが、年間の1時間降水量50ミリ以上「非常に激しい雨」の発生回数は増えています。1時間80ミリ以上「猛烈な雨」は、1980年頃と比べて約2倍程度になっています。
【全国アメダス】1時間降水量50ミリ以上(非常に激しい雨)の年間発生回数 出典:気象庁HP
【全国アメダス】1時間降水量80ミリ以上(猛烈な雨)の年間発生回数 出典:気象庁HP
朝や夜にも雷雨・豪雨が発生
天気が急変する時間帯も変化しています。
夕立は夏の午後に降る雨のことで、昔は昼過ぎから夕方くらいに急に雨が降るイメージだったのではないでしょうか。しかし今は、朝や夜も急な雨に見舞われます。昼間だけでなく、朝や夜の気温も高いことが原因です。
そして、天気が急変しやすい時期も延びています。残暑が厳しいので、夏だけではなく秋も急な雨が降ることが増えているのです。
急な雨をもたらす雲が発生・発達するためには、雲のもととなる水蒸気が必要です。なかでも台風は、海から大量の水蒸気を運んでくるので、自分が住んでいる地域を直撃しなかったとしても、湿った空気が流れ込み、急な雨が降りやすくなります。
【月別の台風発生・接近・上陸数の平年値】出典:気象庁HP
台風の発生数と日本への接近数が最も多いのは8月、日本への上陸数が最も多いのは9月です。湿った空気が流れ込みやすくなる時期なので、引き続き、天気の急変に気をつけてください。
雷までの距離を調べる方法
雷雨の場合、雷との距離は、空がピカっと光ってからゴロゴロと音が聞こえるまでの時間差で計算できます。
<雷までの距離=光ってから音が聞こえるまでの秒数×340メートル>です。例えば、光ってから音が聞こえるまで3秒もかからなければ1キロくらいに迫っています。5秒なら2キロ以内、10秒かかれば約3.4キロ離れているということです。
ただ、雷雲 (かみなりぐも)の大きさは直径10キロくらいあることが多く、仮に落雷地点から数キロ離れていても、すでに雷雲の下にいるかもしれません。雷鳴が聞こえるのが大体10キロ以内なので、「雷鳴が聞こえたら危険」と捉えてください。
とくに、海や砂浜、屋外プール、グラウンドのような開けた場所や山頂など高いところは、人に落雷しやすく危険です。できるだけ早く頑丈な建物や車の中に避難しましょう。
天気が急変しやすい条件などはわかりますが、急な雨が降る場所を正確に予測するのは難しいです。例えば同じ東京23区でも、千代田区では激しい雷雨になり、隣の中央区では晴れている、というような局地的な現象だからです。
急な雨を早めに察知して対応できるように、「積乱雲が近づくサイン」を覚えておきましょう。
【積乱雲が近づくサイン】出典:weathermap
「雷の音が聞こえてきた」「真っ黒い雲が近づいてきた(空が急に暗くなってきた)」「急に冷たい風が吹いてきた」の3つです。
こうした積乱雲が近づくサインを察知したときや、天気予報で「天気急変のおそれ」と伝えている日は、雨雲レーダーを確認して、発達した雨雲が近づいてきそうな場合は、頑丈な建物の中に避難するなど、急な雨に備えてください。
私は気象庁HPの「雨雲の動き」をよく見ています。
【雨雲の動き】出典:気象庁HP
続く残暑で雷雨は今後も注意
8月下旬から9月にかけては、まだまだ猛暑日を含めて残暑が続きます(関連記事:相次ぐ40℃超え「この暑さ、いつまで続くのか?」)。晴れていた空が急に暗くなり、激しい雨や雷雨に見舞われるおそれは、これからもまだまだあります。
警報級の大雨になることもあるため、心構えをしておきましょう。
(久保井 朝美 : キャスター、気象予報士、防災士)